離婚調停等における家庭裁判所調査官の調査・立合について

今日は、家庭裁判所調査官による業務についてです。

家庭裁判所調査官の業務等

家庭裁判所には、法律の専門家たる裁判官のみならず、心理学・社会学・教育学などの専門的知見を収めた専門家がいます。家庭裁判所調査官です。

家庭裁判所調査官は、主として家事事件・少年事件において、家庭環境や子の心情の調査などを行っています。

協議離婚のケースで調査官が登場することはありませんが、親子関係が問題となる場合(離婚調停や面会交流調停等)では、調査官は、しばしば調停手続に関与します。

参照;家事事件手続法65条
家庭裁判所は、親子、親権又は未成年後見に関する家事審判その他未成年者である子(未成年被後見人を含む。以下この条において同じ。)がその結果により影響を受ける家事審判の手続においては、子の陳述の聴取、家庭裁判所調査官による調査その他の適切な方法により、子の意思を把握するように努め、審判をするに当たり、子の年齢及び発達の程度に応じて、その意思を考慮しなければならない。

調査業務

家庭裁判所調査官は、離婚事件や親権者変更・面会交流等の事件において、心理学などの専門的知見に基づき、問題の原因や背景を調査する業務を行います。

調査業務の対象となりやすい事件

離婚に関連して、調査官調査の対象となりやすい事件は、主として、子供の福祉が問題となるケースです。

たとえば、次のような事件が挙げられます。

  • 親権をめぐって父母双方に強い争いがある事件
  • 親権者の変更が申し立てられている事件
  • 面会交流の可否が問題となる事件
  • 面会交流の内容が問題となる事件

調査業務の例・対象

未成年者と面談して意思・意向を確認したり、親と面談をして、子供の監護状況を確認したりすることなどがその典型例です。

また、親子の交流に関して、試行的な面会交流が行われることがありますが、これも親子関係の調査の一環に位置付けられます。

調査業務の対象には、たとえば次のようなものがあります。

  • 子の意思・意向
  • 子の監護・養育状況
  • 父母の監護意思・意向

調査の方法

調査の方法は様々です。

たとえば、家庭裁判所調査官は次のような方法で調査を行います。

  • 子供との面談
  • 監護親・非監護親との面談
  • 監護親自宅の訪問
  • 保育園・幼稚園・小学校などへの連絡調査

調査報告書について

家庭裁判所調査官の調査結果は、「調査報告書」という形で、書面化されます。当事者も閲覧・謄写が可能です。

この調査報告書は、離婚調停などの手続できわめて重要です。

子どもの意向・状況が分かる

未成年の子供と離れて暮らす親にとって、子供がどんな状況・どんな様子で生活をしているのか、というのは重要な関心ごとです。

特に、面会交流がうまくいっていない、という事案では、離れて暮らす親にとって、別居後の子供の生活状況を知ることができる大きな機会となります。

調査報告書を読んで、子供が元気に暮らせていることが分かり安心した、今、親のことをこんな風に考えているのか、などと調査報告書の感想をおっしゃられる依頼者の方もいらっしゃいます。

また、調査官調査に記載される調査報告書の内容は、監護親にとっても、子供の内心(真意)を知るきっかけとなることが多いようです。

裁判官が報告結果を重視する

手続的な意味合いでも、調査報告書の結果は重要です。

離婚調停手続等において、多くの場合、裁判官は、未成年者や調停委員には、子供と直接話をする機会がありません。

また、上記のとおり、調査官は、心理学・社会学・教育学などの専門的知見を収めた専門家です。

子の意思(真意)の把握や当該手続の結果が子に与える影響度などを判断するために必要な知見・能力は、調停委員はもちろん、裁判官でも十分に有していません。

そのため、調査官調査が行われた場合、裁判官も、調停委員もその調査結果を相当程度、尊重、重視します。

たとえば、面会交流などの可否・条件を決める場合に(審判移行した場合に)、裁判官も調査報告書の内容・方向性に沿う判断を行うことがほとんどです。

立合業務

上記の調査業務は、家庭裁判所調査官の主要な業務ですが、さらに、調査官は、ケースによっては離婚調停などに立ち会います。これを立合業務と呼びます。

調停の立ち合いは、調査官と当事者とが協議の場をともにすることで、上記の「調査」の準備の場としての意味付けを有することもありますし、「調査」後に調査内容を当事者に説明する、理解を促す場としての意味付けを有することもあります。

また、場合によっては、心理学・教育学などの専門的見地から、事件解決のために当事者に一定の助言・アドバイスをすることもあります。

調査官へ要望を伝えることも重要

親権者の指定や面会交流の可否・条件が争点となるケースで弁護士が関与する場合、弁護士は、調査官の調査に対して大きな関心を寄せています。

上記のように、調査結果が手続の結果に大きな影響を与えるからです。

弁護士は、調査官調査に際して、特に確認してもらいたい事柄、調査官に意識を向けてほしいことなどを調停の場などで伝えています。

調査官の調査は、何度も行われるものではありません。子供との面談調査についても、「1回」の面談・聴取で終わることがほとんどです。

弁護士が関与しないケースであっても、通常は、事前に調査官と会う、話す機会があるはずです。

もし、当事者として、子の福祉のために、調査官において確認してもらいたいことがあれば、「後になって言っておけばよかった」とならないよう、それを調査実施に先立って伝えておくことが重要です。

 

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