解雇について解雇とは、使用者が労働者との労働契約を解約する行為をいいます。

解雇は、労働者・従業員の生活に及ぼす影響が大きいため、解雇の局面では、解雇による労働契約の終了を主張する使用者(企業・会社等)と解雇が無効であることを主張する労働者側とで、しばしば対立が先鋭化します。

そのため、解雇に関する争いは、弁護士が使用者側からも労働者側からも相談を受けることの多い法的紛争の一つになっています。

本記事では、労働契約の内、最も典型的な契約期間に定めのない労働契約に関し、解雇権の根拠、解雇権に課された制限、解雇の手続きについて説明します。

<有期雇用契約における解除等について>
なお、本記事は、雇用期間の定めのない労働契約の解除を念頭におく記事です。

有期雇用契約社員の解雇や雇止めについては、次の各記事で解説していますので、こちらをご参照ください。

参照:有期雇用契約期間中の解雇に関する法律上のルール

参照:有期雇用契約における雇止め法理(更新拒絶の可否)


以下述べるとおり、解雇を巡っては、法律により厳格な規制が課されているほか、判例による事例が集積されています。解雇を巡るトラブルを適正に解決するためには、これらの知識が不可欠です。

解雇を巡るトラブルにお悩みの場合には、一度弁護士にご相談ください。

解雇権の根拠(期間の定めのない雇用契約)

まず、期間の定めのない労働契約の解雇権の根拠に関し、民法及び就業規則を確認します。

民法上の規定

民法627条1項は、労働契約に関し、次のように定め、労使いずれの側についても解雇権(解約権)を認めています。条文上は解約という表現ですが、この解約権は使用者側から見ると、解雇権に位置付けられ、同条項はその根拠となります。

民法627条1項
当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

就業規則による制限

上記のとおり、民法上、使用者はいつでも労働者を解雇できると定めていますが、労働基準法上、就業規則の作成に際しては、使用者が就業規則に解雇事由を記載することを求めています(必要的記載事項)。

以下引用する労基法89条第3号をご確認ください。

労働基準法第89条
常時10以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

1号 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項

2号 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項

3号 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)

4号以下 省略


上記の通り、労基法89条3号は、就業規則作成に際して就業規則に解雇事由を記載することを求めています。

そして、就業規則に定められた解雇事由は、多くの場合、解雇の理由を限定するもの(解雇理由を就業規則記載のものに限るもの)と解されます。この理解は、民法627条1項規定の解雇権を制限するものです。

この理解に立つと、使用者が労働者を解雇するには、就業規則記載の解雇事由が存在することが必要になります。

すなわち、就業規則に解雇事由が定められている場合には、労働者解雇の有効・無効を判断するに当たっては、まず、就業規則記載の解雇事由があるか否かを検討することになります。

※もっとも、就業規則の解雇事由が上記のように理解されることも一因となって、就業規則には、実務上、非常に広範な解雇事由が定められることが多くなっています。

解雇権制限

また、労働者保護の観点から、解雇権の行使は法律により、一定の制限が課されています。

差別的な解雇の禁止

法律上、解雇権の行使が制限される類型の一つに、差別的な解雇の禁止があります。具体的には、次のような理由による解雇は無効とされます。
・国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇(労基法3条)
・労働組合に所属していること等を理由とする解雇(労組法7条)
・性別や女性の婚姻・妊娠等を理由とする解雇(男女雇用機会均等法6条、9条)

法律上認められる権利行使を理由とした解雇の禁止

また、法律上認められる権利を行使したこと等を理由とする解雇も禁止です。一例をあげると、次のような権利行使等を理由とする解雇は無効とされます。
・育児・解雇などの申出・取得(育児介護休業法10条、16条)
・裁量労働制の拒否(労基法38条の4第1項6号)
・労基署への法律違反の申告(労基法104条2項)
・公益通報者保護法上の公益通報(公益通報者保護法第3条)
 などなど

