父又は母の間でなされた家庭裁判所の調停や審判手続を経て、「子供と会わせる」「面会させる」旨の結論が得られても、これが守られず実現しない場合、当事者の取り得る手段としてどのような手段があるでしょうか。
面会交流に係る履行勧告
履行勧告は、家庭裁判所から、親権者ないし監護親に対して、面会交流のルールを守るよう促してもらう仕組みです。
家事手続法289条1項は、家庭裁判所は、審判で定められた義務の履行状況を調査し、その義務の履行を勧告することができる旨規定しており、この規定は、同289条7項によって調停についても準用されています。
ただ、これに従わない場合に、相手方に財産の負担などの直接のペナルティはありません。
面会交流の強制執行
そこで、次の実現手段として考えられるのが強制執行です。
直接強制について
直接強制とは、裁判所の権力で相手親の意思に関係なく義務の内容を直接的に実現する方法です。
面会交流の実現に際して、裁判所の執行官が実力行使で子供を無理やり連れてくる、という方法はとり得ないため、直接強制はできないとされています。
間接強制について
そこで、面会交流に関する強制執行の方法として、間接強制がクローズアップされます。
間接強制は、会わせない場合に相手親に金銭的な負担を課すことで、心理的・経済的なプレッシャーをかける方法です。
この手段は、「子に会わせる」という調停の結果、あるいは審判の結果があれば、いかなる場合でも取り得る、というものではなく、その内容が一定の条件を満たしていることが必要となります。
既にある調停の結果・審判の結果によっては間接強制ができないという場合、間接強制可能な内容の結果を求め、再度の調停・審判の申立てを行うことも検討対象に入ります。
この場合、調停・審判書きがあってもなお面会が実現しなかった、という事情を裁判所が斟酌してくれる場合がありますので、初回の調停・審判とは別の結論が得られる可能性があります。
その他の実現手段
その他、次に述べる二つの請求を「実現手段」と位置付けることには異論があるかもしれませんが、実現のための働きを有しうる、という点で、次の二つの請求を挙げておきます。
損害賠償請求について
調停や審判で「子供に会わせる」という結論が得られている、という場合に比監護親が採り得る手段としては、損害賠償請求があります。
会わせないことによる精神的苦痛を慰謝するために金銭を支払え、との請求を立て、プレッシャーをかけることで、面会交流の実現を目指します。
この請求が認容された裁判例もあるため、この請求を立てることは、面会交流実現のための働きを有し得ます。
親権者の変更について
さらに、面会交流に対する非寛容性・拒否は、親権者変更の考慮要素となり得ると考えられています。
そのため、面会交流が実現しない場合、親権者の変更請求がなされるケースもあります。
面会交流に応じないなら、親権者の変更の請求も辞さない、とのプレッシャーが事実上、面会交流の実現に向けた働きを有することがあるのです。
なお、この上記に挙げた履行勧告と間接強制は、家庭裁判所の調停調書や審判調書などがあることが前提となりますが、以下の二つは、必ずしもこれを前提とはしていません。
ただ、面会交流の調停などを介さず、これら二つの手続を採ったとしても奏功する蓋然性は低く、家庭裁判所の審理を経ていない場合、通常は、その実現に向けて、面会交流調停を行うのが一般的です。