「この証拠で、不貞・浮気の証明できますか」、弁護士が受けることの多いご相談の一つです。今回はこの不貞・浮気の証明について解説します。
不貞・浮気を証明するための主張・立証構造
不貞行為・浮気の証明は、本人の自白が無い限り、各種の証拠から、総合考慮により判断されます。
民法において、離婚原因・慰謝料請求の原因となる不貞・浮気は、「自由意思に基づく肉体関係」です。
これを、離婚を請求する側・慰謝料を請求する側が証拠により、証明する必要があるわけですが、自白が無い限り、不貞・浮気を証明する直接証拠は、通常は手に入りません。
そこで、証拠から、関連事実(これを「間接事実」と言います)を立証し、こうした関連事実がったのだから、不貞・浮気があったに違いない、という推論を交えて、証明をしていくことになります。
推論が混じりますので、100%の証明はできませんが、合理的に考えて、ほとんど間違いないだろう、と言えるところまで、裁判官の心証を基礎づけられれば、不貞の証明成功となります。
主張・証明構造の例
各種証拠の評価
以下、上図の事例構造を基礎に、各種証拠に対して与えられる評価・認定できる事実を見ていきます。
証拠1(メールやLINE)
たとえば、夫Aが、妻以外の女性Bとの間で、ABが恋人でなければ送信しないようなやりとりをしていたとします(上図証拠1)。
もちろん、浮気を疑わせる事実ではあります。
しかし、これだけでは、「肉体関係があった」との証明には遠く、ABが、気持ちの上で、思いあっていただけ、などと反論されてしまいそうです。
※なお、メールやラインも、内容によっては、証拠価値が相当高い証拠となる場合もあります
証拠2/3(GPS・写真)
では、ここに、さらに、AがBのマンションに入り浸っている写真が証拠としてあり(上図証拠3)、かつ、マンションに居る時間もGPS(証拠2)で特定できた場合はどうでしょうか。
これらの証拠から、Aは、Bのマンションに何度も行っている、しかも相当程度の時間を共に過ごしている、との事実が認定できます。
恋人かのようなメール・ラインをしている二人が、同じマンション内で、相当程度の時間を過ごしているのです。
この証拠があれば、Aが「単なる仕事で、マンションに行った」と言い訳しても、上記メールの内容から排斥できそうです。
証拠4(録音)
さらに、Aの説明の録音として(証拠3)、マンションに行っている時間帯について、最初は、「職場で仕事をしていた」と嘘をつき、マンションに行っている写真を見せたら、「1回だけ言ったことがある」と嘘をつき、多数回言っている写真を見せたら、「マンションには行ったけど、すぐ帰った」と嘘をつく、こうした不合理な弁解を繰り返していたらどうでしょう。
この録音があることで、Aの反論は相当程度、排斥できそうです。また、Aが合理的に反論できていない、という事実自体、浮気を推認させる事実として働き得ます。
証明・立証
一つの証拠では不十分な場合でも、証拠が重なっていくことで、だんだんと、裁判官の心証形成は傾いていきます。
何らの証拠も提出しない場合、裁判官の心証は、「白」です。証拠の提出により、これを「グレー」に変え、さらに「黒」に代えたときが立証成功です。
上記のケースでは、「➀恋人でなければならないようなメールをしている二人が、➁長時間、同一のマンション内で一緒の時間を過ごしており、かつ、➂その言い訳も不合理だなんて、Aは浮気しているに違いない。」との心証を得ることで、不貞を立証しています。
立証・反証活動
不貞行為・浮気の証明は、直接これを証明できる証拠がある場合は少なく、複数の証拠から、複数の関連事実を証明し、複数の関連事実から、「浮気がなされたに違いない、そう考えて差し支えない」と裁判官の心証を獲得していく作業です。
これに反論する側は、証拠から事実を推認する過程に反証を加えたり、別の証拠を提出するなどして不貞の事実を争っていくことになります。
また、証拠には、それぞれ濃淡があります。
たとえば、上記の証拠2が、マンションではなく、「ラブホテル」に出入りする写真であれば、その証拠の価値は一層高まります。
加えて、実際の案件で、いかなる証拠があるか、その証拠からどのような事実が導けるかは、ケースごとの判断となります。
不貞の証明・証拠の評価につき、お悩みなら、是非弁護士にご相談ください(参照: 不貞・浮気|北九州の弁護士)。