今回は、任意整理を弁護士に依頼した後、法的整理へと方針を変更するケースについて紹介・解説します。

 

弁護士が任意整理を受任する場合、その段階で弁済計画は念頭にある

弁護士が相談者から任意整理を受任する場合、弁護士は受任時点で、毎月の弁済見込額を念頭に、その金額の返済が可能か否かについて、検討を行っています。

相談者の話だと、債務総額が180万円、5年で返済するとなれば、一月当たり3万円の支払いが必要になる、これに余裕を持たせると、もう少し毎月の余力資金が必要だな・・・、こうしたことを検討しています。

この検討の上で、相談者が、3万円を返済する十分な資力がある、ということになれば、弁護士としては任意整理を進める方向で受任をすることが可能です。

 

【任意整理とは】
任意整理を含めた3種の手続につき、次の記事でその特徴や弁護士費用の目安などを次の記事でまとめています。是非一度ご参照ください。
参照:債務整理を北九州の弁護士に相談

方針変更が必要になる場合

ところが、いざ任意整理として受任してみると、その後の事情により、その方針変更をしなければならない場合という場合が生じます。

ここでは典型例として二つ紹介します。

  1. 借金額の認識にずれがあった場合
  2. 失職など、予期せぬトラブルがあった場合

借金額の認識にずれがあった場合

方針変更が必要となるトラブルは、弁護士が説明を受けて認識していた債権額・借金の額と実際の額との間に大きな違いがあった場合です。

たとえば、上記のケースで、相談者から説明を受けた金額が180万円、実際に調査をした結果が、債権総額が180万円だったとすると、5年で返済をするとなれば、一月当たり3万5000円が必要となってきます。

想定していたよりも、月々の返済額が大きくなるわけです。

そして、その差額支出が、家計において捻出不可となれば、任意整理の方針は変更せざるを得ません。

5000円の差なんて大したことないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、任意整理の手続を行っている中で依頼者の方から話を聞いてみると、その5000円が家計維持に欠かせないという場合も少なくありません。

この場合でも、作成する家計の見直し、収支の見直しを行って、なお弁済計画が立案できるのであれば、任意整理の方針を継続することもできます。

しかし、それでもやはり厳しい、という場合、自己破産や個人再生に方針変更することを検討しなければならなくなります。

【補足】

聞いていたよりも債権額・借金額がかなり多かったけど、うまく任意整理ができた、というケースももちろん存在します。

そもそも弁護士は、当初弁済計画を検討する際、一定程度、余幅・バッファーを設けています。本当に毎月の弁済額ぎりぎりのところで弁済計画を作成した場合、依頼者に何かトラブルがあるとすぐに、その計画がとん挫するからです。

そして、たとえば、上記5000円の差額が、弁護士が念頭に入れていたバッファーの範囲内であれば、なお任意再生手続の継続は可能です。


 

失職など予期せぬトラブルがあった場合

方針変更が必要となるもう一つの場合は、当てにしていた収入が失われる場合です。

体調不良により働けなくなった、会社側の都合により失職を余儀なくされた、というケースです。

任意整理は、毎月の安定した弁済を基礎とした債務整理の方法ですので、任意整理における交渉中に、上記のようなトラブルがあり、その後も、毎月の弁済が可能なレベルの収入を得られなくなった、などの事情が生じると、任意整理の目途が付かず、方針変更が必要になります

 

方針変更をした場合の費用

任意整理で受任をしていて、後に自己破産・個人再生に方針を変更するという場合、その費用はどうなるのでしょうか。

この場合、既に受け取った任意整理との費用を自己破産・個人再生に関する弁護士費用にあてるのが通常です。

たとえば、4社に対する任意整理の費用が13万2000円(税込)であったとした場合で、自己破産の費用が22万円(税込)だったとすると、弁護士は方針変更時にその差額をもらい受けることになります。

逆に任意整理の費用の方が高額だったという場合は、その過大部分が清算の対象となります。

法テラスを利用した場合でも類似の処理が行われており、途中の方針変更によって、着手金の追加支出や返還の要否が判断されることになります。