離婚裁判の流れと期間

今回は離婚裁判の流れと期間について解説をします。

離婚裁判の流れ

離婚裁判は、概要、つぎのように進行します。各手続の概要は後述します。

離婚裁判に要する期間

家庭裁判所に対する訴えの提起から、判決の言い渡しまで、平均的なケースでも、およそ1年から2年程度を要します。

なお、1年で終わるケースは、弁護士の感覚的には、相当程度早く終わった、との印象を抱く裁判であり、感覚的には、もう少し時間を要するケースの方が多いのではないかと思います。)。

和解について

上記審理の過程で裁判官が和解を勧めてくることがあります(これを和解勧試といいます。)。

判決ではなく、当事者間で、柔軟な離婚条件を組んで和解を成立させないか、等というものです。(離婚訴訟の場合は、離婚を前提とする和解がほとんどかと思います。)

和解の勧試は、第1回期日以降、裁判所はいつでも行い得ますが、複数回の期日が進行して、裁判官がある程度の心証をつかんだ後になされることが多いです。

特に多いのは、証拠調手続に入る直前のタイミングです。また、場合によっては、証拠調手続が終わった後に、特別に和解期日を設け、和解の協議が行われることもあります。

和解が成立すると、その時点で、訴訟手続は終結します。判決まで手続が進行することはなく、当事者は不服の申立もできません。

 

各段階における手続の概要

各手続の概要は次の通りです。以下、次の順に手続の流れを説明します。

  1. 家庭裁判所に対する訴えの提起
  2. 第1回口頭弁論期日(初回期日)
  3. 第2回期日以降、複数回の期日
  4. 証拠調手続(尋問手続)
  5. 判決言渡(どちらかに不服がある場合は控訴審へ)

家庭裁判所に対する訴えの提起

離婚裁判は、家庭裁判所に対する訴えの提起によります。

訴えの提起からスタートする

訴えの提起は、訴状と呼ばれる書類を、裁判所に提出する方法で行うのが一般的です。

提出先の裁判所は、原則として、妻又は夫が居住する住所地を管轄している家庭裁判所となります。

訴えを提起するには、原則として離婚調停を行っておく必要がある

また、離婚訴訟においては、「調停前置主義」が採用されています。

そのため、離婚訴訟の提起に際しては、原則として、調停を行ったけれどもこれが不成立に終わったことを証する調書(不成立調書)の提出が求められます。

離婚訴訟における審理の対象

離婚の可否(法定離婚原因の有無)のほか、未成年者がいる場合には、親権者を父母どちらとするか、が審理の対象となります。

また、慰謝料や財産分与、養育費、年金分割も審理の対象です。

第1回口頭弁論期日(初回期日)

訴えを提起すると、家庭裁判所が、原告(訴えを提起した者)と期日の調整を行います。訴えを提起してから1か月ないし1か月半ぐらい後の日程となるのが通常です。

また、訴状の副本等の書類のほか、当該期日・手続案内などが記載された書面が被告(訴えを提起された者)に送達されます。

この初回の期日を、第1回口頭弁論期日と言い、訴状など、裁判所面の確認などがなされます。

また、第1回期日までに、被告は、家庭裁判所から答弁書を提出するように求められます。答弁書は、原告の主張を争うか、争う場合にはその内容などを記載した書面です。

被告が答弁書を出さずに、また、裁判そのものを欠席した場合、「欠席判決」といって、いきなり原告の言い分を全部認める判決が出る可能性がありますので、注意が必要です。

第2回期日以降、複数回の期日

第2回目以降の期日はおおむね次のように進みます。

スケジュールについて

初回期日で、双方出頭した場合、期日当日に、第2回目期日以降の日程調整が行われます。

被告が答弁書を提出したものの、初回は欠席する、といった場合には、事前に家庭裁判所が当事者につき、日程調整を行うことが多いようです。

第2回目期日以降のスケジュールは、おおむね1か月に1度の期日で進行することが多いです。場合によっては1か月半に1度期日が入る、というペースで進むケースもあります。

審理の内容

審理の内容は、当事者が期日の間に提出した主張書面(準備書面)や証拠によって行われます。

弁護士をつけずに裁判を行う場合(弁護士がついている場合もそうですが、ついていない場合は特に時間をかけて)、裁判官から期日に、主張内容や証拠の確認があるとともに、準備してほしい書面や証拠などを当事者に提示します。

当事者は、期日間に自己が主張したい内容や提出したい証拠、裁判官から準備を指示された書面などを準備し、家庭裁判所に提出します。

親権や財産分与など離婚条件に関する審理

親権や財産分与など、離婚条件に関する審理も、この裁判の期日に行われます。

被告からすると違和感があるかもしれないが・・・

この点に関し、少し補足をしますが、離婚すること自体について当事者に争いのない場合、離婚を前提に、親権や財産分与などの離婚条件を審理するのは違和感がないかもしれません。

他方で、妻が離婚を求めて、夫が離婚をしたくない、と争っている場合に、親権や財産分与について主張するように、と裁判官から提示があると、夫としては違和感を覚えるかもしれません。

夫は、離婚しない、だから親権者の指定や財産分与について決めてもらう必要は無い、という立場になるからです。

一般的な手続の流れにおいて審理対象となる

ただ、実務上、裁判官は、当事者が離婚を争っているケースでも、未成年者がいる場合には親権者の指定について、主張をするよう促しますし、原告が財産分与を求めているなら、財産関係に関する主張も促します。

もっとも、これは、審理の効率化・迅速化の要請もあり行っている面もあり、一般的な手続の流れにおいて、親権者や財産分与も多くの場合、審理対象となりえます。そうなったからといって、裁判官が離婚原因がある、との心証を必ずしも固めているとは限りません。

そのため、「離婚原因を争っているのに、親権者の指定や財産分与について主張しろ」ということは、「裁判官は離婚を認めようと考えているのか」と、過剰に過敏になる必要はありません。

証拠調手続(尋問手続)

当事者間の主張や証拠の提出が一定程度尽くされてきて、新しい論点・主張がほとんどでなくなると、次に、証拠調手続(尋問手続)に進みます。

ドラマなどで見る、「証人尋問」のような手続です。ここまでくると、訴訟はほぼ終盤です。

当事者本人が尋問の対象となる場合を当事者尋問、第三者が証人となる場合を証人尋問といいます。

離婚訴訟において言えば、夫と妻につき当事者尋問を行うのが一般的で、必要に応じて、第三者の証人尋問を行う、ということになります。

判決言渡

尋問手続まで終えると、手続として残るのは判決言い渡しです。尋問手続の約1か月から1か月半後に判決期日が指定されることが多いです。

裁判官は、判決に際して、原告と被告とを離婚させるか(法定離婚原因があるか)、その場合の親権者を原告と被告どちらにするか、慰謝料や財産分与などが審理対象となっている場合には、これに対する判断も行います。

判決の言い渡しにより、離婚訴訟の第1審手続は終わります。

離婚させる旨の判決が確定すれば、原告は、判決調書とその確定証明を添付することで単独で離婚届を提出することができます。

また、家庭裁判所の判決につき、夫または妻のどちらかに不服がある場合、不服のある当事者は、判決の送達を受けてから2週間以内に、高等裁判所に控訴することができます。

控訴がなされたケースでは、さらに控訴審で、離婚原因やその他の付帯事項について、審理がなされることとなります。

 

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