療養や産休期間等における解雇の禁止

加えて、療養期間中等においては原則として解雇が制限されます。解雇が制限される期間は次の通りです。
・労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間
・女性の産前産後休業期間及びその後30日間

労働契約法第19条
<第1項>
使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によつて休業する期間及びその後30日間は、解雇してはならない。
ただし、使用者が、第81条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合においては、この限りでない。

<第2項>
前項但書後段の場合においては、その事由について行政官庁の認定を受けなければならない。


解雇権濫用法理

解雇権濫用法理上記の他、解雇権の行使については、解雇権濫用法理と言われる制限が課せられます。

解雇権濫用法理は、労働者保護の観点から判例で発展してきた法理ですが、現在では、労働契約法第16条にて明文化されています。

極めて重要な条文ですので、同法第16条をまずは見てみましょう。

労働契約法16条
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

この規定は、解雇を有効とする条件として、①客観的に合理的な理由があること、②社会通念上相当であることを要求する規定です。

たとえば、労働者の解雇事由の典型例の一つに、労働者の服務規律違反を理由とする解雇があります。
  
企業や社内のルールに労働者が違反したことを理由とする解雇です。

この服務規律違反を理由とする解雇にも解雇権濫用法理が働きます。

仮に、就業規則に定めたルールに労働者が違反し、これが就業規則上の解雇事由に該当するとしても、軽微なルール違反が一度なされた程度では、同16条により、解雇は認められません。

上記の通り、労働契約違法16条により、使用者が労働者を有効に解雇するためには、解雇につき、①客観的に合理的な理由が存在し、かつ、②当該解雇が社会的通念上相当といえることという二つの条件を満たす必要があるからです。

そして、実務上、上記二つの条件が満たされていることの立証責任は使用者側に課され、その立証がされない場合には解雇が認められないため、使用者には解雇につき重いハードルが課せられているといえます。

この解雇権濫用法理については、能力不足などを理由とする解雇、服務規律違反を理由とする解雇、整理解雇等の類型につき、重要な裁判例が積み重なっています。

いかなる場合に解雇ができるかについては、集積された裁判例の検討が必要です。

なお、解雇の条件が満たされず、解雇が無効とされる場合、使用者は労働者に対して、解雇無効期間中の賃金を支払う義務を負うと判断されるのが一般的です。賃金の他、使用者が慰謝料などの支払義務を負うと判断されることもあります。

解雇の手続

最後に、解雇の手続について簡単に見ておきます。なお、以下で述べる手続きを満たせば解雇ができる、という意味ではありません。

上記に説明したような解雇の条件が満たされている場合でも、解雇にあたって、次のような手続ないし手当てが条文上必要になると理解してください。

<解雇予告などが原則必要>
労働基準法第20条1項により、使用者が労働者を解雇する場合、原則として、少くとも三十日前にその予告をするか、三十日分以上の平均賃金を支払うことが必要です。

<解雇予告期間の短縮>
ただ、同条第2項により、上記予告日数につき、一日につき平均賃金を支払った場合、使用者は、予告日数を短縮することが可能です。

<解雇予告などが例外的に不要となる場合>
また、同法20条1項但し書きは、例外的に予告ないし予告手当が不要になる場合として、次の二つを挙げています。また、同3項は、これらの場合には行政官庁の認定を受けなければならないと定めています
・天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合
・労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合

労働基準法第20条  
<第1項>
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。
但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。
<第2項>
前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。
<第3項>
前条第2項の規定は、第1項但書の場合にこれを準用する。

弁護士・法律事務所に相談を

弁護士に相談を解雇を巡っては、上記の様に厳格な法規制が課されており、また、判例による事例判断が積み重なっています。

解雇の有効・無効を判断するためには、法律に関する基本的な知識の他、積み重なった判例の事例検討が不可欠です。

ひびき法律事務所(北九州)は、長年にわたり、解雇を含む労働問題の解決に取り組んでまいりました。

解雇を巡る法律上のトラブルにお悩みの場合には、ひびき法律事務所の弁護士にまで、一度ご相談ください。