どちらが得?離婚をせず婚姻費用を貰うor離婚をして養育費を貰う

法律相談で、「婚姻費用と養育費、どっちがが得ですか」という質問を受けたことがあります。

これは、夫からお金をもらう立場にあった「妻」側から離婚相談に際して受けた相談でのことでした。

そこで、今回は、「離婚をせず婚姻費用を貰うor離婚をして養育費を貰う」のどちらが得か、という点について解説をします。

なお、離婚によって得られる「相手と会わなくて済むようになる」などの「無形のメリット」は本稿では検討外としますのでご了承ください。

相手から貰う「金額」だけでみたら婚姻費用のほうが大きい

婚姻費用と養育費の金額とを比べた場合、通常は、婚姻費用のほうが、養育費よりも相手からもらう金額は大きくなります。

参照:婚姻費用について

参照:養育費について

婚姻費用の金額の方が大きくなりやすい理由

通常、婚姻費用は、「①夫婦の一方の生活費+②子供の育児の費用」を含むのに対して、養育費は、「②子供の育児の費用」のみを指します。

家庭裁判所が策定した標準算定方式によれば、婚姻費用の中の「②子供の育児の費用」をもらう場合の指数と、養育費として「②子供の育児の費用」をもらう場合の指数とで両社に差がありません。

そのため、一般には、婚姻費用のほうが養育費の金額よりも大きくなります。

参照:養育費・婚姻費用の標準算定方式の基本的な考え方

参照:婚姻費用に養育費は含まれるか(概念・共通点・違いを比較)

「夫」と「妻と子一人」というケースでは

ここで、仮に、「夫」が「妻と子一人」に対して婚姻費用や養育費を支払う、というケースを想定します。

この場合、婚姻費用として、夫が妻に支払うべき金額は、「妻+子供の分」で算定され、養育費として、夫が子に支払うべき金額は、単純の「子供の分」として算定されることになります。

したがって、基本的には、「金銭をもらう側」からすれば、「婚姻費用のほうが得」(もらえるお金が大きい)であり、「金銭を支払う側からすれば」、養育費のほうが得(支払う額が小さい)となります。

「得」を考えるうえで、相手から貰う金銭以外に考慮すべきもの

上記では、「夫婦の一方が支払う金額」に焦点を当て、通常は、婚姻費用のほうが金額は大きくなる、と説明しました。

離婚後の自治体の支援策も考慮・検討の対象に

もっとも、「婚姻費用」は離婚前、「養育費」は離婚後にもらえるお金です。そして、離婚後に子育てを行うひとり親世帯には、通常、多かれ少なかれ、自治体の支援があります。

そのため、婚姻費用と養育費とで、どちらが得かを考える際には、さらに、自治体による支援など、「離婚によって得られるほかのメリット」の有無や大小も考慮の対象となってきます。

自治体の「ひとり親支援」などを考慮にいれたとき、夫婦が婚姻している間には享受できないが、離婚によって、ひとり親世帯となったときに享受できる社会・福祉的な支援の有無・大小が考慮の対象となるのです。

  • 離婚前にもらう⇛婚姻費用
  • 離婚後にもらう⇛養育費+自治体によるひとり親支援などによるメリット

自治体のひとり親支援策

自治体によっても異なりますが、ひとり親世帯の支援策として、たとえば、次のような支援をあげることが可能です。

  • 児童扶養手当
  • 児童育成手当
  • ひとり親家庭住宅手当
  • ひとり親家族等医療費助成制度

その他、直接の経済支援ではないものの、多くの自治体では、保育所優先入所やひとり親への就業支援などの支援措置が採られています。

また、「ひとり親世帯」だけを対象とした支援ではありませんが、ケースによっては、「生活保護」による支援が視野に入ってくる場合もありえます。

どちらが得かを判断するために確認すべきこと

上記に述べた通り、相手親からもらえる「お金の大小」だけで判断した場合、婚姻費用のほうが、金額が大きく、貰う側からすれば、「婚姻費用のほうが得」ではあります。

しかし、上記のような支援策を考慮に含めた際には、結果的には「養育費のほうが得」というケースも少なからず生じ得ます。

特に、義務者の所得が相当程度低く、その結果、婚費・養育費としてもらえる金額が極端に少ない、といえるケースではその傾向が強いです。

もっとも、どういった支援が受けられるのかは、お住いの自治体の制度や、未成年者の子の人数、子を監護する親側の所得の多寡にもよるので、「離婚せずに婚姻費用をもらい続ける」のと、「離婚をして養育費をもらい、かつ一人親世帯の支援をうける」のとで「いずれが得か」は一概には判断できません。

そのため、どちらが得かを判断するためには、個々の家庭の事情をもとに、離婚後に得られるであろう経済的支援策などを自治体に確認することが必要となります。

 

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