不貞の証明の証拠として、しばしば提示を受けるのが、家やマンションへの出入りの写真です。
今回、この写真の証拠価値について考えてみます。
不貞の証明
不貞の証明は、自白が無い限り、各種証拠からの関連事実(間接事実)の積み重ねによります。
複数の証拠から、「肉体関係があったに違いない、そう考えて差し支えない」との心証を裁判官から得る作業です。
【参照:立証構造の例】
家・マンションへの出入り写真の証拠価値
各種証拠の価値には、濃淡があり、「家・マンションへの出入りに写真」一つとっても、証拠価値はケースバイケースとなります。
写真評価のポイント
家・マンションへの出入り写真につき、評価のポイントとなるのは次のような点です。
写真に写っている状況
二人が親しげにマンションに入って言っているか否かなどが評価のポイントとなります。
また、配偶者を受け入れている相手方の様子・服装などが写真に写っていれば、これも評価の対象となり得ます。
写真が撮影された日時(出の写真と入りの写真双方があるか)
どういった時間帯に、マンションに出入りをしているのか、が写真評価のポイントの一つです。
深夜帯なのかそれが日中なのか、という点です。
また、「出」と「入り」の写真を併せることで、配偶者が相手方と一緒に相当程度の時間を過ごしていると認定できるかもポイントです。
頻度
マンションへの出入り写真につき、1回限りの写真しかないのか、複数の日にちに渡る写真があるのか、も重要な要素となります。
一回限りの出入り写真しかなければ、配偶者の弁明が通りやすくなる一方で、これが複数回・多数回にわたるとなれば、合理的に弁明できる範囲は制限されてきます。
証拠評価の結果
上記を勘案し、配偶者が、複数回・多数回にわたって、親しげにマンションに出入りしており、その時間帯も、夜遅い時間帯で、相当時間を一緒に過ごしていることが分かれば、相当程度、証拠の価値は強いと言えます。
宿泊している事実が分かればなおさらです。
他方で、日中、わずかな時間帯に1回限り出入りしている、という事実程度しか立証できない場合には、証拠価値としては薄弱です。
その他の証拠も欲しい
上記のとおり、家やマンションへの出入り写真は、その内容によって、裁判官に与える心証が異なります。そして、それだけで証明成功、と断言できるようなケースはそこまで多くありません。
心証形成の程度
たしかに、配偶者が、複数回・多数回にわたって、親しげにマンションに出入りしており、その時間帯も、夜遅い時間帯で、相当時間を一緒に過ごしていることが写真から分かった場合、相当程度、裁判官に浮気の心証をあたえることができるのではないかと思います。
ただ、マンション出入の写真だけでは、立証に、やはり、何らかの不安が残るケースが多いです。
立証という面でいえば、相手からきちんとした反論ができないようにするために、さらにこれを補強する証拠がほしいところです。
写真から、宿泊をともなうことまで立証できるのであれば、かなり強力な証拠と言え、これで勝負しましょうといえるケースも多くなりますが、それでも、他の証拠もあるに越したことはありません。
その他の証拠
そのほかの証拠としては、たとえば、二人がデートをしているような写真があると、心証はさらに傾きます。
あるいは、夜間に出入りした後、「部屋の電気が消えた」「その後も配偶者が相当程度の時間をその家やマンションで過ごしている」といったことが分かると、不貞の事実がある、との心証に傾きます。
さらに、二人のメールやLINE、GPSの記録、手帳なども、これを補強する証拠となりえます。
弁護士に相談を
不貞の立証は、上記のような各種証拠を総合考慮して行うこととなります。
大切なことは、写真からどこまで立証ができるか、これを補強する証拠にどのようなものがあるのか、その証拠価値がどの程度か、を総合考慮することです。その判断に基づいて、追加の証拠収集を行うか、現在手元にある証拠で勝負するのかを判断します。
その判断に際しては、各種証拠の関連性の検討・位置づけを慎重に検討する必要になりますので、是非一度、弁護士にご相談いただければと思います(参照: 不貞・浮気|北九州の弁護士)。