離婚裁判とは? メリット・デメリットなど

今回は、離婚裁判の特徴、メリット・デメリット等について、説明をします。

離婚裁判とは

離婚裁判とは、夫婦どちらかからの「離婚させてほしい」との訴えの提起に基づいて行われる家庭裁判所の訴訟手続を指します。

離婚訴訟と呼称することもあります。

親権者の指定の他、慰謝料や財産分与、養育費、年金分割といった付帯的な事項も当事者の申立てに基づき審理の対象となります。

離婚裁判の特徴

離婚裁判の主要な特徴は次のとおりです。

  1. 当事者の合意なく、離婚を成立させることができる。
  2. 法定離婚原因が証拠によって認められる必要がある。
  3. 判決に形成力と執行力がある。
  4. 手続に時間とコストがかかる。

当事者の合意なく、離婚を成立させることができる。

離婚裁判の一番の特徴は、当事者の合意なく、離婚を成立させることができる、という点です。

離婚協議や離婚調停の本質は、「話し合い・夫婦双方の合意による解決」という点にあります。これには、夫婦双方が「納得して」離婚ができる、という点に利点があります。

もっとも、その反面、「離婚協議」や「離婚調停」では、当事者の一方がどうしても離婚に納得しない、親権をどちらが取得するのか、という点について、どうしても合意が成立しないという場合には、離婚が成立しません。

これに対して、離婚訴訟の本質は、司法という権力によって、夫婦の身分関係を解消する点にあります。

当事者の一方が、離婚に絶対反対だ、と言っていても、裁判所は、一定の場合に強制的に離婚を成立させることができますし、当事者双方が未成年者の親権を取得したい、との希望を有している場合に、裁判所は、その判断で、父母のどちらかを親権者に指定することができます。

これは、離婚協議や離婚調停にはない離婚裁判の特徴です。この特徴は、離婚を希望する者にとっては大きなメリットとなる一方で、絶対に離婚をしたくない、と言う者にとっては大きなデメリットとなります。

 

法定離婚原因が証拠によって認められる必要がある

上記において、離婚裁判では、当事者の合意が無くとも離婚を成立させることが可能だと説明しましたが、裁判所が離婚を成立させることができるのは、「法定離婚原因」が証拠によって認められる場合に限られます。

法定離婚原因というのは、民法770条1項に定める事由であり、法文上は、次の5つを指します。

  1. 配偶者に不貞な行為があったとき。
  2. 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  3. 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
  4. 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  5. その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

家庭裁判所において、離婚を成立させるのは、このうちのどれかに当てはまる事情があることを証拠によって認定してもらう必要があります。

参照:法定離婚原因とは

 

判決に形成力・執行力がある

離婚訴訟における「判決」には形成力と執行力があります。これは離婚を希望する者にとってはメリットとなりますし、離婚を否定したい者、慰謝料などの支払い義務を負う者にとっては大きなデメリットとなります。

形成力と執行力の順に、簡単に説明します。

形成力とは

判決の形成力というのは、判決には「夫婦という法律関係」を解消する力、親権者を指定する場合には、親権者を定める力があるという意味です。

協議離婚の場合、当事者が離婚届を出すことによってはじめて離婚が成立しますが、判決の場合、当事者を離婚させる判決が確定すれば、その確定をもって、「離婚」が認められます。

当事者が離婚届を出す必要はありますが(夫婦どちらかの署名で足りる)、この届出はあくまで「報告」的な届け出に留まり、法律上は、この届けが出されなくとも、離婚は成立したものと扱われます。

執行力とは

また、判決には執行力があります。

執行力と言うのは、権力により、判決で認められた権利を実現してもらえる力のことを指します。

たとえば、慰謝料を認める判決に基づいて、相手方の不動産などを差し押さえることができるのは、この執行力があるからです。

この執行力は、公正証書で一定の内容を含めた離婚協議書を作成した場合を除き、離婚協議による離婚の場合には認められません。

 

手続に時間とコストがかかる

離婚訴訟には時間とコストがかかります。こうした時間・費用的コストは、離婚を希望する者にとっては、概してデメリットとして働きます。

時間的コスト

離婚訴訟の審理期間は、標準的なケースでも1年から1年半程度を要します。

離婚訴訟に先立って、通常は離婚調停も行われていますので、離婚協議・調停からさらに裁判を経た、と言う場合、2年以上を要するのも珍しくありません。

経済的コスト

また、離婚訴訟は、上記のとおり、「証拠主義」ですし、「法定離婚原因がある」と裁判所に認めさせなければなりません。

そのため、裁判で離婚をしようとする場合、法文解釈の力、事実認定の力がどうしても必要になってきます。そして、多くの場合、弁護士による支援が必要不可欠となります。

この弁護士に依頼をするための弁護士費用も、当事者のコストとなります。加えて、実際に訴訟を行う際には、一定の実費を裁判所に納める必要があります。

 

メリット・デメリットとしての整理

離婚訴訟の特徴を、離婚を希望する側という視点で整理すると次のとおりとなります。

離婚裁判の特徴離婚を希望する側離婚をしたくない側
当事者の合意なく、離婚が成立させることができる。◎(合意なくして離婚が成立する)×(離婚意思なくとも夫婦関係を解消させられる)
法定離婚原因が証拠によって認められる必要がある。△(どちらともいえない。証拠の有無などによる。)△(どちらともいえない。証拠の有無などによる。)
判決に形成力と執行力がある。〇(強制執行などができる)×(強制執行などを受けうる)
手続に時間とコストがかかる。×(時間・経済的コストが大きい。)×(時間・経済的コストが大きい。)

 

 

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