マンションにおける管理費は、マンションの維持管理に必要不可欠な財源です。

管理費の確保が阻害されると、マンションの管理・維持費が不足する事態が生じ得るほか、管理費を支払っている区分所有者と管理費を滞納している区分所有者間にて不公平感・対立が生じ、管理組合の運営が機能不全に陥ることも考えられます。

また、滞納管理費問題を放置すると、きちんと支払っている方の支払意思の低下も招きまかねません。

こうしたマンションの管理費問題は、北九州でも、多々発生しています。

管理費滞納の予防策

上記の様な管理費問題を予防するためには、どのような手段・対応が考えられるでしょうか。

① 周知徹底

滞納管理費問題の発生を予防するための最大の手段は、管理費の必要性や管理費を支払わなかったことによる不利益(次に述べる遅延損害金等)について周知徹底を図ることです。

良好なコミュニティの実現を前提に、マンションの維持管理に実際に要している費用や、修繕積立の必要性等を資料の配布や総会における説明等を介して、区分所有者に認知してもらうことが必要です。

困ったことに、管理費を支払わない人に限って、そうした資料や総会に無関心な傾向にありがちですが、管理組合としては、管理費の重要性や管理費を支払わないことによるデメリットを認識してもらう努力を継続するほかありません。

② 間接的強制

管理規約を工夫するのも一つの手です。

典型的な方策としては、管理費を滞納した場合の予防策として、管理費を滞納した場合に遅延損害金を付加する旨の条項をいれておくという方法があります。

さらに、請求に際して、弁護士等に委託した場合に、その費用も滞納者の負担に帰する旨の条項を入れておくことも可能です。

こうした間接的な手段を定めた場合、これを周知・徹底することで、滞納管理費問題を予防する効果が期待できます。

③ 早めの対応

さらに、滞納管理費問題は、その金額が大きくなる前に、摘み取ることが重要になります。

滞納管理費が、たとえば1か月3万0000円として、2か月分滞納(合計6万円)しているのと、1年分滞納(合計36万円)しているのとでは、解決のしやすさは大きく異なります。

前者では滞納分一括支払いが期待しやすく、また、月々1万円ずつ加算して支払ってもらえれば、6か月で滞納問題は解消します。

これに対して、後者では、一括返済は期待しにくく(管理費滞納のケースでは、資力がほとんどないことが多い)、かつ、滞納者の資力・収入によっては長期の弁済になりかねません(月々1万円ずつ加算して支払うとしても36か月。)。

金額が大きくなればなるほど、後述の手段を尽くしても回収しきれないケースが増えてきます。

管理費回収の法的手段

管理費問題が発生した場合、まずは、任意の督促・協議(定型的な書面での通知・電話・面談)を通じて、管理費の支払いを求めるのが一般的です。

ただ、それでも効果が得られず、滞納管理費問題が解決しない場合、次のような手段をとることになります。

① 内容証明郵便の送付

内容証明郵便は、郵便局が、書面の内容と書面が到達したことを証明してくれる文書です。定型的な督促書面に比して、精神的プレッシャーがかかりやすいと言われています。

内容証明郵便に弁護士名や弁護士の印鑑があれば、滞納者に与えられる精神的プレッシャーはさらに強まります。

この内容証明郵便の送付により、請求への対応の必要性を感じた滞納者が、管理費の支払いに応じることも、少なくありません。

② 支払督促の申立

支払督促は、裁判所書記官の処分により、滞納者に金銭の支払等をするよう督促する手段です。

支払督促は、手続としては、比較的簡易かつ安価に申し立てをすることができるという点にメリットがあります。慣れてしまえば、弁護士等の専門家関与なく、申立をすることもできるでしょう。

ただ、支払督促の手続においては、手続きの途中で、滞納者から異議が出されると、手続が通常訴訟に移行してしまいます。そのため、はじめから訴訟を提起しておけばよかったということになるケースも少なくありません。

③ 少額訴訟

少額訴訟は、原則として1回の期日で判決に至る訴訟手続きです。

「少額」との名からも推察されるとおり、高額な請求については少額訴訟手続きは利用できません。この手続きは、基本的な請求金額が60万円以内の請求でのみ利用可能な手続です。

少額訴訟は、通常訴訟に比して、短期かつ安価に判決を得られるという点にメリットがあります。

ただ、少額訴訟の制度のもとでは、判決に際して、支払方法を分割払いとされうる(民訴法375条)、判決に対して異議があった場合には、手続が通常訴訟へ移行する(終局的解決を得られない)等のデメリットも存在することから、その利用に際しては慎重な検討を要します。

④ 通常訴訟

一般的な訴訟手続きです。

弁護士が受託する場合、内容証明を送付するなどしても奏功しない場合、通常訴訟により管理費を請求することが多く、支払督促や少額訴訟を選択することは少ないように思われます。

通常訴訟によって、終局的に支払いを認める判決がなされ、これが確定等すると、管理組合は、滞納者の財産に強制執行することが可能となります。

この場合、次の述べる先取特権の行使の対象がマンションだけであるのに対して、マンションの他、滞納者の預貯金や給与等も強制執行の対象となり得ます。

⑤ 先取特権の行使

マンションの管理費請求権は、先取特権という法定担保権で担保されています。管理組合は、一定の条件のもとで、この先取特権を行使して、対象となる専有部分を競売にかけることが可能です。

ただ、この先取特権は、銀行ローンに付されている抵当権に劣後します。そのため、抵当権が設定されており、マンションに余剰価値がない場合、この先取特権による回収は現実的ではないということになります。

また先取特権の行使をはじめとする不動産の強制競売には、高額の予納金が必要となりますので、その行使には慎重な検討が必要です。

早期に弁護士に相談を

上記のとおり、滞納管理費問題を解決するための手段には、種々の法的手続きがあります。その選択・実施には法律に関する専門的知見が必要です。

また、管理費が高額となる前に早めの対応をすることで、管理費問題が深化することを避け、実際の解決への道筋がつけやすくなります。

管理費問題については、早期に弁護士に相談することが重要です。

弊所では北九州市及びその近郊において、マンションの管理費問題を多数取り扱ってきた実績とノウハウがあります。管理費問題にお悩みの場合には、一度弊所にご相談ください。