判例紹介:既婚男性と独身女性が、多数回、一緒に、宿泊したり、ラブホテルに滞在したりした事実があるにもかかわらず、両者が不貞行為(不倫)に及んだ事実は認定できないとされた事例(福岡地方裁判所令和2年12月23日)

事案:妻が、Xさん(不貞相手方)に対し、夫と不貞行為(不倫)に及んだと主張して、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)として500万円を請求。

1 裁判上の大前提

(1)立証責任

民事訴訟では、ある事実について、裁判官にその事実が存在するとも存在しないとも断定することができないという真偽不明の状態でも裁判をできるようにするために、主張立証責任という大原則があります。

立証責任とは、ある特定の法律上意味のある事実(専門用語で「要証事実」といいます。)の存在が真偽不明に終わった場合には、当該法律効果は発生しないという不利益のことを意味します。ざっくりと言い換えますと、重要な事実を証明できなかったとき、当事者が主張する法律の結果は生じることがないという不利益のことです。

そうすると、「立証責任がある」とは、当事者が主張する法律結果を生じさせるためには、ある特定の法律上意味のある事実を当事者が証明しなければならないという意味になります。

(2)立証責任の分配

それでは、上記の「不貞行為」についての立証責任を妻とXさんのどちらが負うでしょうか。具体的には、妻が「Xさんと旦那が不貞行為を行った」と証明しなければならないのでしょうか、それとも、Xさんが「Xさんと旦那が不貞行為を行っていないこと」を証明しなければならないのでしょうか。

民事訴訟法では、法律要件分類説という考え方が採られています。法律要件分類説は、実体法における(今回の場合では民法)の定め方・条文の構造と立証責任の公平な分担という見地から、立証責任を考えるというものです。

本件事案の場合、妻が請求する民法709条の定め方および条文の性質から、妻が「Xさんと旦那が不貞行為を行った」と証明しなければなりません。反対に、Xさんは、旦那さんと「不貞行為(不倫)がなかった」ことについて、妻の証明を妨げればいいことになります。

2 今回の判例について(事実関係・裁判所の評価・結論)

Xさんと夫が、多数回一緒に宿泊したり、ラブホテルに滞在したりした事実が認められています。この事実を裁判所は、「これ(不貞行為:不倫)を極めて強く推認させる事情」と評価しています(括弧書きは筆者加筆)。

もっとも、Xさんと夫のやり取りに残されたLINEの内容(多数かつ内容が多岐にわたるため割愛)が認められています。この事実を裁判所は、「上記推認(Xと夫の不貞行為)に重大な疑問を差し挟む事情があるため上記推認は動揺することとなり」と評価しています(括弧書きは筆者加筆)。

結論として裁判所は、「その疑問(Xと夫の不貞行為)」は払拭されず、未だ真実性の確信を抱くには至らないから、結論として、本件不貞行為の存在については、証明不十分といわざるを得ない」と判断しました。

3 最後に

本判例のように、多数回の宿泊やラブホテルの滞在が認定されても、最終的に不貞行為:不倫が認められない場合もあります。裁判所をより強く説得するためにも、裁判を起こす前の資料・証拠集めが重要となります。

離婚等の家事事件・家庭内の問題にお悩みの場合は、一度、ひびき法律事務所の弁護士までご相談ください。

以上

執筆者:弁護士 山本耕作