家具や家電の財産分与

財産分与を巡っては、家具や家電の取得をめぐる争点が発生することがあります。

家具や家電も財産分与の対象となる

財産分与の対象は、夫婦が共同で形成してきた財産です。離婚時には、これを夫と妻とで分けあうこととなります。家具や家電もその対象です。

婚姻時に持ち込まれた家具・家電などについて

財産分与の対象は、夫婦が共同で形成してきた財産に限られますので、婚姻生活で得たものとはいえない家具・家電は財産分与の対象とはなりません。

たとえば、婚姻前の一人暮らしの時点で購入していた冷蔵庫や洗濯機、テレビといった家電や、家具は、夫婦の共同生活とは無関係の時点で取得されていますので、財産分与の対象とはなりません。

また、結婚中に妻の両親が、妻のために買った家具や家電も、夫婦の共同生活で得た財産ではなく、財産分与の対象とはなりません。

これらの家具・家電は、妻が離婚時に、財産分与とは無関係に所有権を主張できます。

夫婦の共同生活で得られた家具・電化製品について

他方で、婚姻後に、夫や妻の給料で購入した家具・家電類は財産分与の対象となり得ます。冷蔵庫や洗濯機などの電化製品、棚・ベッドなどの家具、いずれもその対象となり得ます。

分与の仕方

財産をどのように分与すべきかは、夫婦の話し合いで決めることができ、話し合いで決められない場合には、家庭裁判所の審判などの手続によって定めていくことになります。

ただ、家具・家電は、不動産などと異なり、「市場価値」が無いケースが相当数あることに特徴があります(購入したばかりの場合やアンティークなどを除く)。

使用・経年劣化によって、価値がないとされることが往々にしてあるのです。

どちらが引き取るかを話し合いで決める

家具・家電の財産分与の在り方は、「夫婦のどちらかがこれを引き取る」という形となることがもっとも一般的です。

家具・家電類につき、双方に引き取りの希望がある場合には、なにをどれだけ引き取るのか、家具・家電リストを作り、決めていくのが混乱が少ない方法です。離婚調停手続でもリスト化を求められることがあります。

なお、現実的には、大型家具類等は、「現に住んでいた家に残る」方が引き取っているケースが多いようです。

売却・廃棄処分も検討

当事者双方がいらない家具・家電類は、リサイクルショップなどに売却してしまうのも一つの手です。この場合、売却して得られた対価が財産分与の対象となります。

これは、どちらか一方の当事者が引き取る、というものではないので、互いの納得感を得やすい方法となります。

市場価値がなく、買取先自体が見つからないといった場合には、両者の合意の下で、これを廃棄処分すること往々にしてあります。

家具・電化製品の価値の評価と財産分与

上記のように、家具や電化製品は、「市場価値」が無いケースが相当数あることに特徴があります(購入したばかりの場合やアンティーク家具を除く)。

したがって、財産分与に際しては、これらの家具・家電の価値をゼロ円と評価することも少なくありません。

ただ、この場合、対価無くして、財産の一部を当事者が引き取る形となるので、不公平感が残る場合があります。

家具・家電の見積・評価

もし、夫婦のどちから一方が、家具や家電を引き取る場合に、不公平感を解消しようとすれば、その「価値」を評価しておく必要があります。

見積の取得

不動産の価値を評価しておく方法としては、たとえば、リサイクルショップやユーズドショップなどで、見積などをとっておき、これを評価額とすることが考えられます。

この場合、あとで揉めないように、家財一式の一括見積ではなく、個々の家具・家電類について、金額が分かるものが望ましいです。

別居する場合

別居後に、別居した側からこの見積を取得するのは非常に難しいところです。そのため、家財等につき見積をとるなら別居前に済ませておくほうがスムーズにことが運びます。

見積をとるのは手間かもしれませんが、別居後に自分でとる、別居後に相手に取らせる、いずれも相当大変です。弁護士が入った後でも、相手(家具等を現に使用・管理している側)の協力が得られず、実施できない場合も多いです。

「財産分与のために評価額を把握しておきたい」と言う場合、可能なら、別居前に見積もりを取得しておくことが望まれます。

弁護士が付かず、当事者同士で離婚調停を行っていた事案に関し、家具・家財につき、相談を受けたことがあります。

調停において、調停委員会から、もし、家具・家財の財産分与を厳密に求めるなら、「家具・家財について、型番なりで特定しろ、と言われたというケースでした。

厳密に、家具・家財を特定するなら、上記見積の他、メーカー・種類・製造番号、写真などを準備していくということになりますが、別居後は、現実的にこれが不可能、というケースも往々にしてあります。

なお、この種の争いにおいては、別途、家具・家電の搬出費用等の負担の問題も生じえます(一般的には、搬出を必要とする側の負担とされることが多いと思われます。)。

分与の具体例

たとえば、財産分与の対象となる100万円の預貯金がある夫婦において、家電類が合計10万円と見積・評価され、これをすべて夫が引き取る場合には、2分の1を分与割合とすると、分与財産の総額は、合計110万円となります。

家電の10万円分を夫が引き取るので、残りの預貯金については、妻が55万円を受け取り、夫が45万円の預貯金と家具・家電を引き取るということになります。

なお、家具・家電をゼロ円と評価した場合には、妻が50万円、夫が50万円+家具・家電を引き取る、ということになります。

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