離婚時における子どもを巡る問題の一つに「養育費」の問題があります。離婚に関し、弁護士がよく相談を受ける問題の一つです。

養育費は、その名のとおり、子どもを養育していくための費用のことをいいます。離婚した場合の養育費というのは、子を監護していく親(通常は親権者)に対して、非監護親が支払うべき費用です。

養育費は、監護親が、子どものために非監護親から受け取ることができる金銭であり、非監護親の立場からすれば、子どものために監護親に支払うべき金銭と言えます。

養育費の目安

養育費の金額は、監護親と非監護親とが協議によって決めることが可能です。養育費の上限を定める法律はありません。

もっとも、養育費の額が問題となる場面では、その協議が整わないことも少なくありません。

協議がまとまらない典型的な例としては、養育費を支払う側がその金額を少なくすることを希望し、養育費を受け取る側が、その金額を多くすることを希望するために、金額面で折り合いがつかないというケースです。

当事者間で、養育費の金額に折り合わない場合に参考にされる資料の一つが、裁判所作成の「婚姻費用・養育費の算定表」です。

参考リンク(外部) 裁判所/養育費・婚姻費用算定表のページ

この算定表によると、監護親及び非監護親の自営・給与所得の別及び金額と子どもの年齢、人数に応じて、養育費の目安を得ることができます。

実際、家庭裁判所の調停を行ってみると、家庭裁判所の調停委員も、養育費の金額につき、この算定表ないし算定表の下となる算定方法を重要視していることが強く伺われます。

算定表だけでは解決できない

ただ、算定表はあくまで目安であって、次に挙げるような事情が存することにより、算定表だけでは、適正な金額が算定できないケースがあります。

算定表だけで算定できない事情の例
・そもそも算定表使用に際して、相手方の所得が明らかでない
・現在無収入であるとしても、潜在的な稼働能力が認められる
・就労収入以外の収入がある
・養育費の金額算定に際して住宅ローンの支払を加味すべき
・子どもの持病や障害等のために費用加算が必要となる
・私学に通うための費用加算が問題となる
などなど

算定表は、あくまで収入と未成年の子の数に応じて、養育費の目安を算定した者にすぎず、上記のような個別の事情を加味したものではありません。そのため、算定表だけでは、養育費の適正金額を算定できないことが少なくないのです。

養育費の支払方法

養育費の支払方法は、非監護親が監護親に対して、毎月一定の額を支払っていくという内容で定めるのが一般的です。

この場合、たとえば、「未成年者が20歳になる日の属する月まで、月額3万0000円を毎月月末限り○○口座に振り込む方法で支払う」といった内容の取り決めをすることになります。

なお、養育費の支払方は、法律で定められている訳ではありません。

そのため、当事者間で合意ができれば、将来に渡る養育費まで含めて一括で支払うという内容も定め得ます。

しかし、養育費の分担に関し、将来分の養育費を含めて一括で支払うこととなる場合、その額が過大になることも少なくないことなどから、一括払いの合意に達するのは限定的なケースに留まります。

養育費を定める手続き

養育費は、離婚に際して決めても構いませんし、離婚前に定めていなかった養育費を離婚後に定めることもできます(ただし、過去分に遡って定められるかについては、別途検討すべきことがありますので、別の機会に解説します。)。

何れの場合においても、当事者間の協議や調停が整わない場合には、家庭裁判所において、養育費の分担義務やその金額等につき、判断してもらうことが可能です。

<離婚に際して定める場合>
離婚に際して養育費を定める場合には、離婚協議、離婚調停、離婚訴訟において、未成年者の親権者などと併せて養育費の分担について定めるのが一般的です。

離婚協議で養育費を定める場合、公正証書という書類を作成することもあります。

<離婚後に定める場合>
離婚後に養育費を定める場合には、養育費に関する協議、養育費に関する調停及び審判という手続により、養育費を定めることになります。

また、離婚協議の場合と同じく、養育費に関する協議内容につき、公正証書を作成することもあります。

養育費と強制執行

養育費を、上記のような各手続きで定めた場合、養育費につき、強制執行をすることはできるのでしょうか。

強制執行というのは、給与の差押えなど、相手方の財産から強制的に養育費を回収する法的手段です。

上記の問の答えは、養育費を定める手続如何によって異なります。

まず、単に離婚協議や養育費に関する協議を行い、これを単に書面にしただけでは強制執行はできません。強制執行をするためには改めて法的手続を採る必要があります。

一方で、離婚協議や養育費に関する協議を行って、強制執行認諾文言を定めた上で、公正証書を作成した場合には、当該公正証書により、監護親は強制執行をする権限を得ます。

また、離婚調停や離婚裁判又は養育費調停・審判により養育費を定めた場合には、通常、これらの結果を証する調書に基づいて、監護親は強制執行をする権限を得ます。

上記のように、養育費を定める手続等によっては、強制執行の可否に差が出ますので、養育費を任意に支払ってもらうのに不安がある、といった場合には、強制執行まで見据えて手続を選択しなければなりません。

養育費を巡る問題については弁護士にご相談を

上記のとおり、養育費を巡っては、そもそも適正金額はどの程度なのか、養育費を定める手続をどのように選択すべきかといった法律上の問題が付随します。

また、婚姻関係が破綻した離婚当事者間においては、養育費の交渉をすること自体、難しい場合も少なくありません。

そのため、養育費を巡る問題は、弁護士が相談を受けることの多い問題の一つとなっています。

養育費を巡る問題に直面された場合、養育費の取り決めなどにご不安が有られる場合には、、是非一度、弁護士にご相談ください。