ビジネス実務法務入門連載、今日のテーマは任意代理と法定代理です。

任意代理か法定代理か否かにより、相手方の代理権の範囲や代理権の確認方法に代理権があるのかの確認方法に差が生じます。

以下、簡単に見ていきます。

代理とは

代理というのは、本人の代理権を有する者が、代理人として、本人に代わって契約などの法律行為を行うことを行うことをいいます。

弁護士が、本人に代わって契約交渉などを行い、契約締結などをするのもその例といえます。

参照:代理人とは

冒頭述べたとおり、代理には、任意代理と法定代理とがあります。

任意代理について

任意代理というのは、本人が。本人の意思で代理権を授与したケースです。

本人から代理権を付与された者を任意代理人といいます。

代理権の範囲は委任によって定まる。

任意代理人の代理権の範囲は、委任の内容によって定まります。

たとえば、代理人が、本人の商品を処分する包括的な代理権を与えられているのか、あるいはある特定の商品の売買だけが代理行為として許されているのか、といった点は、委任の内容によって定まることになります。

任意代理人がいなかる権限を有しているのか、その範囲は、主として、委任状や権限授与証明書などを確認することで、チェックすることができます。また、本人に直接確認するのもいいでしょう。

任意代理権の範囲を超えた代理行為は原則として無効となってしまうので、ビジネスにおいて代理人と交渉する場合、代理人がどの範囲で代理権を有しているのかチェックはかかせません。

権限の定めのない任意代理人について

上記の補足となりますが、任意代理人については、委任に際して代理権の範囲が定められていない場合もあります。

この場合、民法103条により、その権限の範囲は、保存行為や一定の利用・改良を目的とする行為に限定されます。

そのため、権限の定めがない場合には、契約によって目的物を売却するなどの処分行為は権限の範囲外とされることに注意が必要です。

<民法103条>
民法103条  権限の定めのない代理人は、次に掲げる行為のみをする権限を有する。
一  保存行為
二  代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為


法定代理について

法定代理というのは、法律または裁判所の選任を通じて代理人となった者を指します。

典型例は、未成年者の法定代理人としての親権者ですが、そのほかにも後見人や保佐人・補助人などが法定代理人に該当します。

法定代理人と契約交渉などをする場合も代理権の範囲のチェックは必要です。

親権者や後見人は、本人を包括的に代理する権限を有しますから、代理権の範囲にそこまで気をかける必要はありませんが、補佐人・補助人の代理権の範囲は、ケースによって変わり得ますので、注意が必要です。

参照:制限行為能力者とは

また、そもそも法廷代理人を名乗る者が、本当に法定代理人に該当するか否かは、主として公的な書類で確認することになります。

親権者であることの証明については戸籍の提出を求めて確認するのが一般的です。

また、後見人などに選任されているか否かを確認したい場合には、法務局の後見等の登記に関する資料提出を求めるのが一般的です。

代理権の有無・代理権の範囲

ビジネスにおいて、相手に代理権があるのか否か、代理行為が権限の範囲内か否かは、当該ビジネス行為の有効・無効を左右する重要な問題です。

新規契約や重要契約を行うに際しては、そのチェックを行うことが、取引の法的な安全性を高めます。

また、北九州地域においては、後見などが増加していくものと思われますので、今後、そのチェックが求められる場面は増えてくるかもしれません。

日々の業務において、代理権確認のための運用手段・方法の構築につき、ご不安がある場合には、一度弁護士までご相談ください。