事例:財産分与割合=夫70%:妻30% ~夫の資格取得の努力・就労態様を考慮~

離婚時の清算的な財産分与は、夫婦の協力の程度や財産形成への貢献の程度を勘案してその割合が決定されますが、実務では、得てして2分の1ルールが機能します。

本人の努力や就労態様が修正要素となり得る

上記のとおり、離婚時の清算的な財産分与については、いわゆる2分の1ルールに基づいて判断されることが多いです。

もっとも、これは絶対のルールではありません。

本人の努力や就労の態様などに照らして、例外的に、50%ずつの取り分割合が修正されることがあります。

参照:財産分与の清算割合(2分の1ルールとその例外)

今回紹介するのは、夫の資格取得の努力・就労態様が考慮され、夫の取得割合が約70%、妻の取得割合が約30%とされた事案です。

大坂高等裁判所平成12年3月8日判決

ご紹介する事案は、大坂高等裁判所平成12年3月8日判決のケースです。

結論:清算割合につき夫7割、妻3割と判断

この事案では、不動産・ゴルフ会員権、退職金の一部が財産分与の対象とあれ、その価値合計額の約七六〇〇万円が夫婦共同財産であると認定しています。

そして、裁判所は、この財産の形成について、次にように述べ、夫の取得割合を7割、妻の取得割合を3割としました。

【大坂高等裁判所平成12年3月8日判決】
「右財産の形成は、被控訴人が、一級海技士の資格をもち、一年に六か月ないし一一か月の海上勤務をするなど海上勤務が多かったことから多額の収入を得られたことが大きく寄与しており、他方控訴人は主として家庭にあり、留守を守って一人で家事、育児をしたものであり、これらの点に本件に現れた一切の事情を勘案すると、被控訴人から控訴人に対し、財産分与として形成財産の約三割に当たる二三〇〇万円の支払を命ずるのが相当である。」

「控訴人は、被控訴人の有する右資格をもってその寄与度を高く評価するのは相当でないと主張するが、資格を取得したのは被控訴人の努力によるものというべきであり、右資格を活用した結果及び海上での不自由な生活に耐えたうえでの高収入であれば、被控訴人の寄与割合を高く判断することが相当であるというべきである。」

理由:夫の資格取得の努力・就労態様を考慮

この判断の理由としては、夫(=被控訴人)が1級海技士という特別な資格を有しており(夫の努力で取得出来たものとの認定)、その資格を活かして就労をしていたこと、1年あたりの海上勤務期間が相当程度長かったこと(就労のため不自由な生活に耐えていたとの認定)、点が指摘されています。

判決では明示されていませんが、夫が海上で生活している間の妻の夫に対する協力が、直接的なものではなく、間接的なものであること、あるいはそのサポートが精神的なものであるに留まる可能性も判断の基底にはあるかもしれません。

こうしたケースを勘案すると、家庭から隔離された場所における勤務を要求される業務などを夫が強いられている対価として、相当程度多額の賃金を得ている、といった場合には、財産分与の清算割合の修正を検討する余地が出てきそうです。

なお、この事件の第一審となった神戸地判平成11年9月8日も、原告の右各財産は原告の特殊技能と努力によって形成された側面がある旨指摘しています。

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