暴力・DVは、法定離婚原因の「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当しえます。裁判所に離婚を成立させてもらえる理由となりえるのです。
しかし、抽象的にはこのように言えても、実際には、簡単には離婚できないのが現状です。
話し合い自体ができない
暴力・DVが日常化している場合、離婚について前向きな話し合いをすることは非常に困難です。
DVの被害者においては、話し合いの場を持つことが怖く、そもそも話し合いができないということも少なくありません。
また、DV加害者となる方においては、往々にして自尊心が高く、離婚を切り出されることに対して強い抵抗感を暴力をもって示す、という態度に出るおそれもあります。
話し合いの場を持つこと自体が非常に難しいのです。
家庭裁判所の手続においても離婚成立は容易ではない
家庭裁判所において、調停や訴訟手続を行えば離婚できるか、というと、それも必ずしも容易ではありません。
調停手続での離婚が難しい理由
調停は話し合いの場ですので、DV加害者が離婚に応じなければ、成立することはありません。
調停でDVを主張しても、DV加害者がかえって反発し、離婚成立が遠ざかる場合もしばしばです。
DV加害者が、自分の責任を問われたと捉え、態度を硬化させたり、激高させたりするのです。ひどい話ではありますが、「自分が手を出してしまう原因は相手にある」などと言われるケースなどもあります。
訴訟手続での離婚が難しい理由
調停と異なり、裁判では、婚姻関係破綻を認めてもらえれば、DV加害者の同意なくとも離婚を成立させることが可能です。
ただ、婚姻破綻を基礎づけるための暴力・DVを裁判所に認めてもらうためには、証拠が必要となります。
この証拠も、あとから簡単に集められるというものばかりではありません。訴訟を行ったからと言って、容易に離婚ができるとは限らないのです。
現状で離婚ができない場合
現状、証拠が不足しているなどの理由で法的手続に踏み込めない場合、法律上は、離婚成立に向けて行うべきものとして弁護士がしばしば薦めるのが別居です。
DVと別居について
別居は、一定期間継続することで、それ自体をもって離婚原因との評価をうけることも可能です。そのため、証拠が十分ではないなどのケースでは、一定期間の別居期間をとるこが有力な選択肢となります。
暴力・DVについて、一定の証拠がすでに存在する場合には、その証拠も婚姻関係破綻を認定する武器となり、離婚に必要な別居期間も短くて済むケースが少なくありません。
さらに、一定の証拠がある場合には、DV防止法に基づく保護命令を得て別居を行う、ということも考えられます。
DVと婚姻費用の分担請求について
DV加害者が家計の収入を支えているという場合、別居をすることに不安があるかもしれません。
ただ、別居期間中の生活費については、行政による福祉的な支援を求めることも検討できます(生活保護につき、一定の配慮がなされ得ます(次の各リンク先参照))。
- 参照:昭和38年4月1日 (社発第246号) 各都道府県知事・各指定都市長あて厚生省社会局長通知(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8432&dataType=1&pageNo=1)
- 参照:昭和38年4月1日 (社保第34号) 各都道府県・各指定都市民生主管部(局)長あて厚生省社会局保護課長通知(https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00ta8433&dataType=1&pageNo=1)
また、DV被害者においても、当該加害者に婚姻費用の分担請求を行うことで、生活費の負担を求めることが可能です。
独力でこれを行うことは難しいと思われますので、暴力・DVにお悩みの場合には、ぜひ弁護士にご相談いただければと思います。
参考:婚姻費用|北九州の弁護士