離婚に際して、あるいは離婚後、子供の養育費に関して取り決めを行ったとしても、実際の支払いがなされない、途中からなされなくなる、というケースは少なくありません。
話し合いや内容証明郵便を送付することで、相手が任意に支払ってくれればいいのですが、一旦支払いが途切れた場合、再度支払いを開始させるのは容易ではありません。
別途、未払い養育費を改修するため、法的な手続が必要となります。
養育費を決めた手続によって、法的手続の手順が変わる
未払養育費の回収の手順は、どのような手続で養育費を定めたかによって、実現方法が変わります。
当事者間の協議によって定めた場合
当事者間のみで、未払い養育費を離婚協議や離婚後の合意によって定めた場合、仮にこれを書面で定めていたとしても、すぐに、給料の差し押さえなどの強制執行をすることはできません。
別途裁判などの手続が必要
強制執行は、裁判所の執行官・執行係を通して行われます。この執行官・執行係は、国家権力を行使する立場にありますので、軽々には動けません。
当事者間で合意書を作成していたとしても、これをもって、執行官にすぐに動いてもらうということはできないのです。
単に当事者間で、離婚協議書などを作成したにとどまる場合、未払養育費を請求するためには、別途裁判手続を行い、判決など、債務名義を獲得する必要があります。
離婚協議書や養育費を定める合意に意味はないのか
強制執行できないのであれば、離婚協議書や養育費を定める当事者の合意に意味がないのではないか、と思われるかもしれません。
しかし、双方が署名・捺印した離婚協議書などに、養育費の支払い義務などに関する定めがあれば、裁判所は、例外的な場合を除いて、養育費の金額などは、当該書面に沿って認定してくれます。
また、養育費の支払い分は過去に遡って請求することが難しいのに対し、協議書などがあれば、原則として、これに記載されている日付の分まで遡って養育費を請求することが可能です。
この意味で、離婚協議書や養育費に関する合意書は、極めて有力な証拠としての意味・価値があります。
公証役場・家庭裁判所を利用していた場合
では、公証役場や家庭裁判所を利用して養育費について定めていた場合はどうでしょうか。
公正証書で定めていた場合
養育費に関して、公正証書で定めていた場合は、通常は、未払の場合には、強制執行を受けても構わない、という強制執行の認諾文言が公正証書に記載されます。
これは、「公証人」の関与の下で、当事者に執行官を動かす権限(債務名義)を公に付与したもので、この証書がある場合には、裁判などを経ずともいきなり強制執行の手続を採ることが可能です。
離婚に際して、公正証書まで作成するのはハードルが高いかもしれませんが、もし公正証書があれば、訴訟手続を経ずに執行ができることになりますので、これから離婚をする際には、検討をされたほうがよいかもしれません。
離婚調停・離婚訴訟で養育費について定めている場合
離婚訴訟で養育費の支払い義務が定められている場合、通常、その調書をもとに、当事者は養育費につき、強制執行を行うことができます。
調停調書がある場合も同様です。調停調書にも、判決と同様、強制執行の前提となる「債務名義」としての価値があります。
手続に関するまとめ
上記をまとめると、通常は、次のような整理で対応を検討することになります。
- 当事者間の合意のみ
⇒別途裁判を経てから執行手続きへが必要 - 強制執行受託文言付きの公正証書がある
⇒裁判不要・執行手続きへ - 離婚調停・離婚裁判で定めた
⇒裁判不要・執行手続きへ
執行の手続
強制執行の手続きは、裁判所に対して、執行の申立てを行うことにより開始します。
必要となる書類
- 強制執行の申立書(ご本人や弁護士が作成)
- 債務名義(調停調書,審判書,判決書などの書面(正本) ※執行力が認められたもの
- 送達証明書
- 審判の場合,その審判が確定したことの証明書
執行の対象と把握しておくべき情報
養育費の執行の対象の典型例は、たとえば次のようなものです。
- 給 料(相手方の勤務先)
養育費については、給料などの2分の1に相当する部分までが差し押さえの対象となりえます。 - 不動産(不動産の所在地)
- 預貯金(預金口座※銀行名・支店名)
ただ、強制執行の執行の申立てを行う場合、カッコ書き記載の情報などを、養育費をもらう側で把握しておく必要があります(上記①の強制執行の申立書に記載します。)。
これを執行官に伝えないと、執行官が何をどう差し押さえていいかが分からないからです。
なお、上記とは別に、相手に対して、養育費を支払わないなら、さらに強制金を科すぞ、というプレッシャーをかけて、養育費を払わせる「間接強制」という手続もあります。
情報の取得に関して
離婚後、上記のような情報は、当事者にとっては、必ずしも把握しづらいかもしれません。
個人情報の取得に関しては、相当程度制約されているのが現状です。
他方で、判決などの債務名義等があれば、地方裁判所に対して行う「財産開示・第三者開示請求」の手続や「弁護士会照会」制度において、一定の調査は可能です。
もちろん、すべてを調べきれるわけではありませんが、執行に必要な情報の獲得、という面でも、弁護士にご相談いただければと思います。
未払い養育費の回収に悩んだら、弁護士に相談を
北九州地域において、未払養育費の回収に悩んだら、是非一度、ひびき法律事務所の弁護士にご相談ください。
弁護士によるサポート
相手の居場所が分かる場合は内容証明郵便の作成・送付はもちろん、執行の申立て所の作成、家庭裁判所に提出する各種書類の取得、申立手続など、その執行手続を幅広くサポートすることが可能です。
また、相手の財産が分からない、という場合でも、弁護士が行う調査の結果、財産の所在が分かり執行ができる、というケースもあります。
自分だけであきらめず、一度、弁護士にご相談いただけますと幸いです。
弁護士費用
執行にかかる弁護士費用は次のとおりです(別途消費税)。弊所の弁護士が養育費に関する法的手続を受任していたか否かにより、金額が異なります。
弊所の弁護士が、調停や離婚訴訟など本案を受任していた場合
執行手続 | 経済的利益の額 | 着手金 | 報酬 |
300 万円以下の場合 | 2% | 4% | |
300 万円を超え3000 万円以下 | 12.5%+2.25 万円 | 2.5%+4.5 万円 | |
3000 万円を超え3 億円以下 | 0.75%+17.25 万円 | 1.5%+32 万円 | |
※養育費・婚姻費用の執行にかかる経済的利益は、養育費、婚姻費用の2年分をもって算定する。 ※最低着手金の額は、5万円 ※地方裁判所に対する財産開示・第三者情報開示の手続はそれぞれ5万円 |
弊所の弁護士が本案を受任していなかった場合
執行手続 | 経済的利益の額 | 着手金 | 報酬 |
300 万円以下の場合 | 4% | 8% | |
300 万円を超え3000 万円以下 | 2.5%+4.5 万円 | 5%+9 万円 | |
3000 万円を超え3 億円以下 | 1.5%+34.5 万円 | 3%+64 万円 | |
※養育費・婚姻費用の執行にかかる経済的利益は、養育費、婚姻費用の2年分をもって算定する。 ※最低着手金の額は、10万円 ※地方裁判所に対する財産開示・第三者情報開示の手続はそれぞれ5万円 |