弁護士が、依頼者から債務整理を受任した場合、弁護士は受任通知と呼ばれる書面を送付します。この受任通知の送付先が銀行だった場合、その口座が凍結されることがあります。凍結というのはその口座から出金ができなくなる状態を意味します。

口座凍結≒出金の停止

口座の凍結がなされると、銀行の口座からの出金ができなくなります。

完全な取引の停止とは異なり、口座が凍結されても当該口座に入金することは可能です。

そのため、口座凍結後、同口座に第三者が金銭を振り込むなどした場合、当該口座に入金されます。

これが後ほど述べる厄介な問題を引き起こします。

 

口座の凍結・相殺による不利益

弁護士が債務整理を受任して、受任通知を送付すると、それが任意整理であると法的整理であるとを問わず、口座の凍結が生じます。

相殺について

口座凍結後、銀行は、自分の貸したお金と銀行口座の中にある預金とを相殺するのが常です。

たとえば銀行に対する借入金が100万円、銀行預金残高が10万円という場合、10万円の範囲で相殺が行われます。

銀行に対して無思慮に通知を送ると上記のような結論になりますので、生活に必要なお金などは事前に取り分けておくことになります。

引き落としも出来なくなる

また、口座からの出金ができなくなるのは本人に限られません。

当該銀行口座が光熱費や携帯電話料金の引き落とし口座となっていた場合、その引き落としもできなくなります。

したがって、引落口座のある銀行が債務整理の対象となる場合には、事前に、引き落としができなくなってもよいように準備をしておく必要があります。

給与・年金等が入ってくる口座に注意が必要

さらに、上記のとおり、口座が凍結されても第三者が当該口座に入金することは可能です。

そのため、給与や年金等の公的給付が入金される銀行に対する債務整理に際しては、やっかいな問題が生じます。

これらの金員も、一旦入金されてしまうと、これを取り戻すのに大変な手間を要するからです(最悪、返金されないことも想定しないといけません)。

ただ、北九州で債務整理を行ってきた経験として、西日本シティ銀行・福岡銀行は、口座凍結後、給与や年金などの入金があった場合、その出金に応じてくれます。

これらの銀行はこの金員の受領・相殺が破産法に触れる可能性があることなどから、返金に応じてくれる運用にしているものと思われます。

ただ、それでも、すぐに返金に応じてくれるわけではなく、通帳での引き出しはできず、出金に際して、事前の通知・連絡・窓口での払戻請求が必要となり、生活上でかなりの不便が生じるはずです。

 

銀行を債務整理の対象から外せるか

銀行のカードローンなどを債務整理の対象とすると、上記のように口座が凍結され、多かれ少なかれ、煩雑な手続が必要となります。

では、銀行を債務整理の対象から外すことはできるでしょうか。

これは、債務整理の種類に応じて、結論が異なります。

まず、自己破産・個人再生手続の場合、債権者を債務者側で選べないため、銀行に対して借金・負債がある以上は、銀行も債務整理の対象とする必要があります。

他方で、任意整理については、どの債権者を対象として手続を行うか、選択が可能です。

そのため、銀行に対する借金に付いて整理の必要が無ければ、手続に際してその対象から外すという選択も可能です(詳細については、「債務整理を北九州の弁護士に相談」の記事参照))。

 

銀行口座の変更

銀行を債務整理の対象とせざるを得ない、その銀行の口座が給与や年金を受け入れる口座となっているという場合、振込先口座の変更を行ってもらうのが適切な対応です。

なお、中小企業によっては、給与の振込先は、「特定の銀行のみ」というような会社もあるかもしれません。

この場合の対応策は、主として次の3つになるように思います。

  • 会社に事情を話して口座を変更してもらえるように話をする
  • 現金での給与の支払いを求めることを検討する
  • (給与口座を変更しないことを前提に)給与が入金されたら、その後に出金ができるよう銀行と事前の交渉・調整を行っておく