財産分与における不動産評価額の査定

不動産が財産分与の対象となる場合に、当事者間で主張がしばしば対立するのが不動産の評価額です。

財産分与で対象となる不動産評価額とは

財産分与で対象となる不動産の評価額は、市場価格を指します。

他に不動産の評価額として位置づけられるものに、不動産に対するが固定資産税額を算定するための、固定資産税評価額や、相続税の算定の基礎となる、相続税路線価などがありますが、財産分与に際しては、一般に市場価格が利用されます。

当事者の合意の下で、たとえば「固定資産税評価額で不動産価値を評価する」ということも可能ですが、こうした合意がなければ、市場価格(第三者に売却するときの価格)が利用されるのが通常です。

市場価格の幅と当事者の主張

この不動産の市場価格ですが、一般的には「金額の幅」が存在します。

業者によっても、提示する金額が異なるために、その評価額をめぐりしばしば、不動産を取得する側と不動産を取得しない側とで主張が対立するのです。

  • 不動産を取得する側の主張
    財産分与に際して、不動産評価額を低く主張したい(自己が取得する財産の価値が低いと主張したい)
  • 不動産を取得しない側の主張
    財産分与に際して、不動産評価額を高く主張したい(相手が取得する財産の価値が高いと主張したい)

たとえば、1000万円の不動産を夫が取得するといった場合と1200万円の不動産を夫が取得するといった場合とでは、前者の方が、夫の妻に対する分与額は低くなるため、夫には、できるかぎり評価額を低く見積もりたいとの意識が働き、妻側としては、できるかぎり金額を高く見積もりたい、という動機づけが生じるのです。

そのため、評価額をめぐり、意見が対立することとなります。

市場価格の査定の方法

市場価格を査定してもらう方法には、いくつか種類があります。

不動産鑑定士による鑑定評価

代表的な方法の一つは、不動産鑑定士に、不動産の評価をしてもらう方法です。

一般的な不動産鑑定士の先生の鑑定書には、評価額の算定の根拠が明示されています。

そのため、その鑑定書は、比較的、裁判所に信用してもらいやすい資料となります。

鑑定方法

なお、不動産鑑定士に鑑定をしてもらう方法としては、次の二つが考えられます。

  • 任意鑑定
    裁判手続外で、当事者の一方が鑑定士の先生に任意に鑑定をしてもらう方法
  • 裁判所の鑑定
    裁判所の手続を介して、裁判所が選任する鑑定士の先生に鑑定をしてもらう方法

鑑定費用

鑑定士の先生に不動産の鑑定・評価をしてもらう場合に考えなければならないのがその費用です。

任意鑑定においても、簡易的な鑑定書を作成してもらう場合でも、10万円~の費用を要することが多いです。

家庭裁判所の手続を介して鑑定をしてもらう場合、通常はさらに費用がかかります(裁判所への予納を要する。)。

不動産仲介業者の査定

不動産仲介業者の査定も、市場価値を把握するための手段となります。

無料又は数千円単位で作成してくれることが多く、鑑定士の報告書を取得するよりも低コストで取得できますが、内容の正確性・信用性という点では疑義が生じやすいかもしれません。

査定書の中にも、根拠や計算過程が記載されているものと、結論だけを記載されているものがあります。前者の方が、裁判所の信用は概して得やすいです。

家庭裁判所の手続における認定について

離婚裁判や財産分与の審判手続においては、実務上、夫と妻、当事者双方から、査定資料が提出されることがしばしば提出されます。

夫婦の一方のみからしか資料が提出されないといった場合、当事者がその資料を基に認定をする可能性が高くなるため、評価額が深刻な争いとなっている場合には、当事者双方ともに、査定資料を提出するケースが多くなるのです(ケースによっては、上記裁判所の鑑定手続が利用される。)。

こうしたケースでは、裁判所は、双方の査定資料を精査の上、評価額を認定します。どちらの資料が信用できるか、検討を加えるわけです。

もっとも、上記のとおり、不動産の評価額には幅があります。

そのため、夫と妻双方が提出する資料における不動産評価額が異なる場合であっても、裁判所は、いずれの資料の計算・評価根拠についても信用性がある、と判断することがあります。

こうし場合には、しばしば、その平均値や中央値などが評価額として認定され、この認定金額が、不動産を含む財産分与における分与額決定の基礎とされます。

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