本記事は、近年・専門性・複雑性を増す残業代請求に関し、労使ともに抑えるべき基本的な情報を提供するものです。

今回のテーマは、1日8時間、1週間40時間の時間外労働算定の具体例です。

具体的なケースをもとに、時間外労働に該当する時間の具体例を示します。

1日8時間・1週間40時間というルール

労働基準法は、原則的なルールとして、1日8時間を超えて労働した部分又は1週間のうち40時間を超えて労働した部分を、残業代を付加すべき時間外労働としています。

この時間外労働に該当する労働については、使用者は割増賃金を労働者に払わなければなりません。

参照:時間外・深夜・休日労働に関する割増賃金と法内残業

時間外労働算定の具体例

では、時間外労働が提供された労働時間はどのように算定されるのでしょうか。

以下、時間外労働がないとされるケースを含めて、いつくか具体例を見ていきましょう。なお、説明の便宜のため、ここでは日曜日を法定休日と仮定します。

時間外労働が発生していないケース

第1のケースは、労働基準法の定める時間外労働が発生していないケースです。

ある労働者が月曜日から金曜日までそれぞれ7時間働き、かつ土曜日にも3時間働いたとします。

この場合、1日8時間を超える労働が提供された日はありませんし、月曜日から金曜日までの労働時間は合計で35時間、土曜日に働いた時間は3時間ですから、1週間に40時間を超える労働も提供されていません。

そのため、このケースでは、時間外労働は発生していないことになります。

1日8時間を超える時間外労働が発生したケース

次に、1日8時間を超える時間外労働が発生したケースを見ましょう。

土日は休日とし、月曜日・水曜日・金曜日にそれぞれ7時間、火曜日に9時間、木曜日9時間働いたとします。

この場合、1週間全体の合計労働時間は39時間です(3日×7時間+2日×9時間)。

ただ、火曜日と木曜日は、それぞれ8時間を超えてさらに1時間、労働を提供しています。そのため、その合計2時間は、時間外労働となります。

1週間40時間を超える時間外労働が発生したケース

次のケースは、1日40時間を超える時間外労働が発生したケースです。

日曜日は休日とし、月曜日から土曜日までそれぞれ7時間ずつ労働が提供されたとします。

この場合、1日8時間を超える労働はありませんが、1週間合計で42時間の労働が提供されたことになります(6日×7時間)

そのため、40時間を超えて労働が提供された2時間分の労働が時間外労働ということになります。

1日8時間・1週間40時間いずれも超える時間外労働が発生したケース

最後に、1日8時間、1週間40時間いずれも超える時間外労働が発生したケースを見ます。

日曜日は休日とし、月曜日・火曜日・金曜日及び土曜日にそれぞれ7時間、火曜日に9時間、木曜日9時間働いたとします。

この場合、火曜日・木曜日に1日8時間を超えてさらに1時間ずつ労働が提供されていますから、まず合計2時間分が時間外労働となります。

また、その2時間を差し引くと、月曜日から土曜日までの合計労働時間は44時間となり、週40時間を超える4時間の労働が提供されている計算となりますから、さらに4時間分が時間外労働となります。

それゆえ、上記のケースでは合計6時間分が時間外労働に該当します。

ちなみに、下のケースはどうでしょうか。上記のケースとの違いは土曜日の労働時間が3時間に収まっている点です。

この場合、火曜日と木曜日に1日8時間を超えてそれぞれ1時間ずつ、合計2時間の時間外労働が発生しています。

他方で、その2時間を差し引いた1週間の労働時間は40時間となりますから、結局時間外労働となるのは、2時間、ということになります。

時間外労働の算定も弁護士にご相談ください。

上記の各具体例は、時間外労働時間のみを算定した例です。

実際の時間外労働の算定については、法定休日が特定されているか、休日労働をどのように算定するのか、どの部分が時間外労働に該当するのか等、もう一歩踏み込んで検討する必要があります。

また、上記の各例は1週間に絞ったものですが、過去数年に遡って時間外労働を算定するのは、煩雑な作業を伴うものでもあります。

残業時間の算定に際しては、ぜひ一度弁護士にご相談ください。