弁護士への相談の一つ「相続放棄がなされているか確認したい」という相談を受けることがあります。

そこで今回は、相続放棄や限定承認の有無を調べる方法につき説明します。

以下、簡単に、相続放棄や限定承認の仕組みを確認したうえで、相続放棄の有無・限定承認の有無を確認する方法について見ていきます。

相続放棄・限定承認とは

相続は、お亡くなりになった方(以下、被相続人と言います)の相続人が、被相続人のプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産をも承継する制度です。

単純に相続をすれば、相続人はマイナスの財産をも承継することにもなりますので、相続人には、そもそも相続をするか否か、といった選択肢が与えられます。

このうち、相続をしないという選択を相続放棄といい、相続はするものの、相続財産の限度でのみ責任を負う、という選択を限定承認といいます。

たとえば、相続放棄についてみると、ある人が相続放棄をしている場合、被相続人に金銭を貸し付けていた債権者は、相続人に金銭の返還を求めることができなくなります。

相続放棄をした方は、被相続人の負債を承継しないからです。

参照 相続放棄について

なお、以下、相続放棄と限定承認を併せて相続放棄等といいます。相続放棄等は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所への申述によって行われます。

第三者が相続放棄等の有無を確認する方法

相続放棄等が有った場合でも、その事実は公示されず、戸籍等にもその有無は記載されません。では、ある相続人が相続放棄等をしているか、第三者が知りたいという場合、どのような手続きをとればよいのでしょうか。

家庭裁判所に照会する

相続放棄等の有無を確認する手段の一つとしては、単純に当該相続人に相続放棄等の有無に関する資料の開示を求める、という手段もあります。

しかし、当該相続人が非協力的な場合には、この手段はとれません。

その場合、当該相続人の協力を前提とせずに相続放棄等の有無を確認していくこととなります。

そのための手段・手続が、「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会」です。家庭裁判所に相続放棄等がなされているか教えてもらう訳です。

この手続による場合には、当該相続人の協力なくして、相続放棄等がなされているか知ることができます。

なお、照会ができるのは、相続人または利害関係人に限られ、相続人でもなく、被相続人に対して法律上の利害関係を有しない第三者は、照会を求めることはできません。

照会先となる家庭裁判所

上記のとおり、相続放棄等は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して行います。

そこで、相続放棄等がなされているか知りたい場合には、同家庭裁判所に対して、照会をすることになります。

たとえば、北九州を最後の住所地としてお亡くなりになった方の相続放棄等に関する管轄は、福岡家庭裁判所小倉支部です。

そこで、その方に関する相続放棄等がなされているか否かについての照会も福岡家庭裁判所小倉支部にすることとなります。

照会の申請

照会の申請に当たっては、照会書(各家庭裁判所において、名称や書式は異なる)に必要な添付資料を付して、家庭裁判所に提出するのが一般的です。

添付資料としては、一般的には、次のような各資料が必要とされています。また、往々にして、相続関係図の提出も求められます。必要な添付資料の詳細については、各家庭裁判所にご確認ください。

相続人の一人が照会する場合 被相続人に対する利害関係人(債権者等)が照会する場合
①被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの) ①被相続人の住民票の除票(本籍地が表示されているもの)
②照会者と被相続人との関係がわかる戸籍謄本 ②契約書等、利害関係が分かる書類(写)
③照会者の住民票(本籍地が表示されているもの) ③照会者の資格を証明する書類(住民票や登記事項証明書等)

なお、上記とは別に、返信用封筒と切手が必要です。手続を弁護士に委任する場合には、委任状も必要となります。

照会書イメージ

理解を深めるため、照会書のイメージ画像を設置しておきます。

ここでは、A山一郎さんがA山太郎さんの相続人の一人として、他の相続人(A山次郎さん、A山三郎さん)が相続放棄等をしているか照会する場合を想定しています。

この照会書と添付資料を付して、家庭裁判所に提出することで、照会申請を行います。

相続放棄 照会イメージ

相続放棄 別紙目録イメージ

法律事務所・弁護士にご相談ください。

相続放棄等がなされているか否かは、他の相続人が取るべき手続や債権者の取るべき手続き、請求の相手方につき、大きな影響を及ぼします。

相続放棄等の有無が確定しなければ、当事者として、いかなる選択をすべきかの判断ができないことも少なくありません。

そこで、ひびき法律事務所では、相続放棄等の手続きがなされているか、ひとまず確認したい、といった相談も受け付けています。

お気軽にご相談いただければ幸いです。