モラハラ・精神的虐待を理由とする離婚の手続

モラハラ・精神的虐待というのは、肉体的な行為ではなく、精神的な嫌がらせ・暴力のことを指します。

肉体的な暴力と違い、目に見えない形で行われる上、モラハラ・精神的虐待を行う側が無自覚であることも少なくありません。

離婚調停の申立て動機の統計によれば、精神的虐待を理由とする離婚調停は、夫側の申立て件数に比して、妻側の申立て件数が圧倒的に多いのが現状です。

離婚手続

離婚手続きとしては、主として、離婚協議、離婚調停、離婚裁判の3があります。

モラハラを理由とする協議

モラハラ・精神的虐待を理由とする離婚の手続きも一般の離婚の手続きと同様、離婚協議が原則的な出発点です。離婚協議というのは、当事者間の話し合いで離婚を成立させる手続きです。

ただ、モラハラ・精神的虐待を理由とする離婚の場合、モラハラ・精神的虐待を受けている側から離婚を切り出すのは困難な場合が多く、離婚協議を開始することが出来ない場合も少なくありません。

こうした場合には、家族や第三者あるいは弁護士を介して話し合う、離婚協議を経ずに、離婚調停に踏み切るという方法を選択していくことを検討することになります(その間、多くのケースでは別居が必要になる)。

モラハラを理由とする調停

離婚協議をしたが離婚の合意ができなかった場合や、離婚協議自体をすることが出来なかった場合に検討することになるのが離婚調停の申立てです。

離婚調停というのは、裁判所において、公平かつ中立な調停委員関与の下、離婚の話し合いを進めていく手続きです。離婚調停を経て相手方の合意が得られれば離婚を成立させることが可能です。

また、モラハラ・精神的虐待を原因とする離婚の場合、相手と顔を合わせたくないと考える方が多くいますが、離婚調停では、相手と顔を合わせずに手続きをすすめていくことが可能です。

なお、裁判所にきちんと連絡をしておけば、待合室の別の階にしてくれるなど、裁判所側において配慮してもらえることが多いです。

福岡家庭裁判所小倉支部では、離婚調停の申立人と相手方の一般的な待合室は、いずれも4階にありますが、一定程度、離れた場所に設置されており、待合室で顔を合わせずに済むようになっています。

また、それでも不安があれば、暴力やモラハラが問題となる案件の場合、事前に家庭裁判所に伝えておけば、たとえば待合室を4階と5階にする等の配慮をしてもらえるケースが多いと思います。

モラハラを理由とする裁判

離婚調停でも離婚を成立させることが出来なかった場合、次に検討すべきは離婚裁判です。

婚姻を継続しがたい重大な事由

離婚裁判というのは、法定の離婚原因がある場合に、相手方の合意が無くても裁判所の判断を得て強制的に離婚を成立させる手続きです。

モラハラ・精神的虐待による離婚請求の場合には、法定離婚原因の一つである「婚姻を継続し難い重大な事由」があるとして離婚を請求していくことになります。

婚姻を継続し難い重大な事由というのは、夫婦の婚姻関係が回復不可能ないし著しく回復困難な場合を指します。

言い換えれば、モラハラ・精神的虐待により、夫婦間の生活がもはや破綻していると言えることが必要です。

そして、モラハラや精神的虐待を離婚請求の主たる理由とする場合、この婚姻を継続し難い重大な事由があるか否かは、嫌がらせや言葉の暴力の程度や嫌がらせ・言葉の暴力が続いた程度、被害者の精神的苦痛の程度・結果等を総合的に考慮して決せられます(※)。

※なお、実際上の裁判では、モラハラや精神的虐待のみを主張するのではなく、別居期間が相当程度続いている等、その他の事情も合わせて主張していくことになります。

モラハラ・精神的虐待の証拠

モラハラ・精神的虐待を理由とする離婚裁判では、離婚を請求する側がモラハラ・精神的虐待との評価を基礎づける事実を、離婚を希望する側が立証していくことになります。

この場合に重要になるのは、やはり証拠です。

モラハラや精神的虐待を評価づける事実を根拠づける証拠としては、たとえば、心療内科の診断書やカルテ、録音音声やメール、LINE等のやり取り、日々の嫌がらせなどを記録した日記等が挙げられます。

実際、離婚に関する相談に際しては、モラハラや精神的虐待を理由とする離婚の相談のケースがかなりの割合を占めています。ところが、実際、どこまで証拠があるかかというと、本人の証言以外に証拠がない、というケースが多いです。

録音等の証拠が取れれば、モラハラを立証する大きな武器となりますので、ご検討してみてください。たとえば、最近ではスマホでも容易に録音ができます。

参照:モラハラ認定の難しさ(証拠がない・夫婦喧嘩の範囲などとされるケース)

慰謝料請求について

慰謝料請求モラハラ・精神的虐待との評価を基礎づける事実を立証し得る場合には、離婚だけでなく慰謝料請求も肯定され得ます。

離婚の際の慰謝料というのは、相手方配偶者の故意又は過失によって被った精神的苦痛を慰藉するための損害賠償金です。

慰謝料の金額は、モラハラ・精神的虐待の程度や、被害の程度・重大性、モラハラ、精神的虐待が続いた期間などを考慮して判断されます。

ただ、その立証は、必ずしも容易ではありません。

参照:モラハラを原因とする慰謝料相場とその認定を受けるための難易度(証拠や評価の問題)

 

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