離婚調停が不成立の場合の弁護士費用についての一考

今回は離婚調停につき弁護士に代理を依頼していた、というケースで、調停が不成立に終わった場合の弁護士費用がどうなるか、についての一考です。

これは、次の二つのケースを分けて考えないといけません。

  • 離婚の成立を希望する依頼者から依頼を受けたケース
  • 離婚の拒絶を希望する依頼者から依頼を受けたケース

なお、「調停の不成立」については次の記事もご参照いただけますと幸いです。

参照:離婚調停の不成立とは

離婚の成立を希望する依頼者から依頼を受けたケース

弁護士が、離婚の成立を希望する依頼者から離婚調停の依頼を受ける場合、一般的には次のような費用が必要になると説明されます。

  • 着手金 依頼当初に弁護士に支払う費用
  • 報 酬 離婚成立に際して弁護士に支払う費用

このうち、着手金は、手続追行のための費用ですので、これについては、離婚の成否を問わず、弁護士に支払う必要がある費用です(「離婚できなかった」という結果をもって、弁護士は返還義務を負わない。)

他方で、上記のように、弁護士との契約において、「離婚成立」が報酬条件となっている場合、調停が不成立で終わると、「離婚」に関して、弁護士「報酬」は発生しません。したがって、不成立で終わった場合にこれを支払う必要はありません。

なお、離婚調停とは別に、婚姻費用分担請求や面会交流などに関して別途弁護士に依頼しており、そちらで成果があった場合、当該別件の手続に関し、弁護士関与の下で得た利益を基礎に、報酬を支払う必要があります。これは、離婚の不成立とは分けて考えられます。

また、弁護士との契約において、「タイムチャージ」(時間制の費用)が定められている場合や、「出廷日当」などが定められている場合、これらの費用は、調停が不成立に終わった場合においても必要となります。

離婚の拒絶を希望する依頼者から依頼を受けたケース

次に、弁護士が離婚の拒絶を希望する依頼者から依頼を受けた、というケースについてです。

こうしたケースにおいては、そもそも、弁護士の立場にでは、これを受任すべきか否か、というところから悩みが生じます。

これを受任する弁護士が少ないとすれば、「不成立」に終わった場合の弁護士費用が問題となるケース自体もあまり多くないかもしれません。

これらの点につき、弁護士間で話題となることもあまりなく、ウェブ上でも参考となる情報も少ないため、以下は、あくまで、一考となります。

着手金・タイムチャージ・出廷日当について

まず、「着手金」は、やはり、離婚の成否を問わず必要になります。タイムチャージや出廷日当も、契約書に定められていればこれに従います。

報酬について

報酬については、「離婚拒否」をするという立場から弁護士に依頼をしている場合において、「不成立で終わった」と言う場合にどうなるかは、はっきりした答えはないように思います。

もちろん、形式的な答えは「契約内容による」ということになるのですが、問題は各弁護士が契約内容をどう定めているかです。

報酬無しと定めるケース

当事者が出席を拒否し続けたようなケースでも「不成立」となり得るために、不成立という結果は「弁護士の仕事の成果といえないでしょうよ」という「気持ち悪さ」が弁護士に生じえます。

そのため、不成立につき、単純に「報酬」を定めない、という場合もあると思います。

また、想像ですが、「不成立で終わった」ことを理由とする「報酬」については、「無し」としたうえで、出廷日当、タイムチャージを課しているケースもあるのではないかと思います。

報酬有りと定めるケース

他方で、単純に、離婚拒否を依頼者が希望するケースにおいて、弁護士が調停手続を代理して追行することを受任したというケースで、「不成立」となった場合に「○○円」を弁護士に支払うなどと、と契約書に定めてあるというケースも想定することは可能です。

この場合、「手続の終結まで活動をしたこと」に対して着手金とは別に「費用」を課すことも、契約上は可能と解しうるため、「不成立」について報酬を定めることも理屈あるいは解釈を介して許容されるかもしれません(もちろん、全体的費用が相当性を欠いていないことが前提です)。

契約内容の確認が必要

いずれにしても、「不成立」となった場合に「報酬」が必要となるかは、弁護士との委任契約に拠ることとなりますので、既に契約が終わっている場合に、弁護士費用がどうなるかは、お手元の契約書を確認することが大切です。

また、これから契約をされる、と言う場合には、ご依頼の段階で、事前に弁護士に問い合わせ・確認をしておくことが重要となります。

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