今日は、民事裁判で弁護士が依頼者にも出席してほしいと思うケースを4つ紹介します。

通常の期日では弁護士が出頭すれば、依頼者の出席は不要

民事裁判における通常の期日において、依頼者が出席するケースはそれほど多くありません。

裁判の期日は、平日10時~16時ころまで、お仕事・家事のコアタイムで行われますので、依頼者の皆さんが毎回出席するというのは相当大変です。

また、民事裁判の期日においては、書類の提出・確認のみで審理が終わるケースも少なくなく、出席したからと言って、その日に重要な審理がなされるとは限りません。

こうした事情もあって、通常・一般的な民事裁判の期日においては、弁護士のみ出頭し、依頼者の皆様の出席しないというケースの方がかなり多くなっています。

通常の期日においては、弁護士が本人の代理人として出席しており、本人が欠席しても法律上の不利益は何ら生じません。

※刑事事件・家事事件は別です。刑事事件では、被告人は出頭が必須ですし、家事事件でも、当事者の出席が原則的な運用となっています。

弁護士が依頼者に出席してもらいたい4つのケース

もっとも、依頼者にも出席してもらいたいと思うケースがいくつかあります。出席必須なものも含めて、4つ紹介します。

重大事案・センシティブな事案の裁判期日

弁護士として仕事をしていると、人の生死が関わる事案、その人の人生が関わる事案、会社の命運がかかった事案などをお引き受けすることがあります。

また、いじめの問題などセンシティブな問題を含むケースもあります。

こうした重大事案を担当するとき、弁護士としては、依頼者に裁判の経緯を自分の目で見てもらいたい、と思います。

依頼者の方も、このようなケースでは、上記に挙げたような裁判期日に出頭する時間・コストをかけてでも出たい、見たいと思われることが多いようです。

やれるだけやってほしいとの依頼を受けたケースの裁判期日

さらに、弁護士として仕事をするなかで、ほとんど負け筋という場合でもやれるだけやってほしい、と裁判を望まれる依頼者の方もいらっしゃいます。

ほとんど負けが見えている、というケースにおいては、弁護士として、お金をもらう関係上、裁判までするのは勧められない、とご説明を差し上げることになります。

そして、こうした説明を差し上げた場合、依頼者の皆様において訴訟をしない、という結論を選択されるのがほとんどです。

しかし、たまに、「それでもやれるだけやってほしい」と訴訟を希望されるケースがあります。

ここで、その依頼者の方のお気持ちに共感ができなければ、弁護士としては断固としてお断りをします(たとえば、負けはわかっているが、相手にもダメージを与えたいなどの目的で訴訟提起を依頼されるようなケースなどはお断りしております。)。

他方で、相談の内容が、負け筋だけど相談者の気持ちもよく分かるという場合だと、自分でも証拠関係あるいは理屈において負け筋だとわかっていながら、なお、お引き受けして可能な限り勝負してみる、というケースがあります。

こうしたケースにおいては、弁護士としては訴訟追行の過程・審理の過程を見ていただくことに意味があると考えます。そのため、依頼者の皆様に出席をお願いすることがしばしばです。

和解期日

また、上記とは異なって、ごく一般的な民事事件であっても、依頼者に来てもらいたいと思う期日があります。

和解協議がなされる期日(和解協議期日)です。

交通事故など、金額面を除き、定型的な和解がなされる案件については、その必要性はそこまでないのですが、不動産関係の訴訟や労働紛争等については、和解協議に際して、話し合いの対象がふいに広がったり、事前に想定するのと違う提案がなされたり、ということが往々にしてあります。

こうした場面では、弁護士は、自分だけで判断することはできず、依頼者のご意向を確認してから裁判所に対して回答しなければなりません。

ここに依頼者がいてくれれば、すぐに打ち合わせ・ご意向の確認をすることが可能となり、訴訟手続の進行がスムーズになります。

また、その場に依頼者がいてくれれば、依頼者の皆様においても、裁判所の和解勧試の理由・ニュアンスを把握するのが容易になりますので、依頼者の皆様にとっても、判断材料が充実する点でメリットがあります。

こうした事情により、和解協議の日は、依頼者に出席してもらいたいと思う期日の一つとなります。

尋問期日

最後の一つが尋問期日です。

依頼者本人が尋問の対象となる場合は、裁判官の面前で、発言などをしてもらわないとならないため、ご出席が必須になります。

また、依頼者本人ではなく、他の者のみ証人尋問を行うというケースでも、依頼者の皆様に出席をしてほしいと思うことがしばしばです。

証人尋問は裁判官が、訴訟終盤に心証を形成する重要な場面の一つであり、裁判の結論に大きな影響を及ぼすことがあるからです。

この尋問による心証形成の場面は、弁護士として、依頼者と経験・体験を共有しておくために、依頼者にも裁判所に出席してほしい場面の一つと言えます。