ひとつ前の記事で、弁護士の選び方に関する記事を書きました。弁護士を選ぶ際の6つの視点を紹介したものです。

参照「弁護士の選び方~失敗しないための6つの視点~

この記事を書いている中で、「法律相談で相談者が弁護士の経験や知見を図る」にはどうすればよいか、につき、考えが浮かびましたので記事にします。

 

法律相談の相談の進み方

法律相談時の相談内容はおおむね次のような進行となります。

  • ご事情の聴取・確認
  • 相談者が聞きたいこと、したいことの確認
  • 弁護士からの意見・回答

事情の確認について

上記事情の聴取は、基本的には相談者からの説明になります。

たとえば、離婚相談であれば、相談者が離婚をしたいと考えるに至った経緯・原因などにつき、相談者が話す内容を確認します。

相談者が聞きたいこと、したいことの確認

次に、相談者が何を弁護士に聞きたいのか、何をしたいのかを確認します。

たとえば、相談者によっては、「離婚の切り出し方」を聞きたいという人もいます。

また、「離婚をするための手続」について聞きたい、という人もいます。

「どんな離婚条件が考えられるか」を聞きたい人もいます。

さらに、これらについて広く浅く全般的に聞きたいという人もいます。

弁護士からの意見・回答

弁護士は相談者からご事情を伺った後、相談者が具体的に何を聞きたいのか、を確認したうえで回答をすることになります。

ただ、その際には、法律判断に必要な事項について、弁護士から逆質問が行われるのが一般的です。

 

経験があれば、法律相談時に弁護士から的確な質問が飛ぶ

私は、上記のような相談の過程で、相談者が弁護士を選ぶ、その弁護士に任せてよいか、を判断する視点として、弁護士から的確に事件について質問があるかどうか(弁護士からの逆質問)を一つの目安にするのがいいのではないかと思います。

相談者の話だけでは情報が不足する

相談者が話される内容だけで、法律判断に必要となる事情が尽くされることはほとんどありません。

たいていは、法律判断に必要な要素は、何かが欠けているか、お話になられていても不十分です。特に、どんな証拠があるか、などの点については、意識されている方のほうが少ないと思います。

また、えてして相談者の方にとって不利と思われる事情については出てこないか、控えめにしか話がなされません。

弁護士から法律判断に必要な事情の確認がなされる。

そこで、法律相談をする弁護士は、法律的な意見を述べるに際して、不足している事項を確認するわけです。

たとえば、上記のようなケースであれば、離婚の可否や離婚条件が問題となる場合、結婚の時期・子供の有無、年齢、離婚原因に関する先方の言い分、当事者の収入状況、財産の把握状況、などが離婚時の聴取の対象となります。

経験があれば、こうした事項について、弁護士から具体的な質問がよどみなく飛びます。

そこで、法律相談に際して相談される方は、弁護士からよどみなく事情確認の質問がとぶか否かを注意深く観察し、その弁護士が当該案件の領域に関して、経験・知見があるのか無いのかあたりをつけるのがいいのではないかと思います。

 

経験がないとどうなるか

交通事故や離婚、債務整理、相続などは登録してから一定年数が経過している弁護士であれば、たいていは経験をしているので、弁護士は回答に先立って、上記のような必要事項を確認するためいくつか質問をしますし、できるのが当たり前です。

他方で、弁護士であっても、その分野に経験がない、まったくやったこともない領域になると、そもそも何を聞いていいのかわからない、ということが生じえます。

経験がないと、何を質問してよいか、準備事項は何かが指摘できない。

たとえば、私のところに今誰かが法律相談に来て、「先生、○○と○○の特許権侵害について聞きたい」と言われても、私には特許権に関する知見・経験もないので、特許権侵害の有無を確認するに際して、何をどの程度確認すればよいかわかりません。

次の法律相談に向けて、どういった書類を準備してもらえばいいのかについても指摘できません。

その結果、法律相談時、質問に先立って、六法で条文を引き始め、なにかとっかかりがないか、探すということになります。

また、こうした場合、弁護士において、法律判断に必要な事情の確認をする能力がなく、証拠に対する評価の与え方もよくわからないため、法律の「一般法理」に依拠した、あるいは、「一般法理」から導出した解答になりがちです(それはそれで大切な作業・能力ではあるのですが。)。

経験が不足しているのではと思ったら

どうもこの弁護士、本当にその領域の経験があるのか怪しい、と思ったら、上記視点で今一度、弁護士の相談状況・事情聴取の仕方を確認してみてください。

弁護士から、具体的な質問が矢継ぎ早にとんでこないようなら、その分野の経験が浅いのではないか、と判断する一つの材料にしてよいように思います。

経験がないケースにおけるアフターフォロー

法律相談をしていて、年に1回程度だと思いますが、正直全然わからない、という相談にあたることがあります。

事務所で相談を受けていれば、その場でほかの経験ある弁護士に聞いてみたり、その場で判例調査・文献調査もできますので、法律相談の時間を無にするということはありません(また、その席で、調査に時間を要したからといって、それをもって法律相談費用をさらに貰うということもありません。)

他方で出張相談だと、その場で調べられる事項について、限界があります。こうしたケースで、まったく分からない事案にあたると、弁護士としても、相談者様に時間もお金も割いてきていただいているのに、、、とかなり苦しい思いになります。

法律相談で十分な回答ができなかった、標準的な法律相談の水準にすら達していないというとき、私は後で、調査、検討の上で、お電話などでアフターフォローをするようにしています。

うしたフォローが十分になされているか否かも、弁護士選びの基準の一つに据えるといいのかもしれません。