今日は、法律事務所の事務職員の働き方の種類・タイプについて書きたいと思います。

 

法律事務職員とは

法律事務所では、弁護士を支える仕事として、事務職員がいます。

事務職員の一般的な仕事

事務職員の代表的な仕事は、事務所の受付、電話の取次ぎや裁判所への書類提出・簡単な書類の作成等と言われるのが一般的です。

なお、法律文献の調査や判例の調査など、法律に関わる領域まで業務範囲に含む場合、あるいは、法律にかかわる領域を中心に仕事をする場合、その職員をパラリーガルなどと呼ぶこともあります。

以下、本記事では、事務職員・パラリーガル併せて「職員」と表現します。

秘書タイプと職域分掌タイプ

職員の仕事の内容ですが、その働き方からして、二つのタイプに分かれるように思います。

一つは秘書タイプ、もう一つは職域分掌タイプです。この区分け・名称は私が今、名付けた区分ですので、もしからしたら世間では違う言い方もあるかもしれません。

  1. 秘書タイプ
  2. 職域分掌タイプ

 

秘書タイプについて

秘書タイプというのは、特定の弁護士の指示内容に従って業務を行うタイプの職員です。

分かりやすいのは、たとえば、ある弁護士に対して、一人の職員がついて、その指示に基づいて業務を行う、というものです。

ひびき法律事務所の職員は、全員がこのタイプです。弁護士ごとに担当がいます。

ちなみに秘書タイプという場合でも、複数の弁護士の業務について、一人の事務員が付く、という場合もあります。

 

メリット

秘書タイプ型には、弁護士にとって大きなメリットがあります。

この秘書タイプ型にあっては、その職員が、事務職員あるいはパラリーガルいずれの場合においても、特定の弁護士を担当する年次が重なってくると、その弁護士の業務の仕方・方法に対する事務職員の理解が高まります。

そのため、その職員は、弁護士にとっては、非常にありがたい存在になります。自分の業務への理解が深く、コミュニケーションコストが大幅に下がってくるからです。

デメリット

他方で、デメリットもあります。

まず、弁護士の業務全般に対して、事務をこなす必要があるため、覚えるべき仕事の種類が多いです。そのため、職員として仕事を一通り覚えるまでに時間が必要になります。

また、特定の弁護士に対する業務に関して、その職員に属人的になりがちです。その結果、たとえば、その職員が退職するとなれば、それまでの関係性の蓄積が失われすので、弁護士にとって大きな痛手となります。

加えて、自己破産や後見等、特定の領域を担当する職務分掌型の事務員やパラリーガルと比較すると、その分野・領域については、少なからず経験・ノウハウが不足することになります。

 

職域分掌タイプについて

職域分掌タイプは、特定の領域に関して、特化して事務を行うタイプの職員を指しします。

たとえば、自己破産の申立てを例にとると、この手続、事務は、一般の民事裁判の事務と異なり、幅広い種類の書類の収集・整理が必要となります。また、財産目録・家計表の作成といったほかの民事事件ではほとんど行わないような業務も必要になります。

職務分掌タイプは、こうした特定領域に特化して事務を行うタイプです。

さらに細分化していけば、たとえば、裁判所への書類の提出などを一手に請け負う、公的書類、23条照会の収集を一手に引き受けるという形の分掌もあるかもしれません。

こうした職分掌型タイプの事務員がいる法律事務所は、相当程度規模の大きな事務所や、債務整理などの特定分野について相当数の件数を引き受けている事務所に多いと思います。

メリット

この職域分掌タイプの職員を採用する事務所のメリットは、やはり、その事務員が特定の領域につき、深く経験を積める、という点にあります。

特定事務の専門性が養われる、と言ってもいいかもしれません。そうした職員がいる事務所の場合、その領域に関する弁護士の業務コストは大幅に軽減されるはずです。

デメリット

他方で、法律事務所にとっては、事務員に対する業務配分・業務の割り当てが硬直的なものになってしまうという点がデメリットに挙げられます。

職務分掌型では、弁護士の業務全般を広く把握してもらう、経験してもらうということは難しく、特定分野外の業務をお願いする、ということが困難となるためです。

なお、こうしたデメリットを回避するべく、職務分掌型の体系をとる事務所においては、特定の領域だけでなく、複数の幅広い職務経験を積んでもらおうと、一定の年数で、事務職員の分掌を入れ替える、職域分掌を配転していくということをしている事務所も多いです。

こうしたことができるのも、相当程度規模の大きな法律事務所に限られます。

法律事務所のスタイル

事務員・パラリーガルを上記秘書タイプ・職務分掌タイプに分類し、この観点から事務所のスタイルを考えてみると、抽象的には3つに分類できます。

一つは、①秘書タイプ職員のみがいる法律事務所。ひびき法律事務所がこれです。

もう一つは、②秘書タイプの職員がいて、かつ、職務分掌タイプの事務員もいる事務所。大規模事務所に多いと思います。

最後は、③職務分掌タイプのみの事務所。

ただ、抽象的には、3つに分類できるものの、最後の職務分掌タイプのみの事務所というのはおよそ想像がつきません。

現実的には、職員を雇用しているほぼすべての事務所が①または②のタイプの事務所に分類されると思います。