間接交流とは

今回は、面会交流の態様の一つである間接交流についてです。

間接交流とは

間接交流とは、非監護親と未成年者とが、手紙・写真の送付など、非直接的手段によって交流を図る方法です。

これに対置されるのが「直接交流」です。これは、非監護親と未成年者とが直接会って交流を図ることをいいます。

単に「面会交流」というと、非監護親と未成年者とが直接会って会話をしたり、一緒に遊んだり、という「直接交流」がイメージされますが、調停や審判などにおいては、直接交流が認められず、間接交流が認められるに留まる、というケースも少なくありません。

また、直接交流が認められる場合でも、さらにこれを補完するものとして、間接交流が併用的に利用されることもあります。

たとえば、2か月に1回直接交流し、直接交流をしない月は、手紙や写真の送付を求める、といった態様です。

直接交流が認められず、間接交流となるのはどんな場合か

非監護親が子供と交流をしたいというとき、子供と「会いたい」というお気持ちを持つのは自然な感情ではあります。

弁護士が面会交流をしたい、という方を依頼者に迎えたとき、多くの方は直接交流を望み、弁護士はその希望の実現に向けて仕事をします。

しかし、たとえば、次のような事情がある場合、裁判所が直接交流を認めず、「間接交流から始めなさい」などの判断をすることがあります。

  1. 未成年者の心身に強度の負担がかかる
  2. 物理的に月々の面会交流が困難

➀未成年者の心身に強度の負担がかかる

裁判所が、直接交流を認めない理由として挙げるもっとも典型的な例は、いきなり面会交流を開始すると、子供の心身に強度の負担がかかる、というものです。

たとえば、長期間、非監護親が未成年者と会っていなかった、と言う場合、いきなり直接交流を始めるのは、子供にとって大きな環境変化であり、心身に大きなストレスがかかる、といった事情がこれに該当します。

また、別居前において、非監護親と未成年者との交流自体が良好ではなかった場合、別居前の状況に照らして、子供が直接会うことに恐怖感を有しているといった場合も、いきなり直接交流を開始するのは、子供の不安を増すかもしれないとして、直接交流が認められない理由とされる傾向にあります。

これを反対から見ると、別居あるいは離婚前の未成年者との関係が良好であり、かつ、別居あるいは離婚前から長期間が経過していない、といった場合には直接交流が認められ得る蓋然性が高くなります。

他方で、そうでない場合には、裁判所が認める交流の態様が間接交流にとどまる、という結果になる蓋然性が高くなります。

➁物理的に月々の面会交流が困難

上記の他、そもそも非監護親と未成年者の居住地が遠距離にあり(たとえば、東京と福岡、沖縄と福岡など)、毎月定期的に直接交流をするということが物理的に困難な場合に、間接交流が併用されることがあります。

たとえば、夏休みや冬休みなど未成年者の長期休みに直接交流を行い、それ以外の時期は間接交流を行う、といった態様です。

 

間接交流の種類・方法等

一口に間接交流と言っても、その種類・態様は様々です。たとえば次のようなものがあります。

種類・方法

  1.  手紙の送付・交換
    非監護親と未成年者とが手紙を送付しあって交流するという方法です。ケースによっては、非監護親からのみ送付し、子供に手紙を送付することを求めない、片面的な交流となる場合もあります。
  2.  メールやラインによる交流
    手紙ではなく、メールやLINEにて交流をはかる方法です。
  3.  電話による交流
    互いに一カ月に一度、親子で電話で話をする、といった交流方法です。
  4.  非監護親からのプレゼントの送付
    誕生日やクリスマスに、非監護親が未成年者に対してプレゼントを贈る、という方法です。
  5.  インターネット・オンラインを通じたビデオによる交流
    ZOOMやLINEビデオを介して、交流をはかる方法です。直接交流まではできないものの、子供が親に対してそこまで強い抵抗感を有していない、といった場合や互いの居住地が遠距離と言った場合に利用されやすい傾向にあります。
    2022年ころのコロナ禍においては、人の移動が大幅に制限されたたため、直接交流の代替手段として頻繁に利用されました。
  6.  監護親からの写真や各種資料の送付
    非監護親が未成年者の成長や現状をを知る手段として、監護親に対して未成年者の写真や成績表、場合によっては生活状況が分かる資料の送付を求めることがあります。
    こうした写真や資料の送付も、間接交流の一態様として整理されます。

