今回は、任意整理の頭金払いについて説明をいたします。

 

任意整理の弁済方法

任意整理の弁済方法は、一般的には、毎月一定額を返済していくのが原則となります。

たとえば、債権総額・借金の総額が240万円だった場合、毎月4万円ずつ、これを60カ月に渡って支払っていく、という支払方法をとります。

なお、期間は3年から5年の範囲で定まるのが一般的です。約束した金額を支払い続ける限り、利息は付きません

※場合によっては、毎月定額の支払いに加え、賞与・ボーナス時に多く支払うという方法を取ることもあります。

 

【任意整理とは】
任意整理を含めた3種の手続につき、その特徴・弁護士費用の目安などを次の記事でまとめています。任意整理をご検討なら、是非一度ご参照ください。
参照:債務整理を北九州の弁護士に相談
【任意整理の支払方法】
任意整理に関して、次の記事でボーナス払いにつき詳しく解説しています。
参照:任意整理の賞与・ボーナス払いについて

 

頭金払いを要求する業者がある

任意整理を開始すると、貸金業者の中には、頭金を支払ってくれ、という貸金業者も存在します。

特に、借り入れ期間・取引期間が短い場合や、任意整理開始直前、弁護士介入直前に借り入れが行われているような場合に、頭金を希望してくるケースが多いです。

現に頭金を支払わなければ、合意に達することができないか、はケース・事情毎の判断となります。当然、現に頭金を準備できるか、という点もポイントです。

なお、頭金を支払う場合、当然ながら月々の返済額は、その分減少します。

たとえば、債務総額240万円というケースで、12万円を頭金で支払うと残余は228万円となります。この場合、月々の返済額は3万8000円ずつとなり、頭金を入れないケースと比べ、月々の負担は2000円分軽くなります。

 

頭金は交渉材料となることもある

頭金は、貸金業者との交渉材料になることもあります。

弁護士として、債権者らと交渉する際、一定程度の頭金を入れられる状況であれば、それまでに付加された遅延損害金のカットの申入れなどを検討します。

債権者らにおいては、早期に一定部分の回収が可能となり、将来、回収が困難になることとのデメリットを軽減できるため、頭金払いが、貸金業者との交渉材料になるのです。

複数の債権者が居る場合には、弁護士において、頭金を入れることによって、業者の中に遅延損害金などをカットしてくれる業者がいないか探りをいれるとともに、カットしてくれる業者が複数いる場合には、どこの業者に頭金を充てるべきか、比較検討することになります。

 

頭金の準備の仕方

上記のように、業者によっては、頭金の支払いを要求してくる業者もいますし、頭金があれば、これを交渉のカードに使えます。

準備できなければ準備できないで、その中で債権者との交渉や手続の方針を検討するのですが、支払いの原資と出来る頭金はあればあるに越したことはありません。

では、頭金はどのように準備すればよいのでしょうか。

支払い開始までの猶予期間を利用する。

頭金の準備には、弁護士介入から支払い開始までの猶予期間が利用できます。

任意整理は、そもそも一定額を毎月支払う手続です。そのため、依頼者の皆様が毎月ある程度、支払いに回すお金を準備できる場合でなければ手続自体が取れません。

他方で、任意整理に弁護士が介入してから、現に支払いが開始される開始まで、少なくとも2~3か月、場合によっては半年を超える期間を要する場合があります。

ここではこれを猶予期間と呼びます。頭金を作るには、この猶予期間中に一定程度の積み立てを行うのが有用です。

【補足】
もちろん、ケースによっては弁護士費用に先に充てなければならない、一時的な支出があるなどの理由で、これができない場合もあるかもしれません。しかし、弁護士介入後の猶予期間中、依頼者は、債権者から請求を受けません。取り立てが止まります。そのため、上記のような事情が無ければ、依頼者の皆様においては、毎月の支払い原資を積み立てたりプールしたり、ということが可能となります。逆に、この積立自体が難しい、という場合には、任意整理が本当にできるのか、債務整理の方針変更が視野に入ってきます。参照:任意整理の積立金とは?目的や方法、返金の可否、払えない場合

任意整理を機に、換価できる財産がないか見直す

また、任意整理を機に、換価できる財産が無いか、見直すことも有用です。

処分可能な不動産が無いか、不必要な保険が無いかを見直してもらうことで、大きな頭金が準備できるケースもあります。また、月々の支出を見直すことで、毎月の積立額を大きくできるケースもあります。

これらができるならとっくにやってるよ、というお叱りを受けそうですが、真剣に検討してみたら、依頼者において、換価できる財産があった、支出を減らせた、こうしたケースも少なからず散見されます。

任意整理は、個別の財産の処分を伴わない点に特徴がありますが、これを機に財産・収支を見直すことは、将来の生活安定のためにも有用です。

 

【補足】
次の記事にて、任意整理における家計の見直しの重要性や方法などを説明しています。ぜひご参照ください。参照:任意整理と家計の把握・見直し