自己破産などの申立てを行った場合、裁判所が破産管財人を選任することがあります。
破産管財人は、破産者の財産を清算したり、破産手続・免責手続あるいはこれらの申立てに至る過程で、法に抵触する問題が無かったか否かを調査する職責を負います。
破産管財人と言うのは、「破産管財人」とは、破産手続において破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利を有する者のことです(破産法第2条12号)。
破産管財人が選任される場合には、破産開始と同時に破産管財人の選任決定がなされます。
破産管財人が選任されるケース
破産管財人は、全ての破産手続において、選任されるわけではありません。
破産管財人が選任されるのは、破産者に清算可能な財産が有るケースや、破産手続・免責手続にいたる過程で、法的な問題が無かったか、調査を要するようなケースです。
たとえば、破産者が一定の水準を超えて財産を有しているといったケースや、破産者が破産に至る過程で、ギャンブルや浪費を繰り返していた、というようなケースです。
こうしたケースにおいては、財産の処分・換価や免責調査を行う必要があるため、裁判所が破産管財人を選任します。
参照:破産法の目的と破産手続
破産手続開始の決定があった場合には、破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は、裁判所が選任した破産管財人に専属する。参照 破産法79条
破産管財人は、就職の後直ちに破産財団に属する財産の管理に着手しなければならない。参照 破産法250条
裁判所は、破産管財人に、第二百五十二条第一項各号に掲げる事由の有無又は同条第二項の規定による免責許可の決定をするかどうかの判断に当たって考慮すべき事情についての調査をさせ、その結果を書面で報告させることができる。
なお、破産管財人の業務を行うには、法律上の知見が不可欠であり、現在の実務において、破産管財人は弁護士の中から選任されています。
この点は北九州においても同様です。
申立てを依頼した弁護士は破産管財人にならない
破産申立ての相談に際して、聞かれることの多い質問の一つが、「破産申立代理人となる弁護士が破産管財人になるのですか」という趣旨の質問です。
要は、破産の申し立て依頼をした弁護士が、そのまま破産管財人になるのか、という問いです。
結論を述べれば、破産の申し立てを依頼した弁護士が破産管財人となることはありません。
破産申立代理人弁護士は、依頼者たる破産者を支援する業務を担っているのに対して、破産管財人は、破産者の財産の清算や問題点のチェックなどを行うことを業としますので、全く立場は異なります。
そのため、破産申立ての依頼を受けた弁護士が当該破産事件において、破産管財人に選任されることはありません。
破産管財人の主な業務
破産管財人の主な業務としては、次のような業務を上げることができます。
破産者の財産の調査・換価(財団への組入れ)
破産者の財産を調査し、一定の水準を超える財産を換価する業務です。
破産管財人は、これらの業務を実施する為、各種資料を精査したり、破産者と面談したりして、事情の確認等を行います。
この業務の過程において、破産者自身に帰属させるべき財産については、自由財産等として、破産者自身に帰属させます。
破産者が負っている債務の調査・確定
破産者が負っている債務について、その存否や金額を調査・確定する業務です。
破産管財人は、債権者らからの債権届につき、証拠等を精査して、これを認めるか否かなどの判断をしていくことになります。
配当の実施
破産管財人が換価等して形成された財産を債権者に配当する業務です。
破産手続を通じて債権者に配当可能な財産が形成できた場合にのみ行われます。
免責不許可事由の調査・免責の意見陳述
破産者に免責不許可事由が無いか等を調査して報告する業務です。
破産管財人が当該業務を行うのは、個人破産の場合に限定されます。
破産管財人が選任されたケースと非選任のケースとの主な違い
破産管財人が選任されるケースと破産管財人が選任されないケースとでは、破産者の負担する費用や破産開始決定後の手続が大きく異なります。
具体的には次に述べるような違いが生じるため、破産管財人が選任されないケースと比較すると、破産管財人が選任されるケースのほうが破産者自身の負担は大きいと言われています。
費用面について
上記のとおり、破産管財人は、破産申立代理人弁護士と異なりますので、破産管財人の費用は、破産申立の弁護士費用とは別に、破産者の財産から工面する必要が生じます。
そして、一般的には、破産手続開始の時点までに、破産管財人の費用・報酬に相応する金員を裁判所に予納することが求められます。
北九州における自己破産においては、当該予納金として、少なくとも20万円を必要とするケースが多くなっています(※)。
※20万円と言う金額は絶対的・確定的な金額ではないこと、注記しておきます。
手続について
また、破産管財人が選任されないケースでは、破産開始決定と同時に破産手続自体は終結します。これを同時廃止と言います。
他方、破産管財人が選任されるケースでは、破産開始決定後、破産手続が破産裁判所に係属し、破産手続はさらに続行します。
また、破産管財人は、破産手続の一環として、後日、破産裁判所で開かれる債権者集会という集会において業務内容や調査内容を報告することになります。
債権者集会は、多くの場合、破産開始決定の2~3か月後に設定されますが、その間、破産者には、破産管財人に協力すること、事情を説明することなどが求められます。
同時廃止の場合には、破産管財人から面談や事情の確認等を求められることはありませんが、破産管財人が選任されるケースでは、破産管財人との面談等が求められることになるわけです。