ビジネス実務法務入門連載、今日のテーマは代理人についてです。

弁護士は、業務上、依頼者の皆様の代理人として活動することが多くありますが、弁護士業以外にも、代理人がビジネスで活躍する場面というのは多々あります。

今回は、この代理人の法的な地位について簡単に解説します。

代理人とは

代理人とは、本人から代理権を得て、本人に代わって法律行為を行う者を指します。

たとえば、A社からA社の商品をA社に代わって販売する権限を得て、これを売却するといった行為も代理行為に該当します。

たとえば、北九州市に経営資本のない会社が、北九州地域で商品の販売を行いたいといった場合に、北九州地域で販売網を有している会社を代理人として商品展開を行うといったことが考えられるわけです。

代理関係

代理人が契約などの法律行為に関与する場合、次のような三者関係が想定されます。

上記図で説明すると、代理人に代理権を授与した者Aを「本人」と呼び、本人Aと代理人Bとの間には代理関係が存在することになります。

また、Bは代理人として、代理権の範囲内で売買などに関する契約を第三者(上記図ではC)との間で締結することができます。

そして、Bが代理人としてC間に商品を売ったという場合、その契約の効果は、代理権を通じて、Aに帰属します。

その結果、Cは、本人であるAに対して商品を引き渡せ、ということができますし、Cが代金を支払わない場合、本人たるAはCに代金を支払えと言うことができます。

民法第99条
第1項 代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
第2項 前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。

顕名

なお、代理人が代理行為を行うに際しては、民法上、自分が本人の代理人であることを相手に示すことが必要とされています。これを顕名と言います。

民法においては、代理行為をするに際しては顕名を要することが原則となっているんですね。

しかし、ビジネス取引の場面においては、実際、顕名がなされるのは、そう多くはないです。

商法においては、商行為の代理人が代理行為を行うに際しては、顕名を欠いても代理行為は有効なものと扱われるからです(これを非顕名代理といいます。)。

商法第504条
商行為の代理人が本人のためにすることを示さないでこれをした場合であっても、その行為は、本人に対してその効力を生ずる。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知らなかったときは、代理人に対して履行の請求をすることを妨げない。

代理類似の概念

代理に類似する概念として、①代表、②使者、③間接代理の3つを紹介します。

① 代表

代表というのは、組織の機関の一つです。

たとえば、会社の社長は、代表取締役として会社の業務に関する一切の権限を有しますが(会社法349条4項)、その権限の行使は、会社の機関として行われていると観念されます。

そのため、代表者の行為は、いわば会社自身がその行為を行ったものとして、会社に効果帰属します。

② 使者

使者というのは、本人の意思表示を伝達したり、相手に表示したりする役割を担う者をいいます。

代理の場合は、契約を締結するか否かといった意思決定を代理人が行うのに対し、使者は、本人の意思決定を相手に伝える、という役割を担っているにすぎません。

③ 間接代理

間接代理というのは、他人(本人)の計算で、自分の名で取引をすることを指します。

典型例としては、商法上の問屋が挙げられます。問屋は委託者たる本人の計算において商品を売るなどの業務を行いますが、その場合、契約自体は問屋名義で行います。

外観上は、本人の名前が出てこないため、非顕名代理と類似しますが、間接代理の場合、いったん、その効果が間接代理を行った者に帰属し、その後において、その効果が本人に移転するという形の構成をとります。

一旦、間接代理を行ったものへの法律効果を観念するのが代理との違いです(代理は代理行為の効果が直接本人に帰属します)。

商法第551条
問屋とは自己の名を以て他人の為めに物品の販売又は買入を為すを業とする者を謂う。