離婚調停と強制執行

今回は、離婚調停と強制執行についてです。

離婚調停後の権利の実現

離婚調停の内容となった当事者の義務については、履行勧告、履行命令、強制執行といった実現手段が準備されています。

これらの手段をとりうることは、離婚調停を行う大きなメリットの一つです。

参照:離婚調停のメリット・デメリット

強制執行について

上記の強制執行は、権利を実現するための最も強力な手段となります。

履行勧告や履行命令は、必ずしも実効性が高くないのに対して、強制執行によれば、相手の給料や財産などを直接差し押さえる、といったことが可能となります。

強制執行が可能な理由

調停が成立した場合に強制執行が可能なのは、調停調書の記載が確定判決と同一の効力を有するからです。

家事手続法268条1項
調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとし、その記載は、確定判決(別表第二に掲げる事項にあっては、確定した第三十九条の規定による審判)と同一の効力を有する。

強制執行は、所定の地方裁判所に強制執行の申立てを行う方法により行います。

この場合に必ず必要とされるのが「債務名義」と呼ばれる書類であり、典型例が判決調書です。

離婚調停が成立した場合に交付される「離婚調書」も、この判決調書と同一の効力を有する書類「債務名義」として機能します。

実現される権利

離婚調停の場では、「離婚の可否」のみならず、次のような事項が手続の対象となります。

  • 財産分与
  • 慰謝料
  • 養育費
  • 親権
  • 面会交流
  • 年金分割

財産分与・慰謝料・養育費といった財産上の権利が強制執行によって実現しうる権利であることはもちろんですが、これのみならず、「面会交流」についても、一定の条件の下で、強制執行を行い得ます。

強制執行の対象となる財産

強制執行の対象となる財産は様々です。典型例としては次のようなものがあります。

  • 給与
  • 預貯金
  • 有価証券
  • 不動産

強制執行で慰謝料や財産分与・養育費を実現しようとする場合、一般には、こうした相手方の財産を差し押さえる、という方法で権利の実現を目指します(養育費については、給与の差し押さえが利用されることが多い)。

面会交流については、執行官が「直接子供を連れてくる」という形で権利を実現することはできませんが、一定の条件の下で、間接強制という方法での強制執行が認められています。

参照:面会交流の間接強制について

参照:面会交流の条件が守られない場合の実現方法

離婚協議にかかる公正証書との比較

強制執行を可能ならしめる方法として「離婚協議書を公正証書で作成する」という手段があります。

離婚調停と公正証書とでは、たとえば、手続面、内容面、コスト面等で大きな違いが生じ得ます。

手続面(時間的コスト)

手続面として、離婚調停は、家庭裁判所で行うのに対して、公正証書は公証役場で作成します。

内容面で争いが無ければ、公正証書を作成する方が、時間的なコストは小さくて済みます。

離婚調停の場合、当事者間で、ほとんど離婚条件の内容を固めておき、第1回期日に調停を成立させたとしても、離婚調停調書の獲得まで、最短で1か月~1か月半程度を要します。

内容面

上記の通り、離婚調停は、慰謝料、財産分与、養育費といった財産給付のほか、面会交流についても、一定の条件の下での強制執行が可能な結論を得うる手続です。

他方で、公正証書の場合、強制執行を可能ならしめる条項を盛り込めば、当事者は、その公正証書に基づいて、一定の財産給付につき強制執行を実現することが可能ですが、面会交流については、その対象外となります。

費用面

離婚調停は、通常、2000円~3000円程度の費用負担(弁護士に調停手続を依頼した場合の費用は別途)で行うことが可能です。

他方で、公正証書はその作成に際して、公証役場において、所定の手数料を収める必要があります。

たとえば、離婚で請求する慰謝料や財産分与、養育費の額が200万円以上の場合、公証役場では、1万円以上の費用(弁護士に作成を依頼した場合の費用は別途)が必要となります。

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