婚姻費用・養育費算定表|「一人当たりの金額」の算定・速算方法

婚姻費用・養育費算定表は、裁判所が公表している資料であり、婚費や養育費を簡易・迅速に把握するため用いられます。

この算定表は、裁判所が採用している「標準算定方式」という婚費・養育費の算定方法につき、複雑な計算式を用いなくとも、一覧して、算定結果が分かるようにと公表されたものです。

今回は、この算定表から、一人当たりの金額を割り出す方法について解説します。

養育費について

一人当たりの金額につき、説明が容易なのは養育費ですので、養育費の方から説明をします。

また、後述しますが、算定表上の金額の内、一人当たりの養育費の金額(目安)は、子2人の場合、ケース別に、算定表の額に一定の係数(0.42~0.58)を乗じて算出できます。子3人の場合もケース別に一定の係数(0.26~0.40)を乗じることで算出可能です。

使用する係数は、家族構成(ケース)によって異なります。後述の「一人当たり養育費速算係数」の項をご参照ください。

子どもが全員が14歳以下の場合

まず、下記子2人表のように、子供全員が同じ14歳以下の場合、子供一人当たりの養育費は、頭数で割って計算することが可能です。

上記算定表において、養育費の金額が4万円~6万円とされる場合、子一人当たりの金額は、これを2で割った答えである2万円~3万円となります。(子どもごとに傾斜がつきません。)

子どもの年齢区分が同じ場合、上記算定表金額を子供の頭数(ここでは2人)で割ることで一人当たりの金額が割り出せる。

 

子供が全員15歳以上の場合

子供が全員15歳以上の場合も同様に頭数で割って計算をします。

たとえば、下記表は子3人、全員が15歳以上ですので、子供一人当たりの金額は子供の頭数である3で割って計算します。したがって、たとえば、算定表で、養育費の金額が6万円~8万円とされる場合、一人当たりの金額は、2万円から2万6666円となります。

子どもの年齢区分が同じ場合、上記算定表金額を子供の頭数(ここでは3人)で割ることで一人当たりの金額が割り出せる。

14歳以下の子と15歳以上の子がいる場合、生活費指数で割り振る

14歳以下の子と15歳以上の子がいる場合、一人当たりの計算式は少し複雑になります。

子二人の場合

14歳以下の子については、標準算定方式において、子供に振り分けられるべき生活費の割合(生活費指数)は、大人100とした場合の62と設定されています。また、15歳以上の子については、大人を100とした場合の85と設定されています。

参照:婚姻費用・養育費算定表|生活費指数とは

そのため、14歳以下の子と15歳以上の子が一人ずついる場合、①14歳以下の子と②15歳以上の子の養育費の振り分けは=①62対②85となります。

たとえば、14歳以下の子一人、15歳以上の子一人の養育費の金額が、6万円から8万円とされる場合、6万円から8万円を62対85で割りふると、それぞれの子一人当たりの養育費が算出できます。

そのため、この例における一人当たりの金額は次の通りとなります。

  • 14歳以下の子=2万5306円~3万3741円
    ∵6万円×62÷(62+85)=2万5306円
    ∵8万円×62÷(62+85)=3万3741円
  • 15歳以上の子=3万4693円~4万6258円
    ∵6万円×85÷(62+85)=3万4693円
    ∵8万円×85÷(62+85)=4万6258円

なお、実務的には、数字が細かすぎるので、このケースで、養育費の合計金額を6万円とするならば、上記数字を参考に、14歳以下の子につき2万5000円、15歳以上の子につき3万5000円などと定めることが多いと思います。

子が3人以上の場合

14歳以下の子、15歳以上の子が両方いる、というケースで、子供が3人以上となった場合も考え方は同様となります。

計算例1

14歳以下の子については「62」、15歳以上の子については「85」を割り振ります。

そのため、たとえば、14歳以下の子が二人、15歳以上の子が一人というケースでは、14歳以下の子二人については、各人につき「62」、「62」と割り振り、15歳以上の子には、85を割り振ります。

この場合、14歳以下の子一人当たりの金額は、算定表上の養育費の金額×62÷(62+62+85)で算出されます。また、15歳以上の子一人当たりの金額は、このケースでは、算定表上の養育費の金額×85÷(62+62+85)で算出されます。

 

計算例2

念のため、もう一つ例を挙げておきます。

子供が14歳以下の子が一人、15歳以上の子が2人というケースでは、14歳以下の子に62を割り振り、15歳以上の子につき、「85、85」と割りふります。

この場合、14歳以下の子一人の養育費の金額は、算定表上の養育費の額×62÷(62+85+85)で算出できます。

15歳以上の子の一人当たりの養育費の金額は、このケースでは、算定表上の養育費の額×85÷(62+85+85)で算出できます。

一人当たり養育費速算係数

上記が、算定表を用いる場合の養育費にかかる子一人当たりの金額の算出の仕方ですが、速算できたほうが良いかと思いますので、パターン別の一人当たりの係数を記載しておきます。一人当たりの金額の「目安」を把握する際に、ご利用いただけるかと思います。

