離婚調停手続における調査嘱託(証拠収集)

離婚調停手続は、離婚協議と異なり、家庭裁判所において行う手続です。

離婚調停手続に際して、当事者は、離婚協議中にはできなかった証拠収集・証拠集めの手続が利用できます。これは、離婚調停のメリットの一つと言えます。

参照:離婚調停のメリット・デメリット

調査嘱託とは

離婚調停に際して、しばしば利用されるのが「調査嘱託」の手続きです。

調査嘱託は、家庭裁判所が官庁や金融機関、会社等の団体に対して、事実関係の調査を依頼することを指します。

離婚調停における調査嘱託は、どのような場合に利用されるのでしょうか。

財産の調査

調査嘱託がもっとも活用されるのは、離婚調停の相手名義の財産の有無などを確認するために利用されるケースです。

離婚調停に際して、調査嘱託の対象となりうる資料・情報としては次のようなものがあります

  • 銀行における取引履歴・残高
  • 証券口座にかかる取引履歴・残高
  • 生命保険契約にかかる解約返戻金の額・有無
  • 企業年金、確定拠出年金にかかる明細
  • 退職金の見込み額

こうした書類は、離婚調停の当事者が任意に出してくれれば、調査嘱託を行う必要はありません。

ただ、当事者の中には、書類の提出を拒む方もいらっしゃいます。しかし、これでは必ずしも適正な財産分与を行い得ません。

調査嘱託の手続はこうした場合に有効な手段となります。

住所の調査

また、調査嘱託は、一定の理由により住民票につき非開示とする措置が取られており、当事者が相手方の住所を確認できない、という場合にも利用しえます。

  • 長期間別居しており、相手方の住所も連絡先もわからない、
  • 弁護士などが職務上請求で住民票の取得を試みたが、非開示措置により取れなかった

この二つの要素が重なるケースでは、このままだと、離婚調停の通知先が分からず、家庭裁判所においても離婚調停を進めることができません。

そこで活用されるのが調査嘱託です。

こうしたケースでは、ややテクニカルですが、離婚調停の申立てと同時に、住民票にかかる調査嘱託をおこなうことで、裁判所から相手方の住所地に離婚調停の通知をおこなうなどの対応をしてもらえることがあります。

調査嘱託を行うには

調査嘱託を行うには、裁判所に対して、調査嘱託の申立てを行うことが必要です。

なお、かつては、離婚調停手続における調査嘱託につき、裁判所は慎重な姿勢を示していましたが、近年は比較的柔軟になりつつある、という印象です。

一定の情報が必要

調査嘱託の申立てをするに際しては、調査先・調査対象に関し、一定の情報があることが必要です。

たとえば、銀行の預貯金残高を調べたい、という場合、「預金」を管理している「銀行名」「支店名」という情報が必要となります。

裁判所が必要性を認めることを要する

また、調査嘱託の申立てを行ってもらえるのは、裁判所がその必要性を認めた場合です。手当たり次第、というわけにはいきません。

また、裁判所としては、調査嘱託手続を実際に行う前に、まずは当事者に任意の提出を促すことを勧めます。当事者が、任意に提出する場合には、調査を行う必要性が無いためです。

そのため、当事者としても、財産関係の証拠がないからと言っていきなり調査嘱託の申立てをするのではなく、主張書面や調停の場を通して、まずは任意に相手方に資料の開示を求めるのが通例となっています。

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