婚姻費用・養育費算定表|生活費指数とは

今回は、裁判所が公表している婚姻費用・養育費の算定表あるいは標準算定方式の計算にて用いられている「生活費指数」について説明をします。

裁判所の方式で婚姻費用・養育費を計算しようとすれば、必ず「生活費指数」の概念が必要となります。

また、その内容を理解しておくことで、算定表上の養育費の金額から子供一人当たりの金額を割り出したり、算定表情の養育費の中に含まれている学校教育費の額を割り出したりすることもできるようになります。

生活費指数とは

婚姻費用・養育費を算定するための生活費指数とは、大人一人(※1)を「100」とした場合の子供に振り分けられるべき生活費の割合を指します。

生活費指数とその中身

算定表・標準算定方式では、子の生活費指数は、次のように設定されています。

  • 14歳以下の子につき62
  • 15歳以上の子につき85

この指数の中身には、①食費や被服費など個人単位で消費する生活費、②光熱費、家具什器購入費など、世帯単位で消費する生活費のほか、③後述の学校教育費が含まれています。

指数の使い方

ここで、生活費指数の使い方について、具体例を用いて簡単に説明をします。

具体例(ケース)

ここでは、非監護親である父親が14歳以下の子一人に対し、養育費を支払う、というケースを想定します。また、事例を簡潔にするため、妻に収入は無いものと仮定します。

上記のとおり、14歳以下の子の生活費指数は62です。親は100(※1)と見ます。

このケースにおいて、父親は、自分の基礎収入(生活のために自分で使い道をコントロールできるお金※2)につき、100対62の割合になるように、子供に養育費を支払わなければなりません。

※1 婚費算定に際しては、親の生活費指数は、払う側(義務者側)、貰う側(権利者側)ともに100とされます。

※2「基礎収入」の概念や年収からの計算方法については次の記事をご参照ください。

参照:婚姻費用・養育費の基礎となる総収入とは?算定表における「年収」について

指数による計算

上記の例で、月々の夫の基礎収入が10万0000円の場合を考えてみましょう。

この場合、父親はこの10万円につき、自分100、子供62の比率で分けるということになりますから、父親は自分の取り分を6万1728円とし、子供に3万8271円を振り分ける、という計算結果になります。

父親6万1728円=10万円×100÷(100+62)

子供3万8271円=10万円×62÷(100+62)

世帯構成により指数が加算される

上記のとおり、裁判所の算定表や標準算定方式では、子供の年齢別に2区分で生活費指数が定められています。

【再掲】

  • 14歳以下の子=62
  • 15歳以上の子=85

そして、算定表あるいは標準算定方式では、養育費の算定に際して、子供が二人以上いる場合、上記の生活費指数は加算されます。

子二人のケース

たとえば、母親に基礎収入が無く、父親が14歳以下の子二人の養育費を払うという場合を考えてみましょう。

子一人の時は、父親は、自分100、子62の割合で基礎収入を振り分ければよかったのに対し(前述)、子が二人(いずれも14歳以下)の場合、父親は自分100、子供たち124(=62+62)の割合で、基礎収入を振り分けて、養育費を支払う必要が生じます。

また、そのうちの子供一人が15歳以上だった場合、父親は自分100、子供たちの分として147(62+85)の割合で、基礎収入を振り分けて、養育費を支払う必要が生じます。

婚費の算定にも指数を用いる。

また婚姻費用の算定についても、上記指数が利用されます。

上記世帯がまだ離婚前であると仮定して、父親が妻と子供二人(14歳以下の子一人、15歳以上の一人)につき、婚姻費用を支払う、という場合を例として考えてみます。

養育費だけの場面では、父親は、自分100、子供たちの分として147(62+85)の割合で基礎収入を振り分ければよかったのに対し、婚費の場面では、妻の生活費分も振り分けの対象となります。

そして、親の生活費指数は100です。

そのため、このケースで、夫は、「自分100」対「妻と子供たちの分247(100+62+85)」の割合で基礎収入を振り分けることになります。

生活費指数の中の学校教育費

最後に、学校教育費について補足します。

上記のとおり、裁判所は、未成年者につき、二区分に分けて、子に振り分けるべき生活費の指数を設定していますが、その中身には、学校教育費が含まれています。

教育費考慮前の指数と考慮後の指数

この学校教育費ですが、生活費指数の中に占める割合は、やはり年齢区分に応じて異なります。

この点に関し参考となるのが、「養育費、婚姻費用の算定に関する実証的研究 法曹会 令和元年12月23日 第1版47頁」です。

ここでは、学校教育費考慮前の生活費指数と考慮後の生活費指数につき、次のように説明されており、参考となります。

  • 14歳以下の子
    学校教育費考慮前の生活費指数=51
    学校教育費考慮後の生活費指数=62
  • 15歳以上の子
    学校教育費考慮前の生活費指数=60
    学校教育費考慮後の生活費指数=85

国公立中学校・高校の学校教育費が前提となっている

また、上記の学校教育費考慮後の生活費指数は、国公立中学校ないし国公立高校の学校教育費用及び国公立中学校・国公立高校の子がいる勤労者世帯の収入を前提に設定された数字です。

学校教育費と平均収入0歳~14歳
(公立中学校)
15歳以上
(公立高等学校)
平均学校教育費(年間)13万1379円25万9342円
国公立中学校・国公立高校の子がいる勤労者世帯の収入732万9628円761万7556円

そのため、義務者の収入が、標準算定方式が前提とする上記の世帯平均収入を上回る場合、算定表・標準算定方式で算定される養育費においては、国公立中学・高校の学校教育費以上の額が考慮されている、という結果になります。

このことは、義務者が高額所得者であり、子供が私学に通っているなどのケースで、養育費の金額を加算すべきか、加算すべきとしてどの程度加算すべきか、という判断に影響を及ぼしえます。

参照:養育費とは別に学費を請求できるか。私学進学の場合は?

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