親権者・監護権者の指定に際して、裁判所が考慮するとされる要素の一つに「経済的事情」があるとされます。
親権者等の指定に関する経済的事情の主張
親権者や監護権者の指定に際して主張される経済的事情に関する主張には次のようなものがあります。
「子供を育てていくだけの収入がない」のだから、相手には親権者・監護権者としての適格性がない
「自分の方が、はるかに収入が多く、子供に幸せな生活を送らせられるのであるから」、自分の方が親権者・監護権者としての適格性がある
現在の、日本社会において、上記の主張は、得てして男性・父親側からなされる傾向が強いところです。
裁判所の評価
経験的なところでいえば、上記のような「経済的事情」は、家庭裁判所には響かないことがほとんどです。
「経済的事情」を裁判所が考慮する、とされているとは言え、そのウェイトは極めて低いと思われます。
その理由として、一方の親の「収入が低い」との事情は、養育費(離婚前の監護権が争いとなるケースではは婚姻費用)にて、一定程度カバーできることが挙げられます。
また、児童扶養手当、その他医療費の助成など、シングルマザー、あるいはシングルファザーへの公的給付においても経済面は一定程度カバーされます。
現在、収入が無い、あるいは少ない、といったケースでも、収入面が少ないことは、上記のような制度の下で、一定程度カバーされるため、裁判所が経済的事情にウェイトをおいて判断をする、いうケースはほとんどありません。
親権者や監護権者の指定に際しては、子供の意思や監護の継続性などの要素に重点がおかれることのほうがよほど多いところです。
参照:子の意思の尊重について
生活の見通しをつける
むろん、収入がない、少ない、といったケースにおいて、「裁判所がこれにウェイトを置くことが少ない」からといって何らの対応もしなくてよい、というわけではありません。
親権者・監護権者となろうとする者は、たとえば次のような対応を行い、経済的リスクが解消している、あるいは解消する見込みであることを裁判所に主張しておくことが望まれます。
- 養育費(婚姻費用分担請求)を行う。
- 児童手当を受給する
- 実家等の支援が期待できる場合には、その具体的な内容を主張する
- 就労の可能性・見通しを主張する(子供の就園・就学状況との兼ね合い)
要は、ご自身が、子供とともに安定した生活を営めるだけの見通しを裁判所に示す、ことがポイントになります。
これは感覚論的なところではありますが、客観的な状況に照らして、「働ける人」は、裁判所に対して、「働きます」「働く予定です」と答えられる方が心証は良いように感じられます。
し、「働けない事情」がある場合には、これをカバーするだけの方途・見通しを主張しておくことが望まれます。