親権者や監護権者の指定・変更に際して考慮されるとされる要素の一つに「面会交流に対する寛容性」と呼ばれる要素があります。
面会交流に対する寛容性とは
面会交流に対する寛容性とは、親権あるいは監護権の取得を希望する者が、自身が未成年者の親権・監護権を取得した後、相手配偶者が未成年者と面会交流をすることを許容していることを指します。
これを許容している場合、「面会交流に対して寛容性がある」などと表現し、許容していない場合、「面会交流に対して非寛容的である」などと表現します。
寛容性が考慮要素になる理由
面会交流に対する寛容性が、親権・監護権者の指定に際して、家庭裁判所の甲代要素となるのは、相手配偶者と未成年者との面会交流を許容しない者が親権者・監護権者となってしまった場合、相手配偶者と未成年者との精神的な交流の機会が奪われ、子の健全な発達に沿わない、と考えられるためです。
反対に言えば、面会交流を許容している者に親権や監護権を取らせた場合、未成年者は親権・監護権を通じて一方の親との関係を継続し、他方の親とも面会交流を通じて、関係を継続することができます。
両者の比較において、一方親との関係が断裂させてしまうよりも、面会交流を許容する親側を親権・監護権者として指定したほうが、両親とのつながりが維持され、子の福祉に沿う、との理由から、面会交流に対する寛容性は、親権者や監護権者の指定に際して、裁判所の考慮要素とされています。
面会交流に対する寛容性のウェイト
面会交流に対する寛容性は、非監護親が、子との面会交流を求め続けているにもかかわらず、相手配偶者がこれを否定し続けているようなケースでクローズアップされます。
ただ、こうしたケースにおいて、家庭裁判所が片親が「面会交流に不寛容」であることを根本的な理由として親権者や監護権者の指定・変更に踏み込むことは考えにくく、面会交流に対する寛容性のウェイトはそこまで重くありません。
親権・監護権の取得を巡る争いに際して、若干の考慮要素にはなりえるものの、面会交流に関する請求は、第一義的には、面会交流に関する条件などを定める審判やその後の執行手続によって解決されるべきものとも考えられ、「面会交流に関する寛容性」は、あくまで親権者や監護権者指定の一要素にすぎない、と位置付けられます。
親権者や監護権者の指定に際しては、子供の意思や監護の継続性などの要素に重点がおかれることのほうがよほど多いところです。
参照:子の意思の尊重について