財産分与の対象となる金融資産

財産分与は、夫婦の共同の財産を、離婚時に清算する仕組みです。その対象となるのは動産・不動産に限られず、当然、金融資産も対象となります。

分与の対象となる金融資産の例

財産分与の対象となり得る金融資産には、次のようなものがあります。

  1. 現金・預貯金
  2. 貯蓄型保険
  3. 株式
  4. 退職金
  5. 年金基金・企業年金

現金・預貯金について

現金・預貯金は、当然財産分与の対象となり得ます。ここにいう預貯金には、いわゆるタンス預金も含みます。

現金・預貯金は、これが「円」である限り、「評価額」の問題は生じず、「額面額」が分与対象とされます。ただ、預貯金が円に換算する必要のある「外貨預金」については、為替評価の問題が生じます。

預貯金を巡って生じることの多い問題は、夫婦の一方が婚姻前から有していた預貯金をどう評価するか、夫婦の一方にご両親が支援した金銭がある場合に、これをどう評価するか、といった特有財産に関する問題です。

また、実務的には、当事者の一方が預貯金を隠している、あるいは、別居後に預貯金を敢えて使い込んだ、といったケースも、しばしば問題となります。

さらには、子供名義で貯蓄していた預貯金を財産分与の対象とするか、といった点が問題になることもあります。

貯蓄型保険について

金融資産として、実務的に扱うことの多いのは、貯蓄型保険です。たとえば、積立型の生命保険や学資保険が財産分与の対象となり得ます。

貯蓄型保険を巡っては、その価値を評価する基準時の問題が生じえるほか、外貨建ての保険である場合には、別途、その為替評価の問題が生じえます。

 

株式・投資信託について

株式や投資信託も、金融資産として、財産分与の対象となり得ます。

株式等を巡っては、株式の価値が一日一日と変動するため、その評価の時点をどうするか、が財産分与に際して問題となり得ます。

夫婦の一方が、株式投資に際して、大成功を得て多大な利益を上げていた、と言う場合には、いわゆる2分の1ルールの修正を図る必要があるか否かが問題となり得ます。

退職金について

財産分与に際して、大きな問題となり得るのが、将来得られるであろう退職金です。

この退職金を巡っては、退職金を実際に得られる可能性の程度や財産分与の退職金の評価の基準時、さらには、いつどうやって、実際にこれを分与するのか(退職金は、離婚時においては、未だ支給は無く、将来の退職時点で支払われるものであるため)、といった点が問題となります。

年金基金・企業年金について

いわゆる「年金」は離婚時年金分割の仕組みによって、分割対象とされますが、離婚時年金分割は、年金基金や企業年金を対象とするものではありません。

そこで、年金基金・企業年金に基づいて支給されるであろう金員は、「財産分与」にて取り扱われる領域となります。

年金基金・企業年金については、将来得られるであろう金員であるため、実際にこれを得られる可能性の程度やその終期・金額の評価、支払いの方法などが問題となり得ます。

 

金融資産の分与に際しても特有財産の問題と基準時の問題の検討が必要

預貯金の説明のところでも少し触れましたが、上記に挙げた金融資産いずれもが、財産分与の対象となり得るとしても、特有財産性や分与の基準時等については、別途の評価が必要です。

たとえば、親から引き継いだ金融資産は、通常、特有財産にはなりませんし、夫婦別居後、夫婦生活とは関係なく形成された預貯金などについても、財産分与の対象から外れ得ます。

そのため、金融資産の財産分与を巡っては、その資産の評価の問題の他、特有財産性・基準時などの問題を検討することが必要です。

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