自己破産手続は、自らの財産を清算した上で、経済的再建を目指す手続です。

そして、破産者が、経済的再建を果たすため、破産法は、個人破産に関し、免責という制度を設けています。

この免責を受けることこそが、自分で破産を申し立てる自己破産の大きな目的の一つです。

免責というのは

平たく言えば、免責というのは、破産者が、それまで負っていた借金の返済義務や一般的な債務の履行義務を免れることをいいます。

たとえば、銀行カードローンによる借金や消費者金融による借金、クレジットカードの利用による債務などが免責の対象となり、免責が認められて確定すれば、破産者は、これらの借金等につき、責任を免れます。

破産法は、これらの責任を免ずることで、破産者が破産手続後に、借金等に悩まされることなく、新たなリスタートを切れるように制度設計されているのです。

免責の対象となる債務とそうでない債務

ただ、一口に免責と言っても、以下述べるとおり、すべての債務について責任がなくなる訳ではありません。

免責の対象となる債務

まず、破産者が破産手続開始決定前から負っていた借金や上記のようなクレジットカードの利用などを原因とする一般的な負債は、すべて免責の対象となるのが原則です。

たとえば、消費者金融に対して自己破産開始決定前から100万円の借金が有った場合、この借金について、過去に判決や支払督促等の手続が採られていたとしても、免責の対象となります。

また、銀行や貸金業者等、個人からの借り入れに基づく返済義務も、免責の対象です。

免責の対象とならない債務

他方、破産法上、免責が有ったとしても、破産者が責任を免れない債務があります。

この破産者が責任を免れない債務は、権利者側からみれば債権になりますが、破産法は、種々の理由からいくつかの債権について、免責の対象にしないと定めているのです。

これを非免責債権といいます。破産法が定める非免責債権は後記一覧の通りです。

たとえば税金や、破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、婚姻費用、養育費等の債務については、免責の対象から除外されます。

また、たとえば、親族や友人から借り入れた借金の返済義務について、これを覚えていながら、破産申立時に記載しなかった場合、これも非免責債権となります。

非免責債権の一覧(破産法253条但し書き)
① 租税等の請求権(共助対象外国租税の請求権を除く。)
② 破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
③ 破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権(前号に掲げる請求権を除く。)
④ 次に掲げる義務に係る請求権
 イ 民法第七百五十二条の規定による夫婦間の協力及び扶助の義務
ロ 民法第七百六十条の規定による婚姻から生ずる費用の分担の義務
ハ 民法第七百六十六条(同法第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定による子の監護に関する義務
ニ 民法第八百七十七条から第八百八十条までの規定による扶養の義務
ホ イからニまでに掲げる義務に類する義務であって、契約に基づくもの
⑤ 雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権及び使用人の預り金の返還請求権
⑥ 破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権(当該破産者について破産手続開始の決定があったことを知っていた者の有する請求権を除く。)
⑦ 罰金等の請求権

免責を受けられるか否か

自己破産手続をすれば、誰しもが免責を受けられる訳ではありません。統計上は、確かに免責を受けられる可能性は高いのですが、公刊された刊行物を見ると、否定された例も散見されます。

免責が認められるためには、①免責不許可事由が存在しないか、又は、②免責不許可事由が存在するとしても裁量免責が得られること、のいずれかの条件を満たす必要があります。

免責不許可事由について

条文が長いのですべてを引用することは避けますが、破産法が定める免責不許可事由の概略は、後記一覧の通りです。

たとえば、ギャンブル等が破産の原因となっている場合には、免責不許可事由の一つである「浪費・賭博・射幸行為による債務負担等」に該当します。

免責不許可事由一覧(破産法252条各号)
① 破産財団の積極的な価値減少行為
② 不当な債務負担行為
③ 詐害的非義務行為
④ 浪費・賭博・射幸行為による債務負担等
⑤ 詐術による信用取引
⑥ 帳簿、書類等の隠滅等。
⑦ 虚偽の債権者名簿の提出
⑧ 説明義務違反・虚偽説明等
⑨ 不正の手段による破産管財人等の職務妨害
⑩ 過去7年以内の免責
⑪ 破産法上の義務違反行為

裁量免責について

免責不許可事由に該当するからと言って、それだけで免責が絶対に通らないというわけではありません。

破産法252条2項は、免責不許可事由が存在する場合であっても、裁判所が、破産手続開始の決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときに、免責許可を決定することができると定めています。

たとえば、免責不許可事由が軽微であり、本人も隠し事なく事実を説明し、免責不許可事由に該当する事実につき十分な反省の態度を示している等の事情の下では、この裁量免責を受けられる可能性が高まります。

弁護士として自己破産を支援するときに最重要視している点

上記のとおり、自己破産の最大の目的の一つは、この免責を破産者が受ける点にあります。

弁護士としては、自己破産を支援するに際しては、破産者がこの免責を受けられるか否か、免責不許可事由を精査し、かつ裁量免責を受けられるか否かの検討を十分に行わなければなりません。

そのためにも、相談者と弁護士は、よくよく打ち合わせ・資料の確認をしなければなりません。

ひびき法律事務所では、免責不許可事由の存否が問題となりそうな事案や裁量免責が問題となりそうな場合に、何度も打ち合わせをすることが少なくありません。

それは、免責を得るという目的の達成こそが、自己破産手続の依頼を受けた場合に実現しなければならない最も重要な仕事と考えているからです。