交流の態様

上記に挙げた交流方法のうち、どういった方法が選択されるかは、ケースにより異なります。

一般論的に言えば、電話やオンラインビデオによる交流は、親子関係がそこまでこじれていない場合に採用されやすい態様です。

また、交流の方法は、これらの中から一つだけを選ばなければならない、といったものではありません。

たとえば、「手紙による交流」+「プレゼントの送付」であったり、これにさらに「電話による交流」を加えたり、と併用されます。

ここには無い方法、たとえば「チャット」や「オンラインゲーム」といった方法も、交流の手段としてありえるところです。

裁判所は、子供の意思・親子の関係性・子供の負担感の程度などを斟酌して、こうした手段・方法の中から何をどこまで認めるか、を判断しています。

 

間接交流と直接交流の切り替え

一旦、裁判所が間接交流のみを認め、直接交流しか認めなかったとしても、以後ずっと直接交流が認められない、というわけではありません。

たとえば、裁判所が、親と子供との関係性を理由に、間接交流しか認めなかった、と言う場合でも、その後の間接交流を通じて、親子関係が改善されれば直接交流が認められる、ということも考えられます。

他方で、一旦直接交流が認められてとしても、その交流の家庭で、関係性が悪化すれば、相手親が申し立てる別の調停・審判において、直接交流はもう認めない、間接交流だけだ、という判断がなされることもありえます。

 

間接交流の条項例

以下、間接交流の条項例を示します。当事者として条項を起案する場合には、事案に応じて改変したり、条項を組み合わせたりして主張をしていくことになります。、

条項例1(手紙+プレゼント+写真・成績表・報告書の送付)

1 申立人は、月に1度、相手方に対し、未成年者ら宛ての手紙を送付する。相手方は、申立人から上記手紙を受領したときは、これを未成年者らに交付する。

2 相手方は、未成年者らが申立人宛ての手紙やプレゼントを作成したときは、これらを申立人に送付する。この際、相手方は、上記手紙の内容を確認せず、また、未成年者らに対し、事前に、相手方が上記手紙の内容を確認しない旨を説明する。

3 申立人は、未成年者らの誕生日及びクリスマスに、相手方に対し、未成年者ら宛てのプレゼントを送付する。相手方は、申立人から上記プレゼントを受領したときは、これを未成年者らに交付する。

4 相手方は、申立人に対し、2か月に1度、未成年者らそれぞれを撮影した写真のデータを送信する。

5 相手方は、申立人に対し、未成年者らの在籍する学校の学期末に、未成年者らの成績表及び健康診断の記録の写しを送付する。

6 相手方は、年に3度、未成年者らの近況を記載した報告書を作成し、これを申立人に送付する。

7 当事者双方は、協議により、この面会交流実施要領の定めを変更することができる。

 

 

条項例2 (電話による交流)

申立人は、次の内容で、未成年者と年3回音声のみの電話による面会交流を行うことができる。

⑴ 実施日
春休み中 3月最後の日曜日(代替日は4月最初の日曜日)
夏休み中 7月最後の日曜日(代替日は8月最初の日曜日)
冬休み中 12月最後の日曜日(代替日は1月最初の日曜日)

⑵ 交流時間
1回当たり20分とする。

⑶ 事前通知
相手方は、電話による交流実施日の前月20日までに、開始時刻及び方法(申立人が架電する電話番号)を申立人に通知する。

 

 

条項例3 (オンラインビデオによる交流を代替的手段として定める場合)

1 相手方は、申立人に対し、本審判確定の日から、以下の要領で、未成年者と面会することを許さなければならない。

⑴頻度 毎月2回、原則として第2日曜日及び第4日曜日

⑵面会交流時間 午前11時から午後5時まで(日帰り6時間)

⑶立会い 相手方は面会交流に立ち会うことができる。

⑷代替日 未成年者の病気などのやむを得ない事情により上記の日程で面会交流を実施できない場合には、当事者双方は、未成年者の福祉を考慮して代替日を定める。

2 やむをえない理由により直接の面会交流を実施できない場合には、当事者双方は、これに代えて30分程度のテレビ電話による間接的面会交流を行うことができる。

 

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