離婚時の全体財産に関する財産分与の割合については、2分の1ずつ、という判断がなされるのが原則的です。
他方で、財産形成への寄与度・貢献度に違いがあれば、2分の1という判断は修正されえます。
割合の修正の方法
ここで、財産分与の割合を例外的に修正・変更する場合の方法について確認をしておきます。
全体財産における割合を変更するのが一般的
財産分与における分与の割合が例外的に修正されるとき、その修正は、全体財産における割合の修正という形でなされるのが一般的です。
たとえば、夫婦共同の財産として、預貯金、株式、車両、不動産などがあった場合、これらの価値全体を把握したうえで、夫婦の取得分をたとえば、夫40%、妻60%などとして、修正割合を変更します。
特別の寄与・貢献がなされた財産が他の財産と切り分けられる場合
もっとも、財産分与の方法については、民法に個別のルールは定められていません。
そのため、全体財産に修正を加えるよりも「公平に資する」あるいは「合理的」な他の修正の方法があるのであれば、その方法により修正が図られる、ということもありえます。
夫婦の協力・寄与につき、たとえば、夫の寄与が、特定の財産の形成に寄与しており、その他の財産の形成と切り分けられるような場合には、当該特定の財産についてのみ、清算割合を切り分ける、というケースも生じえます。
たとえば、夫婦の共同財産として、預貯金、株式、車両、不動産が存在したところ、不動産の価値の維持・形成についてのみ、夫婦のどちらかの寄与が大きい、と認められる様な場合、不動産についてのみ、清算割合を修正し、その他の財産については、50%ずつ分ける、という方法も成り立ちえるのです。
平成29年3月29日東京家庭裁判所判決
最後に、上記と類似の問題状況が発生したケースとして、平成29年3月29日の東京家庭裁判所の判決を紹介します。
このケースは、結婚後に設立された会社の株式につき、財産分与の対象としつつ、その清算割合を変更し、その他の財産については、清算割合を50%ずつとする、という判断をした判決です。
株式とその他の財産を切り分けて判断
平成29年3月29日東京家庭裁判所判決の内容は以下の通りです。なお、ここにいう「A」は婚姻後に設立された会社です。
【平成29年3月29日東京家庭裁判所判決】 原告=夫 被告=妻
会社の株式について
裁判所は、次のような事情を挙げて、「被告の寄与は、Aの経営を継続して行ってきた原告の寄与と同等とはいえず、原告が認める3割を超えるものとは認められない。」と判断しました。
- 原告は、Aの設立に当たり490万円を出資して4900株を取得し、被告は10万円を出資して100株を取得したこと
- 現在は、原告が3900株、被告が100株、長女と三女が合計1000株をそれぞれ保有していること
- 被告は当初はAの事務を担っていたが、平成10年以降、長女が被告に代わって事務を行うようになったこと
- 平成14年にGを購入する資金を借り入れるに当たっては、被告も原告とともに連帯保証人となったこと
- 別居した平成15年9月の時点において、被告はAの業務に関与をしていなかったこと、
- ・・・Aの純資産価額は、別居当時と比べて大幅に改善されたものであること、このような資産状況が改善した要因としては、平成22年4月期(平成21年5月1日から平成22年4月30日)に長期・短期借入金が大幅に減じたことや同時期から、不動産の販売業を抑え、賃貸、仲介、管理業に重点を置くようにするなどの経営上の決断がされたこと
その他の財産について
その他の夫婦共有財産の形成、維持に対する原告と被告の寄与は、同等と認めるのが相当である。
貢献度の違いを評価
このケースでは、夫婦が共同の財産として評価したAの株式に対する寄与が、夫と妻とで大きく異なったこと、特に、別居開始後に会社の資産状況が改善していることを捉え、会社の株式につき、夫の貢献が大きいと判断し、被告である妻の寄与を3割としました。
こうした判断がなされうるケースは例外的なケースですが、ある特定の財産について、他の財産と切り分けて夫または妻の貢献を評価しうる時には、こうした特定の財産についてのみ清算割合の変更がなされうることを示す裁判例として、参考になります。