本記事は、近年・専門性・複雑性を増す残業代請求に関し、労使ともに抑えるべき基本的な情報を提供するものです。

今回のテーマは、「割増賃金に関する日給制の時間単価」です。

以下、具体例と一緒に見ていきましょう。

日給制でも残業代は必要か

基本的な疑問点として、日給制でも残業代が必要なのか、というご相談をいただくことがあります。

1日あたりの賃金を定めているのだから、残業代はつかないのではないか、という疑問です。

しかし、日給制であっても、残業代に関し、1日8時間・週40時間のルールは妥当します。

したがって、労働者が時間外労働を提供した場合、使用者は、残業代を支払わなければなりません。

参照:時間外・深夜・休日労働に関する割増賃金と法内残業

日給制における時間単価と割増賃金について

次に、日給制における残業代の算定例を見ていきましょう。

会社と従業員との間で、次のような内容の労働契約が締結されたとします。

給与制度 日給制
労働時間 8時間(1日当たり)
賃  金 1万2000円

この労働契約のもとで、従業員が1日10時間(朝8時から夜7時まで 途中1時間の休憩とする)働いたとすると、会社は労働者に対して、給与をいくら支給しなければならないでしょうか。

時間単価について

日給制において、時間単価は、通常、「賃金÷1日当たりの労働時間」で算定されます。

上記の例で、賃金1万2000円を基礎とすると、この従業員の1時間当たりの労働時間の単価は、1500円と計算されます。

計算式は1万2000円÷8時間です。

割増賃金の支給の計算

そして、使用者は、1日8時間を超える労働に対しては、使用者は、割増賃金を支払わなければなりません。

上記の例では、2時間分(10時間-8時間)が割増賃金の対象となる労働となります。

その割増率は、25%以上です。

つまり、使用者は、通常の賃金の125%以上に相応する残業代を労働者に払われなければならないことになります。

使用者が支給すべき額

以上を前提に、1日8時間、1万円で労働を提供する従業員が、1日10時間労働をした場合の支給額を算定してみましょう。なお、ここでは、割増賃金率は25%として算定します。

まず、当然のことながら、使用者は当該従業員が8時間働いた分の給与である1万2000円を支給しなければなりません。

また、割増賃金の対象となる2時間部分につき、使用者は、1時間当たり1875円(1500円×1.25%分(割増賃金分))を労働者に支給しなければなりません。

割増賃金の対象となる時間は2時間ですから、労働者は、残業手当として、合計3750円(1875円×2時間)を従業員に支払うことになります。

その結果、上記例において、使用者が労働者に払うべき給与総額は、1万5750円となります(1万2000円+3750円)。

残業代の対応については弁護士にご相談を

実際の残業代請求の事案では、時間外労働が深夜労働や法定休日と絡んで、問題が複雑になりがちです。

また、どの程度の証拠があるのか、という点も残業代請求の可否のポイントになります。

残業代請求に関する対応は、一度、弁護士にご相談ください。