元配偶者の親(子の祖父母)に養育費を請求できるか

今回は、元配偶者の親(子から見た場合の祖父母)に対して、養育費を請求できるか、についてです。

原則として、元配偶者の親(子の祖父母)に対しては請求できない

養育費の支払義務は、非監護親たる父または母と子供とが、親子の関係にあることによって、生じる義務です。

その支払い義務を負うのは、未成年の子の親であって、祖父母ではありません。

そのため、原則として、祖父母に対して、養育費を請求するということはできません。

例外的に養育費を受け取れる場合

例外的に養育費を受け取れる場合としては、次の二つが挙げられます。

  1. 祖父母が任意に支払ってくれる場合
  2. 連帯保証をしている場合

祖父母が任意に支払ってくれる場合

ただ、養育費について、元配偶者親、すなわち祖父母が任意に支払ってくれるのであればこれは受け取って構いません。

元配偶者がお金がなく支払えないと述べているときや、その所在が不明の場合、元配偶者の親に一定の金員を支払ってもらえないか、祖父母と交渉するのは有力な選択肢の一つです。

連帯保証をしている場合

また、あまり例は多くないと思いますが、祖父母が養育費につき、相手配偶者が支払うべき養育費につき、連帯保証をしている場合は、祖父母に養育費を請求することが可能です。

 

祖父母が直系血族であることを理由とする扶養請求

上記の例外的に「養育費を受け取れる場合」は、離婚時または離婚後に、相手配偶者の親の協力が得られた場合です。

他方で、こうした協力を得られない場合も少なくないと思います。

こうした場合に考えられるのが、祖父母に対する扶養請求です。

(扶養義務者)
第八百七十七条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

相手配偶者の子は、相手配偶者の両親に対する関係で、直系血族に該当します。

元配偶者の親(祖父母)に対する扶養請求が機能する場合

扶養請求が機能を発揮する典型例は、元配偶者に稼働能力が無い場合です。

養育費を支払うべき第一次的な責任(生活保持義務)を負うのは「元配偶者」たる子の親ですが、この元配偶者に稼働能力がなく、収入が得難い場合には、二次的な責任である親族の扶養義務(生活扶助義務)がクローズアップされます。

また、元配偶者につき、合理的な調査を行っても所在がつかめないような場合も、この扶養請求は機能しえます。

ただ、いずれのケースにおいても、元配偶者の親(子供から見た場合に祖父母)に、自分たちの生活等の費用を差し引いてもない、経済的に余裕のある場合に限られます。

金額はケースバイケースで定まる

扶養請求の程度・金額はケースバイケースとなります。

親子間の養育費については、その金額に「相場」ともいうべき計算基準があるのが実情ですが、孫の祖父母に対する扶養請求については、金額は未知数です。

話し合いで決められれば、その金額が扶養の金額となりますが、話し合いでまとまらない場合には、家庭裁判所がその金額を定めることになります。

その際、家庭裁判所は、監護親の収入・資産の状況、子の監護のために要する費用の内容、祖父母の収入・資産状況などを総合考慮して金額を決定します。

(扶養の程度又は方法)
第八百七十九条 扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。

 

扶養料請求の手続

次に扶養料を請求するための手続についてです。

話し合い・家庭裁判所の手続による

一般に、扶養料請求の手続きは、次のような手順・順番で行うことになると説明されます。

1 話し合い
2 家庭裁判所の調停手続
3 家庭裁判所の審判手続

調停手続は、調停委員関与の下で、話し合いによって扶養の金額を定める手続きです。審判手続は、家庭裁判所の裁判官が金額を決定します。

元配偶者に対する養育費請求を先行させる

ただ、養育費については、上記の通り、元配偶者が第一次的な支払い義務を負います。

実際手続を採ってみると、家庭裁判所からも、元配偶者に請求しない、請求できない事情を必ず聴かれます。

(扶養の順位)
第八百七十八条 扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、同様とする。

そのため、祖父母に対する扶養請求に先立って、元配偶者に対して取りうる、合理的な範囲での手続はとっておくに越したことはありません。

その手続に際して得られた資料は、扶養請求に対する重要な資料にもなりえます。

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