本記事は、近年・専門性・複雑性を増す残業代請求に関し、労使ともに抑えるべき基本的な情報を提供するものです。

今回のテーマは、残業代の算定に際して「除外賃金となる子女教育手当」です。

以下、除外賃金とは何か?子女教育手当が除外賃金となる理由、除外賃金とされる場合の残業代の算定例等についてみていきましょう。

除外賃金とは何か?

労働者・従業員の残業代算定は、①労働者の一定の賃金(これを「基礎賃金」といいます。)と②残業時間及び③割増率を掛け算する方法で算定します。

たとえば、基礎賃金が1000円、残業時間が2時間、割増率が125%とした場合の残業代は、1000円×2時間×1.25=2500円となります。

上記算定に言う「基礎賃金」とは何か?を理解するために必要なのが「除外賃金」という概念です。

一口に言えば、除外賃金というのは、残業代の算定に際して、基礎賃金には含まれない賃金のことを指します。言葉のとおり、残業代の算定から「除外」される給料のことです。

たとえば、ある労働者の全ての給料を労働時間で割って算定した時間給が1200円だったとしても、その内200円部分が除外賃金に該当する場合には、200円部分を除外し、1000円を基礎賃金として残業代を算定していくことになります。

参照:除外賃金とは

子女教育手当とは?子女教育手当が除外賃金となる理由

子女教育手当というのは、子供の教育費を補填するために支給される手当・賃金です。単に教育手当やこども手当といった名目で会社から支給されることもあります。

この子女教育手当は、除外賃金です。除外賃金になるということは、子女教育手当は、残業代の基礎にはならない、ということを意味します。

この手当は、労働者たる親の労働の量や質と直接関係がない個人の事情に基づく手当であるため、残業代算定に際して、除外されるわけです。

除外賃金とされる場合の残業代の算定例等

ここで、月給20万円、その内3万0000円が子女教育手当である、という場合の労働者の1時間当たりの労働の単価を算定してみましょう。ここでは計算上の便宜のため、月平均所定労働時間は170時間と仮定します。

このケースでは、残業代算定に際しての、労働者の1時間当たりの労働単価は、1000円となります。

計算式 1000円=(20万円-3万円)÷170時間

したがって、割増賃金率を125%とした場合、この労働者が40時間残業をすると、残業代は5万円となります。

計算式 5万円=1000円×40時間×1.25

比較として、子女教育手当を除外賃金としない場合を計算してみると、その残業代は、5万8823円(ここでは小数点以下切り下げ)となりますので、8000円以上も差が出ることになります

計算式 5万8823円=20万円÷170時間×40時間×1.25

ある賃金が除外賃金となるか否かにより、残業代の金額が大きく異なってくるわけです。

子女教育手当と言えるためには

以上、子女教育手当が除外賃金とされる場合の残業代の計算について説明をしましたが、最後に、注意を要するのは、教育手当やこども手当、あるいは子女教育手当という名目で、会社が給料を支給している場合でも、それが、子供の教育費の補填・援助という趣旨で支給されたものとは言えない場合、その賃金は除外賃金には該当しない、という点です。

残業代算定における基礎賃金から子女教育手当を除外するのは、同手当が、「実質」を備えていることが必要となります。

ご相談はひびき法律事務所(北九州)に

残業代をめぐっては、残業時間や残業の有無のほか、残業代の基礎となる賃金の額をめぐって、争点が複雑化することも少なくありません。

今回例に挙げたような教育手当やこども手当が、除外賃金としての子女教育手当に該当するか否かをめぐっても、見解は対立しえます。

ひびき法律事務所(北九州)では、労使双方の立場から、残業代請求に関するご相談を受け付けております。

残業代請求又はそのご対応にご不安をお抱えの場合には、弊所の弁護士に一度、ご相談ください。