養育費の支払いはいつまで?

養育費はいつまで支払うことになるか、養育費に関する法律相談に際して、しばしば問題になります。

子供が社会的・経済的な自立(未成熟子で無くなること)が目安

一般に、親の子どもに対する養育は、子供が社会的・経済的に立派な大人とすることを目指して行われるものです。

親権・監護権も、子供を一人前の大人とするために行使される権限であり、養育費は、その監護のために必要な費用となります。

したがって、抽象的ではありますが、養育費をいつまで支払うことになるか、の問いに対する答えは、「子供が社会的・経済的な自立を果たすまで」となります。

なお、社会的・経済的な自立を果たせるほどに成熟していない子のことを「未成熟子」と呼ぶことがあります。この言葉を借りるなら、「子供が未成熟子ではなくなるときまで」が養育費の支払いの終期です。

いつまで支払うかは「将来予測」によって決まる。

もっとも、養育費の合意は、将来の事柄に対する合意です。将来、子供が立派な大人になるまで、養育費を払う。という内容の合意です。

将来のことを、養育費の合意時点で決めることになりますので、「その子が立派な大人になるのはいつか」について、将来予測をいれざるをえません。

その将来予測の根拠こそが、養育費をいつまで払うか、という支払いの終期を決める要素となります。

子どもが社会的・経済的な自立を果たすと言えるのがいつなのか、という将来の事柄を養育費の合意の時点・段階で判断するのです。

その予測のために利用される最も基本的な要素が、子は「年齢」に伴って成長・発達するという事実です。

18歳?20歳?22歳? 年齢は重要な判断要素の一つ

「子どもが社会的・経済的な自立を果たすのはいつか」を考える際、年齢は、重要な判断要素となります。

20歳までが一つの目安

日本では、2022年4月1日に成人年齢が引き下げられるまで、20歳をもって「大人」の扱いを受けてきました。

養育費の支払い時期がいつまでか、を決めるに際しても、子は年齢に伴って成長し、20歳を迎えるころには、「通常」は、社会的・経済的な自立を果たしているだろう、という評価の元、20歳が一つの目安とされており、現在も同様の取り扱いとなっています。

成人年齢の引き下げについて

なお、2022年4月1日、成人年齢が18歳に引き下げられました。

もっとも、この引き下げに際して、「20歳」を超えるころには、社会的・経済的な自立を果たしているだろう、という評価まで変わったわけではありません。

そのため、成人年齢引き下げ後も20歳が一つの目安になっています。

大学進学率が50%を超えているが

また、近似、男性・女性共に大学進学率が50%を超えています。

そうすると、半分以上の子供が、4年制大学卒業時の22歳までは、子供が社会的・経済的な自立を果たしたとの評価を受けにくいように思われます。

しかし、家庭裁判所は、現時点ではまだ22歳を標準とするような考え方には立脚しておらず、20歳が目安となります。

その他の要素も考慮される

もっとも、20歳を目安にするのは、「20歳になれば、子どもが社会的・経済的な自立を果たすと言える」という評価・将来予測にすぎません。

年齢というのは、重要ではあるものの、「子供が立派な大人になっているはずだ」という予想を支える要素の一つと位置付けられます。

そのため、養育費の終期を決める際には、その他事情も考慮され得ます。そして、これこそが養育費が「いつまでか」をめぐる当事者間の最大の紛争となります。

大学進学の事実

一番よく争われるのが大学進学の事実です。

たとえば、現に大学に進学している、といった事情がある場合、子供が社会的・経済的な自立を果たしているとまではえいえず、養育費の支払い時期が大学卒業まで、とさらに伸びることも十分あり得ます。

現在、大学に進学していなくとも、子の意向、両親の意向・学歴・キャリアなどから、子も大学へ行くということが具体的に予測される場合も同様の判断がなされ得ます。

持病・障害などの事実

持病・障害などがあるとの事実も養育費に関する紛争において登場します。

また、子供に持病・障害などがあり20歳を超えても、社会的・経済的な自立が困難といった場合も、やはり、養育費の支払い終期が20歳を超える蓋然性が高くなります。

18歳での就職

他方で、子供の就労の事実あるいは就労の高度の蓋然性も考慮要素です。

20歳未満、たとえば18歳で現に就職しているとの事実は、子供が20歳未満であっても養育費の支払い義務を否定する要素となります。

子供が18歳にまだ達していなくても、18歳時点で、自立・独立を果たしているであろうこと(たとえば正社員就職)が十分に合理的な根拠をもって認定しうる場合、養育費の支払い期限を18歳まで、とする判断もありえるところです。

 

再婚・養子縁組によって「終期」は変わるか

次に、再婚・養子縁組によって「いつまで養育費を支払えばいいか」という養育費の終期に影響があるかにつき説明します。

親権者が再婚し養子縁組なされた場合

離婚時に子供の親権者となった者が再婚し、再婚相手が子供を養子とした場合、実親の養育費支払い義務は後退します。

この場合、子供が「社会的・経済的な自立を果たす」まで養育費が必要であることに変わりはありませんが、養子縁組によって新しく父親となったものが、子を育てていく責務を負うため、実親(非親権者)の養育費の支払い義務が後退するのです。

養子縁組によって新しく父親となったものの経済的資力が、養育をするのに十分であるという場合には、実親(非親権者)は養育費を支払う義務の全部または一部を免れ得ます。

この意味で、親権者の再婚は、養育費の支払いが「いつまでか」という、支払終期に影響を与え得ます。

非親権者が再婚し、扶養すべき対象となるべき者が増えた場合

他方で、非親権者が再婚し、扶養すべき対象となるべき者が増えた場合はどうでしょうか。

この場合でも、離婚時点で元配偶者が親権者となった未成年者について、「社会的・経済的な自立を果たす」まで養育費が必要との事実に変わりはありません。

扶養すべき対象となるべき者が増えたことによって、養育費の減額はありえるところですが、従前支払っていた養育費の支払いの義務自体が無くなる(全部免除)ということは通常想定しがたいところです。

子どもが二人など、未成熟子が複数いる場合の考え方

最後に、子供が二人いるなど、未成熟子が複数いる場合の考え方についてです。

養育費は、「子供が社会的・経済的な自立を果たすまで」の監護の費用であって、基本的には、子供一人一人について個別に考えます。

たとえば17歳の子A、15歳の子Bがいる場合、一人当たり3万円ずつ、と養育費を定めた場合、子A、子Bともに特段の事情無くが20歳を養育費の支払終期と定める場合、子Aについては3年間、子Bについては5年間が養育費の支払い期間となります。

この場合、最初の3年間は養育費の支払額は月々合計6万円、その後の2年間は、子Bにつき、月々3万円となります。

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