本記事は、近年・専門性・複雑性を増す残業代請求に関し、労使ともに抑えるべき基本的な情報を提供するものです。

今回のテーマは、「通勤手当と除外賃金」です。

以下、簡単にみていきましょう。

通勤手当と除外賃金

残業代算定に関し、労基法上、通勤手当は除外賃金とされています。

除外賃金というのは、残業代算定の基礎となる賃金から除外することができる手当・賃金を指します。

参照:除外賃金とは

通期手当は、除外賃金となる結果、残業代算定の基礎となる1時間当たりの労働単価を割り出す際、労働者が得た所得から通勤手当は除外して考えることになります。

通勤手当は、労働者がどこから通勤に要する交通費であり、労働と直接の関連性の薄い個人的な事情に基づく賃金であるため、残業代算定の基礎とはならないわけです。

通勤手当を除外した計算例

ここで、月給25万円、その内1万2000円が通勤手当である、という場合の労働者の1時間当たりの労働の単価を算定してみましょう。

1時間当たりの単価

このケースで1時間当たりの労働単価を割り出すには、まず、25万円から通勤手当1万2000円を控除します。23万8000円になりますね。

そして、月給制の場合、1時間当たりの労働の単価は、基礎となる収入(先ほどのケースでは23万8000円)を月平均所定労働時間で割って算出します。

したがって、仮に、月平均所定労働時間が170時間であるとすると、この労働者の1時間当たりの単価は1400円になります。

【計算式】1400円=(25万円-1万2000円)÷170時間

参照:月給制における割増賃金の単価

1か月あたりの割増賃金

そして、1か月あたりの時間外労働の金額は、1時間当たりの単価×時間外労働の時間で算定します。また、労働者が時間外労働を提供した場合、使用者は労働者に対して、少なくとも基礎賃金を1.25倍した割増賃金を労働者に支給しなければなりません。

この1.25倍という割増賃金率を前提とすると、1時間当たりの単価が1400円の労働者が月40時間時間外労働を提供した場合、その1か月あたりの割増賃金は、7万0000円となります。

【計算式】7万6000円=1400円×1.25×40時間

通勤手当として除外することが可能なのは

ただし、ここで注意を要するのは、会社などの使用者が通勤手当という名目で、賃金を支給していれば、すべて除外される、というわけではないことです。

残業代算定における基礎賃金から除外するには、通勤手当が「通勤距離又は通勤に要する実際費用に応じて」算定されている、という「実質」が備わっていることが必要です。

たとえば、通勤に要した費用や通勤距離に関係なく、労働者に月額5000円を支給する、といった場合、この手当は、通勤の実費等に関係なく支給されているものにすぎないため、通勤手当としての実質を備えているとはいえません。

通勤手当が除外賃金と認められるのは、たとえば、通勤に要する定期券購入の費用に応じて算定される金額を支給している、といったケースなどになります。

ひびき法律事務所(北九州)にご相談ください

残業代をめぐっては、残業時間や残業の有無のほか、残業代の基礎となる賃金をめぐって、争点が複雑化することも少なくありません。

ある賃金が除外賃金として控除されるか否かをめぐってもしばしば見解が対立します。

ひびき法律事務所(北九州)では、残業代請求に関するご相談を労使いずれの立場においても受け付けております。

残業代請求又はそのご対応にご不安をお抱えの場合には、弊所の弁護士に一度、ご相談ください。