複数の金融機関や消費者金融、信販会社等の貸金業者から、多額の借金を抱えてしまい、今後の経済生活に不安を感じている方は少なくありません。

この借金問題を解決するための手段の一つが、債務整理と呼ばれる手段です。

そして個人の方が行う債務整理の代表的手段としては、一般に、①任意整理、②自己破産、③個人再生の3つがあります(この3つの手続については、こちらの記事で比較しています。)

他方で、もう一つ、特定調停という手続も債務整理の手段として挙げられるの手段があります。

それが特定調停という手続きです。

 

特定調停とは

特定調停というのは、簡易裁判所の調停手続を利用して、債権者(貸主)と債務者(借主)とが、借金問題の話し合いを行い、返済方法の合意をすることで、借金を整理していく手続きです。

特定調停は、話し合いによる解決を図る点で、任意整理と同質です。

債権者と債務者とで協議を行い、弁済期間につき、将来利息のカット、分割弁済の合意を行うことを内容とします。

特定調停の特徴

特定調停手続の特徴は次のとおりです。

  • ・簡易裁判所の調停委員の関与・主導の下で協議を進められること
  • ・債権者が協議に応じない、話し合いが整わない場合に、簡易裁判所が調停に代わる決定という処分(相当性のある返済計画を裁判所が定める処分)をなしうること
  • ・調停手続における合意が記された調停調書等には、執行力が付与されること

上記のうち、特に、債務者(借主)が返済計画通りの返済継続を怠った場合に、債権者(貸金業者等)が調書に基づいて、強制執行の手続きを採りうるとされていることには注意が必要です。

これは、借主側にとっては、任意整理にはない特定調停のデメリットといえます。

 

特定調停実施後の弁済期間

特定調停で、債権者と合意できる分割期間は原則として3年と言われています。

以前、小倉簡易裁判所の書記官に聞いてみたところ、5年の合意をしている場合もあるが、あまり多くはないとの説明を受けたのを記憶しています。

弁護士が介入した場合は、任意整理としての性質も帯びるので、5年の合意がとれることもあるのかもしれませんが、弁護士は、分割弁済合意を行うのであれば、任意整理を行うことが多く特定調停に介入することはあまりないです(任意整理手続の内容については上記リンク先記事参照)。

 

特定調停の手続

特定調停は、手続を採りたいという申立てを当事者又はその代理人が行うことで開始します。

手続を申し立てると、およそ2か月~程度後に、期日が決定されます。当該期日で、債権者・債務者が、調停委員を介して話し合いを行うこととなります。

特定調停の申立に際して、債務者は、自分の収支・生活状況を説明しなければなりません。

収入・支出・財産状況につき、詳らかにする必要があります(資産の一覧表作成、債権者及び担保権者の一覧表の作成、生活や事業の状況が分かる資料、借入れ・返済状況が分かる資料の提出などが必要になります。

当事者にとっては相当程度煩雑な手続となるほか、債権者にとって、有意な情報収集の場となりえます。

 

特定調停の使いどころ

特定調停の使いどころとしては、たとえば次のような場面が考えられます。

  1. 強硬な債権者がいて、任意整理ができない場合
    特定調停の手続においては、債権者との間で合意ができない場合でも、裁判所の決定を得ることができます。裁判所から決定が出た場合に、債権者が不服を申し立てることはできるものの、他方で、裁判所の決定ならばと、債権者側が不服を申し立てないケーズも相当数あります。

    そのため、強硬な債権者がいて任意整理ができない場合は、特定調停の使いどころの一つとなります。

  2. 弁護士費用の支払いが難しい場合(自分で手続を行う)
    特定調停は、債務整理の中では、債務者の方個人でも行いやすい部類の手続です。弁護士費用の捻出ができず、自分でやりたい、という場合に特定調停は利用されます。ただ、現在は、法テラスがありますので、弁護士費用が捻出できないため、あえて自分で特定調停を行わなければならない、というケースは少なくなってきています。
  3. 給与の差押えがなされている場合
    給与の差押えがなされている場合も特定調停の使いどころの一つです。特定調停の手続が開始した場合、申立人が、強制執行の停止を裁判所に申し立てた場合、裁判所が事件を特定調停によって解決することが相当であり、強制執行が特定調停手続の妨げになると判断すると、強制執行の停止が命じられます。

    ケースに拠りますが、この仕組みにおり、特定調停が終了するまでの間、給与の差押えを止めることが可能です。

手続の選択は弁護士にご相談ください

特定調停も併せると、債務整理には、大きく4つの手段があることになります。①任意整理、②自己破産、③個人再生、そして特定調停です。

どの手続をとるかによって、行うべき準備・得られる結論がまるで違います。

いかなる手続が適切かの判断に悩まれたらぜひ弁護士にご相談下さい。