離婚の有効・無効を争う手続き(離婚無効調停・離婚無効訴訟)

協議離婚は、戸籍法の定めるところにより、届け出をすることによって、その効力を生じます。

要は、離婚届けを管轄の市区町村役場に提出することで、離婚が成立するのです。

ところが、市区町村役場は、離婚届の受理に際して、真に離婚意思に基づいて離婚届が作成されているか、勝手に作成されていないか、といった点は審査しません。

そのため、勝手に作成された離婚届でも受理され、戸籍には協議離婚と記載されます。

離婚意思が必要

しかし、常識的なことですが、法律的には、勝手に離婚届が作成され、これが提出されても、離婚は成立しません。

基本的なことですが、離婚届による離婚成立には、大前提として、夫婦双方に離婚意思があることが必要になるのです。

離婚意思というのは、法律上の夫婦関係を解消する意思のことです。

協議離婚にはこの離婚意思が必要となるため、離婚意思なく勝手に作成された離婚届が市区町村役場に提出され、かつ受理されたとしても、当該届けによる離婚は実体法上、無効です。

参照:協議離婚の無効と追認

離婚無効を争う方法

上記のとおり、離婚意思に基づかない離婚届の提出による離婚は無効です。

ただ、上記のとおり、市区町村役場は、一旦これを受理して、戸籍に「協議離婚」と記載します。そのため、戸籍上は、有効に離婚が成立したかのように扱われます。

そして、たとえば、相続などの場面では、戸籍に記載された離婚が成立したことを前提に相続人の調査や遺産分割協議等の手続きが進行してしまうという不都合が発生します。

では、こうした不都合を排除するため、離婚無効を主張して、戸籍の記載の訂正を求めたい、という場合、どのような手続きをとればいいのでしょうか。

離婚無効調停

いきなり市区町村役場に行って、戸籍の訂正を求めても、これには応じてくれません。

これを覆すには、通常、家庭裁判所に対して離婚無効調停を申し立てることになります。

この家庭裁判所の調停において、当事者間で、協議離婚が無効であるとの合意ができ、家庭裁判所が種々の調査等を行った上で、合意が正当と認めた場合、合意に従った審判がされます。

そして、この審判が確定した場合、市区町村役場に対して、審判書謄本と確定証明書を添付の上で戸籍訂正の申請をすることで、ようやく協議離婚との戸籍の記載を訂正することができるのです。

離婚無効訴訟

さらに、仮に離婚無効調停において、協議離婚が無効であるとの合意が整わなかった場合には、離婚の無効を主張する当事者は、訴訟において、離婚無効を主張していくことになります。

人事訴訟法第2条第1号に定義された「協議上の離婚の無効」の「確認の訴え」がこれに当たります。

この訴訟の審理において、離婚無効を主張する側の言い分が認容されれば、離婚が無効であることを確認する判決がなされます。

そして、離婚の無効を主張する側は、この判決謄本及び確定証明書を市区町村に提示して、戸籍の訂正を求めていくことになります。

なお、離婚無効の確認の訴えについては、調停前置主義というルールが採られており、同訴えを行うに先立って、離婚無効調停の手続を踏まなければなりません(家事事件手続法257条)。

いきなり訴えを起こしても、特別な事情が無い限り、事件が調停手続に付されてしまいますので、注意が必要です。

 当事者の一方が死亡している場合

上記離婚無効調停及び離婚無効確認の訴えは、当事者の一方が生存していることを前提に記載しました。

ところが、事件の中には、離婚届提出後、一方当事者が死亡してしまっているというケースもあります。

こうしたケースでは、夫婦間で調停をすること、裁判をすることはもはや不可能です。

そこで、人事訴訟法は、この点を手当てし、当該訴えの被告とすべき者が死亡し、被告とすべき者がないときは、検察官を被告とする、と規定しています(人事訴訟法第12条)

公益の代表者として、検察官が、相手方として訴訟対応することになるのです。

なお、この場合には、上記調停前置主義はとられないと解されています(いきなり訴訟を起こしても、調停に付されない)。

比較的まれなケースですが、このように、離婚無効の相手方となるべきものが死亡していた場合には、検察官を相手取った人事訴訟を通じて、離婚の無効を主張していくことになります。

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