速算係数表子どもの年齢構成15歳以上の一人当たり速算係数14歳以下の一人当たり速算係数
子2人2人とも14歳以下の場合無し0.50
子2人第1子が15歳以上、第2子が14歳以下の場合0.580.42
子2人二人とも15歳以上の場合0.50無し
子3人3人とも14歳以下の場合無し0.33
子3人第1子が15歳以上、第2子と第3子が14歳以下の場合0.400.3
子3人第1子と第2子が15歳以上、第3子が14歳以下の場合0.370.26
子3人3人とも15歳以上の場合0.33無し

たとえば、第1子が15歳以上、第2子と第3子が14歳以下の場合、15歳以上の子の一人当たり速算係数は、0.4ですので、算定表記載の養育費の金額(あるいは標準算定方式で算定される金額)に0.40を乗じると、15歳以上の子一人当たりの金額の目安が分かります。

また、0.3を乗じると、14歳以下の子一人当たりの養育費の金額の目安が分かります。

このケースで、算定表で養育費の金額が8万円~10万円だとすると、15歳以上の子(第1子)の養育費の額は3万2000円~4万円、14歳以下の第2子、第3子の養育費の額は、それぞれ2万4000円~3万円ずつとなります。

なお、速算係数は、生活費指数から割り出した数字ですが、計算の便宜のため、第3小数点以下を捨象しています。

あくまで一人当たりの金額の目安を出すため、ざっと計算するための係数と理解してください(また、そのご利用について、弊所では責任を負えませんので、自己責任にてお願い申し上げます。)。

婚姻費用について

次に婚姻費用についてです。

婚費についても、基本的な考え方は同じですが、養育費と異なり、そこには大人一人分(配偶者一人分)の生活費が加わります。

養育費について、14歳以下の子については指数62を、15歳以上の子については、指数85を使いましたが、配偶者の分については、指数100を使います。

なお、一人当たりの金額(目安)は、婚姻費用についても速算可能です。

婚姻費用のうち、配偶者の生活費分は、算定表上の金額に、0.281~0.617の係数を乗じて算出できます。婚姻費用算定表上の金額の内、子供一人当たりの生活費分は、14歳以下の子につき、0.186~0.382の係数を、15歳以上の子につき、0.239~0.459の係数を乗じて算出できます。

使用する係数は、家族構成によって異なります。後述の一人当たり婚姻費用速算係数速算表をご参照ください。

子ども一人のケース

たとえば、配偶者一人、14歳以下の子一人というとき、そこに含まれる配偶者の生活費、子供の生活費の金額を考えるには、婚姻費用の金額につき、大人に100、子供に62の比になるように配分を振り分けます。

この場合、配偶者の生活費と子供の生活費は次のように算出することが可能です。

配偶者の生活費=婚姻費用算定表上の金額×100÷(100+62)

子どもの生活費=婚姻費用算定表上の金額×62÷(100+62)

子ども2人以上のケース

子供2人あるいは3人以上のケースでも考え方は同様です。

たとえば、配偶者一人、14歳以下の子一人、15歳以上の子二人、という場合、婚姻費用の金額につき、大人に100、14歳以下の子に62、15歳以上の子に85ずつの比になるように割りふります。

この場合、配偶者と子供の生活費は次のように算出されます。

  • 配偶者の生活費
    =婚姻費用算定表上の金額×100÷(100+62+85+85)
  • 14歳以下の子
    =婚姻費用算定表上の金額×62÷(100+62+85+85)
  • 15歳以上の子
    =婚姻費用算定表上の金額×85÷(100+62+85+85)

 

一人当たり婚姻費用速算係数

婚姻費用についても、算定表(標準算定方式)にかかる金額につき、一人当たりの金額を割り出すための速算係数があると便宜かと思われます。

速算係数表子どもの年齢構成配偶者の速算係数15歳以上の子の養育費の係数14歳以下の子の養育費の係数
子1人14歳以下の子一人0.617無し0.382
子1人15歳以上の子一人0.5400.459無し
子2人2人とも14歳以下の場合0.446無し0.276
子2人第1子が15歳以上、第2子が14歳以下の場合0.4040.3440.251
子2人二人とも15歳以上の場合0.3700.310無し
子3人3人とも14歳以下の場合0.349無し0.216
子3人第1子が15歳以上、第2子と第3子が14歳以下の場合0.3230.2750.200
子3人第1子と第2子が15歳以上、第3子が14歳以下の場合0.3010.2560.186
子3人3人とも15歳以上の場合0.2810.239無し

使い方は、一人当たり養育費速算係数と同じです。

たとえば、子3人(第1子が15歳以上、第2子と第3子が14歳以下の場合)において、婚姻費用算定表記載の金額から、配偶者や子の生活費分を計算するには、それぞれ次の係数を乗じることになります。

  • 配偶者の生活費=速算係数0.323
  • 15歳以上の子=速算係数0.275
  • 14歳以下の子=0.200

たとえば、婚姻費用が10万円である場合、配偶者の生活費分は、そのうちの3万2300円、15歳以上の子の生活費分は2万7500円、14歳以下の子の生活費分は2万000円となります(いずれも目安です)。

なお、第4小数点以下を捨象してますので、すべての係数を足しても1になりません。この速算係数は、あくまで目安・概算としてご利用ください(また、そのご利用について、弊所では責任を負えません。自己責任にてお願い申し上げます。)。

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