離婚調停の手続きに際して、相手と顔を合わせたくない、という相談者の方は少なくありません。
調停手続に際して、当事者が顔を合わせる場面は相当程度限定されており、また、ケースによっては、全く顔を合わせずに手続を行う、ということも可能です。
調停の申立てから初回期日確定まで
離婚調停は、申立によって開始します。当事者の一方から申立てがなされると、初回の期日が決まり、相手方に呼び出し状が送付されるのが通例です。
この初回の期日まで、当事者双方が同日に裁判所に呼ばれるということはありません。そのため、初回期日まで、当事者が顔を合わせると言うことは通常ありません。
調停手続について
次に、調停手続において、当事者が顔を合わせることがあるか、についてです。
一般的な期日
調停手続は、調停委員に話をする当事者が交代で調停室に入室する形で進められるのが通常です。
そのため、基本的には、調停室で、当事者が顔を合わせるということはありません。対面状態で話し合いをすることを避けることができます。
また、次に述べる待合室から調停室までの移動に際しても、調停委員が待合室迄呼びにくる形式がとられますので、その移動に際して、顔を合わせるということも通常ありません。
同席を求められる場合
もっとも、家庭裁判所が調停室にて同席を求める場面がふたつあります。次の二つです。
- 手続説明(初回冒頭)
- 成立の場面(最後)
手続説明(初回冒頭)について
多くの家庭裁判所は、離婚調停の最初の期日の冒頭に、当事者同席の下、手続説明という場を設ける運用をしています。これは、離婚調停がどういった手続きかを当事者に説明するものです。
調停室にて調停委員が、手続きの説明などを行います。
この場で当事者が意見をたたかわすことはありません。
成立の場面(最後)について
また、調停成立の場面では、当事者同席のもとで、調停調書が読み上げられるのが一般的です。
すでに調停手続にて合意の内容が固まっていますので、この場面でも、当事者が意見をたたかわすことはありません。
ただ、調停調書が読み上げられるのを聞き、内容に誤りがないかを確認する場面となります。
同席を回避できるか
上記二つの場面での同席は、裁判所の運用によるものです。
いずれも手続の時間的には短く、また、対面して話を進める、という場面ではありません。
もっとも、「同席」となれば、当然、一つの部屋の中に当事者双方が在席することとなります。
ただ、事情によっては、この二つの場面でも同席をさけることができます。
たとえば、DV事案であるとか、強度のモラハラ事案のケースであり、当事者の一方が顔を合わせることで、強い恐怖を覚えてしまう、といったケースです。
こうした事情がある場合には、家庭裁判所に対して、「事情説明書」なり「上申書」なりで、同席ができない理由・事情を伝えておくことが肝要です。
こうした理由・事情があれば、家庭裁判所が同席を回避するよう配慮してくれることがほとんどで、無理に同席を強いてくることはまずありません。
偶発的な遭遇(鉢合わせ)について
上記のように、調停手続においては、基本的には顔を合わせず、相手に会わずに、手続をすすめることができます(同席の場があるとは言え、ごく短時間であり、かつ、ケースによっては、ほとんどの場合、これも避け得ます)。
とはいえ、同一の日・同一の時間帯に同一の裁判所に両者が居る、ということになるので、偶発的な遭遇・鉢合わせ、ということも起こりうるかもしれません。小さな裁判所であればあるほど、その可能性は高いかもしれません。
以下、鉢合わせに注意すべき場所について補足します。
なお、DV事案である場合には、これを裁判所に事前に伝えておくことで、裁判所に、以下述べるような偶発的な鉢合わせも避けられるよう配慮してもらうことも可能です。
裁判所の受付において
調停の初回期日、当事者は、出頭した場合、裁判所の書記官室にて受付をします。
初回期日においては、当事者双方に手続説明を行うために、同時刻によばれることもあります。そうすると、出頭時間が重なる為、偶然、鉢合わせになる、という可能性もないではありません。
また、初回期日以外の期日においては、当事者出頭の時間帯が、多くの場合ずらされるため、双方が時間通りに出頭した場合、鉢合わせになることはまずありませんが、どちらかが、予定時刻よりも早めに出頭した、という場合には、やはり、ばったりと受付で顔をあわせることがあるかもしれません。
そのため、どうしても相手と会いたくない、と言う場合には、受付のタイミングに注意を払うことが必要です。
受付自体は、極めて短時間で終わる為、タイミングを見計らって受付を行うことで、偶発的な遭遇はほとんど避けられるように思います。
待合室において
受付が終わると、当事者は待合室に通されます。
通常、家庭裁判所において、離婚調停を行う場合、申立人と相手方との待合室は、別室となります。
したがって、単純に待合室で待つ、という時間において、互いに顔を合わせるということはまずありません。
あるとすれば、一方の配偶者が待合室を間違えた、あるいは、一方配偶者が故意的に相手の待合室に行った、というようなケースかと思われます。
私自身はそうした場面に遭遇したことはありません。
なお、DV事案等であれば、事前に裁判所に伝えておくことで、多くの場合、一般的な待合室以外の部屋を提供してもらうなどの配慮をしてもらうこともできます。
共用通路・施設において
裁判所内の共用通路・エレベーター、男女トイレの前などは、偶発的な遭遇が発生しうる場所です。
こうした場所での遭遇は、注意深く、タイミングを計って、移動・利用してもらうほかないかもしれません。
もっとも、初回期日を除けば、調停の開始時間(裁判所への出頭時間)はずらされていることが多いですし、調停開始後は、当事者の一方は調停室に入っている時間が長いため、鉢合わせのリスクはそこまで高くないと思われます。
また、裁判所によっては、DV事案などにおいて、夫と妻の待合の部屋を別の階としてくれたり、あるいは、調停委員自体が待合室へと移動するなどして、可能な限り鉢合わせのリスクを減らすなどの工夫をしてくれたりすることもあります。
どうしても、鉢合わせを避けたい、と言う場合には、事前に家庭裁判所へご相談されるようにしてください。