離婚裁判においても、親権や監護権を巡り、家庭裁判所調査官の調査が行われることがあります。本記事では、いくつか、ケースを紹介します。
家庭裁判所調査官の調査
家庭裁判所の調査官による調査と言うのは、子の養育状況や子の意思、親の監護状況などを、心理学・教育学・社会学などに精通した家裁調査官が、訪問・面談などを通じて、これを調査・確認する業務を指します。
離婚調停に際して、子の親権や監護権が争いになったケースなどでは、しばしば調査官調査が実施されます。また、「調停」ではなく、「離婚裁判」でも、子の親権や監護権が争いになる場合には、調査官調査が行われ得ます。いくつかケースを検討します。
裁判手続における調査が実施される場合
- 離婚調停にて調査官調査が行われていない場合
- 調停から期間が空いた場合
- 事情の変化・確認すべき事項の変化がある場合
離婚調停にて調査官調査が行われていない場合
一つ目は、離婚調停にて、調査官調査が行われていない場合です。
離婚裁判は、これを起こすために調停を前置しなければならないのが原則です(調停前置主義)。調停にて、子の親権や監護権などが争点となり、実質的な手続が行われている場合、同手続内で調査官調査が実施されることも少なくありません。
他方で、調停には強制力はありませんので、当事者の一方が調停自体に消極的であり、実質的な手続が実施できていないこともあります。こうした場合、調停手続の段階で、家庭裁判所の調査が行われていない、調査するタイミングがなかった、というケースが生じてきます。
そのため、離婚裁判にて、裁判官が家庭裁判所調査官に命じ、子の意思や監護状況等の調査が行われることがあります。
調停から期間が空いた場合
また、離婚調停が終わってから、ずいぶんと期間が空いた場合も、訴訟段階において、調査官調査が行われ得ます。
調停における調査官調査の段階から、たとえば、1年6か月~2年が経過している、というようなケースでは、その間に、子供も成長し、当初は十分な意思を述べられなかった子が、自己の意思をより明確に発することができるようになっている、という可能性もあります。時の経過により、当初調査の段階よりも、子の意思を確認しやすい状況となることがあるのです。
そのため、調停段階における調査官調査から、ずいぶんと期間がたっている、と言う場合には、裁判手続においても、調査官調査が行われ得ます。
事情の変化・確認すべき事項の変化がある場合
上記とも関連しますが、調停段階における調査の段階と比較して、事情が変化しているとの事案や確認すべき事項に変化があるような事案でも、裁判手続における調査が行われやすい傾向にあります。
たとえば、離婚調停の段階では、祖父母が同居の下で、子供が監護・養育されていたのに対して、離婚裁判の時点で、祖父母が他界してしまっており、子の監護・養育状況に大きな変化が生じている、といったケースがこれに該当します。
離婚裁判手続段階における再調査の意味合い
離婚調停の段階で、たとえば、一旦母親有利な報告書が作成されたのに、離婚裁判の段階で、再度調査する、というのは、母親側からすれば、裁判所は、調停段階とは別の判断をしようとしているのではないか、とも思われるかもしれません。
しかし、裁判手続段階において、調査官調査がはいることの意味合いは、「もともとの調停段階での報告書の内容の再確認」であったり、「念のための現状の確認」であったりすることも少なくなく、裁判所が「判断を変えよう」「変えたほうがいいのでは?」と考えているとは限りません。
その意味で言うと、二度目の調査だからといって、妙に構える必要は無いと言えます。
調査を受ける側(子を監護している側)からすれば、たとえば、1回目の調査の時点と比較して、子供が健やかに成長していること、子の発達に応じた養育を行っていること、などを説明していくこととなりますし、非監護親からすれば、これらの点に問題がないか、調査内容を吟味・確認していくこととなります。