近時、不貞行為・浮気の証拠の一つとしてしばしば相談をうけるのがLINE(ライン)のトーク履歴です。
LINEのトーク履歴は証拠となる
まず、大前提として、民事訴訟では、基本的に証拠の制限はありません。
そのため、ラインのトーク履歴は不貞・離婚を証明する証拠となりえます。
証拠価値は内容次第
もっとも、その証拠価値は内容次第です。次の3つに分けてみましょう
- 互いに好意を寄せているようなやりとりの履歴がある。
- 宿泊・肉体関係があったことをうかがわせるトーク履歴がある。
- 肉体関係があったと考えなければ説明のつかない写真・動画がある。
互いに好意を寄せているようなやりとりの履歴がある
LINEの証拠として相談を受ける場合に、もっとも多い類型の履歴です。
配偶者と浮気相手とが、互いに好意を寄せあっているような内容が記載されているものです。
その内容には勿論、濃淡がありますが、これだけで、肉体関係があったと立証をするのはおよそ難しく、浮気を推認させるより強度の証拠が必要となる場合が多いです。
宿泊・肉体関係があったことをうかがわせるトーク履歴がある
ラインの内容がさらに進んで、宿泊・肉体関係があったことをうかがわせるトーク履歴がある場合はどうでしょうか。
「行為」に対する生々しいやりとりがなされている場合はもちろん、「これって浮気だよね」などと肉体関係があったことをうかがわせるやりがなされている場合です。
この場合、浮気の存在が相当程度推認されることが多いです。ただ、これにも濃淡があります。客観証拠としては、もう一つなにかほしい、という場合も少なくありません。
たとえば、宿泊をうかがわせるトーク履歴があった場合、宿泊を証明するようなホテルの領収証やクレジット明細などが証拠価値を補強します。
宿泊・肉体関係があったことをうかがわせる写真がある
トーク履歴の中に、宿泊・肉体関係があったことを伺わせる写真・動画がある場合、特段の反証が無い限り、不貞・浮気の立証成功までいたるケースが多いです。
たとえば、二人でベッドインしている写真や動画は、非常に証拠価値が高いと言えます。
勿論、写真・動画の証拠価値も濃淡あります。
たとえば、2人で旅行をしている写真・動画がある場合、これも不貞を証明する証拠として価値が高いとはいえます。
もっとも、二人がベッドインしている写真・動画と比較すると証拠価値は劣ります。
他の証拠が必要となることが多い
不貞の立証は、自白が無い限り、複数の証拠からの総合判断となることが常ですので、今ある証拠を勘案し、さらに追加の証拠が必要かを判断していくことになります。
LINE(ライン)も不貞の証拠となりますが、決定的な証拠としての価値があるのはその一部であり、立証のためには、往々にしてその他の証拠も必要になることが多いです。
LINE(ライン)の証拠化の方法
ラインの証拠化の方法はいくつかあります。たとえば次の3つです。
- トーク履歴の写真撮影
- スクリーンショットの送信
- トーク履歴の動画撮影
トーク履歴の写真撮影
トーク履歴の写真を、あなたのスマホで撮影する方法です。
各言葉の持つ文脈が大切となる場合も少なくありませんので、文脈がとぎれないように、撮影することが重要となります。
スクリーンショットの送信
ラインのスクリーンショットをとって、送信することも証拠化の方法として考えられます。スクショも民事訴訟における証拠となります。
ただ、配偶者のスマートホンの操作工数が増えるのと、スクショのデータ・送信履歴が配偶者のスマートホンに残ってしまう恐れがあることから(結果的に浮気調査をしていることが発覚してしまう恐れがあることから)、次に記載する動画撮影のほうが便宜かもしれません。
トーク履歴の動画撮影
写真撮影で証拠化する方法では、数十枚、場合によってはより多い数の写真が必要になるかもしれません。
この方法だと煩雑な面もありますので、トーク履歴を随時スクリーンしている動画で撮影することも検討してください。
動画が静止画と比較して、証拠価値が低い、ということはありません(むしろ後者の方が編集・改ざんしにくく、証拠価値は高いともいえるかもしれません)。
LIEN証拠化の違法性
ただし、ラインの証拠化は、その方法によっては、配偶者のプライバシーの侵害、不正アクセス禁止法違反に問われることもありますので、注意が必要です。
プライバシーの侵害
たとえば、相手のスマホのロックを解除して、LINEを見て、証拠化した場合、プライバシー権の侵害との評価を受ける余地もあります。
ラインを見る場合、「浮気」の部分以外の知られたくないことも、トーク履歴にある可能性がありますので、その意味においてもプライバシーの侵害との評価を受けるかもしれません。
ただ、夫婦間で、浮気を疑うべき強い事情があった、というケースでは、一般に、仮に違法とされても、その程度は低いと判断されるケースが多いと説明されます。
不正アクセス防止法違反にも注意
ITに精通した人でない限り、関係が無いと思われますが、念のため。
LINEの証拠化に際して、自分のスマートホンなど、ネットワーク経由で、相手のIDやパスワードを勝手に用いてログインして、アプリを開くことは、不正アクセス行為に該当し、不正アクセス禁止法違反を問われかねません。
通常想定しがたいですが、刑事罰が科されれることもありえるとの点、注意が必要です。
ただし、この場合においても、LINEの証拠価値そのものが否定されることは、あまり無いように思われます。
民事訴訟においても、違法収集証拠が排除されるケースというは想定されますが、取得方法が違法であるからと言って、証拠排除されるケースは非常に限定的な場合に留まっています。