今回は、協議離婚についてです。
協議離婚とは
協議離婚とは、夫婦が話し合いに基づいて、離婚届を作成し、これを市区町村役場に提出することで成立する離婚を指します。
調停や裁判で離婚する場合と異なり、家庭裁判所を介さず、夫婦間の任意の話し合いで夫婦関係を解消する意思が形成される点に特徴があります。
また、この夫婦間の話し合いのことを「離婚協議」と呼びます。
協議離婚の割合
離婚には、協議によるもののほか、調停、裁判によるものなどがあります。
下図は、厚生労働省の令和4年度離婚に関する概況において、照会された「令和2年の詳細分析」において、話し合いいよる場合とそれ以外のケースとの割合を示した図です。
全国的にみて、協議離婚の占める割合は、全体の88%~89%近くに達しており、東京・大阪を含むどこの都道府県でも、85%以上は、協議にて離婚が成立しています。
弊所が所属する福岡県では、約90%、10組中9組が協議によって離婚を成立させていることが分かります。
協議離婚の割合が多い理由は様々ですが、もっとも根本的な理由は、「別れるに際して、そもそも争いたくない」と思われる方が多い点にあるのではないかと思われます。
メリット・デメリット
ここで、協議離婚のメリット・デメリットを紹介します。
メリット
協議離婚のメリットは、何と言ってもその簡易・迅速性にあります。
調停や訴訟が、おおむね1ヶ月から1か月半程度に1回の期日で進行していくのに対して、夫婦の話し合いで手続を進める場合、当事者間で連続・継続した協議が可能であり、話し合いが難航しない限りは、迅速解決が可能です。
また、概して、調停や裁判を行う場合に比して、コスト・費用を低廉に抑えることが可能です。
デメリット
他方で、手続的なデメリットとしては、夫婦の一方が納得しない、あるいはその条件に同意しないといった場合に、離婚を成立させられない点が挙げられます。
また、話し合いで離婚条件が定まったとしても、一定の場合を除いて、その条件の履行が確保できない、強制執行ができないなどの点もデメリットとして挙げられます。
話し合いの対象
話し合いの対象は、➀離婚の可否と、➁離婚の条件の二つです。
➀ 離婚の可否について
離婚の可否は、そもそも、夫婦関係を解消するかしないか、という点に関する協議です。
協議離婚は、夫婦が互いに夫婦関係を解消することについて同意ができない限り有効に成立しません。
したがって、夫婦関係を解消するには、夫婦がともにこれに納得している必要(夫婦双方に離婚意思が必要)があります。
詐欺や強迫によって合意に至った場合には、取り消しの対象となり得ますし、夫婦の一方に夫婦関係を解消する意思がない状態で、勝手に離婚届が出されたとしても、その届けは無効なものと扱われます。
➁ 離婚の条件について
離婚の条件をどうするかも、話し合いの対象です。
対象となりやすい条件は次の各点に関するものとなります。
- 親権者を父母どちらにするか
- 養育費の支払い義務の有無・内容
- 面会交流について実施の有無・内容
- 慰謝料の支払い義務の有無・内容
- 財産分与の有無・内容
- 年金分割の有無・内容
このうち、未成年者がいる場合には、➀親権者を父母のどちらにするのかを定めることが必須となります。
他方で、➁~➅の条件に付いては、離婚に先立って必ず定めなければならない、というものではありません。
また左記に離婚届の提出を先行させ、後から条件を話し合う、ということも可能です。
なお、上記①~➅のほか、合意があれば、「夫婦の問題を口外しない」などを条件に盛り込むこともできます。
協議離婚の手続
次いで、離婚を成立させるための手続についてです。
離婚届の提出によって効力が生じる
民法第763条は、「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。」と定めています。
これだけみると、合意だけで離婚が成立するかに見えますが、実際に夫婦関係を解消するには、離婚の届け出が必要です。
この届け出は、民法上は口頭でも可能とされていますが、通常は、離婚届の提出という書面提出の形で行います。
なお、離婚届の提出に際しては、当事者双方及び成年の証人二人以上の書名が必要です。
また、上記に述べた通り、未成年者がいる場合には、その親権者を指定する必要があります。
離婚協議書について
離婚に際して、「離婚協議書」と題する書面が作成されることがあります。
これは、離婚条件等、話し合いの結果を書面化したものです。公正証書の形で作成されることもあります。
離婚協議書は、話し合いの結果を形に残す、という意味で有用であり、将来紛争が生じた場合の証拠として機能します。
公正証書でこれを作成した場合には、慰謝料や養育費の支払義務の履行に関し、法律上の特別な効力を持たせることも可能です。
ただ、離婚協議書は、作成が必須というものではありません。これを作成しなくとも、上記の届が提出された段階で、離婚は成立します。